A さん(44 歳、男性、会社員)は、20 年以上の喫煙歴があり、BMI 26 である。 会社の健康診断で脂質異常症 dyslipidemia と高血圧症〈hypertension〉 を指摘された。A さんが発症する危険性が高い疾患はどれか。
公式正答:4
解説
20年以上の喫煙歴があり、体格指数26で、脂質異常症と高血圧症を指摘された44歳男性が発症する危険性が高い疾患を問う。労作性狭心症である。
この問題で問われていること
危険因子の組み合わせから、予測される疾患を導けるか。
しくみから理解する
この患者は、①喫煙(長期)、②肥満(体格指数26)、③脂質異常症、④高血圧という、動脈硬化の危険因子を4つ併せ持つ。これらは、冠動脈の粥状硬化を進め、狭窄をきたす。労作性狭心症は、冠動脈の狭窄により、労作時に心筋の酸素需要が増したときに、供給が追いつかず、胸痛が生じるものになる。したがって、この患者が発症する危険性が最も高い疾患になる。
選択肢ごとの確認
1型糖尿病は、膵のベータ細胞が自己免疫の機序などにより破壊され、インスリンが絶対的に不足するものになる。生活習慣とは関連せず、若年での発症が多い。この患者の危険因子から予測されるのは、2型糖尿病になる。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんと潰瘍を生じる原因不明の炎症性腸疾患になる。指定難病であり、生活習慣との明確な関連は示されていない。
肺血栓塞栓症は、下肢の深部静脈にできた血栓が肺動脈を閉塞するものになる。危険因子は、長期の臥床と不動、手術、悪性腫瘍、肥満、妊娠、経口避妊薬、そして脱水になる。肥満は共通するが、この患者の危険因子の組み合わせから最も予測されるものではない。
閉塞性血栓血管炎(バージャー病)は、若年(40歳未満)の男性の喫煙者に多く、四肢の中小動脈と静脈に炎症と血栓を生じる。喫煙は共通するが、①年齢、②機序(粥状硬化ではなく炎症)、③好発部位(四肢の末梢)が異なる。加えて、指定難病であり、頻度は極めて低い。
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混同しやすいポイント
危険因子と疾患を結びつける。動脈硬化の危険因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、加齢、男性、家族歴)が重なれば、①冠動脈=狭心症と心筋梗塞、②脳動脈=脳梗塞、③大動脈=大動脈瘤と解離、④腎動脈=腎機能の低下、⑤下肢の動脈=閉塞性動脈硬化症、を予測する。誤肢は、①自己免疫、②原因不明の炎症、③静脈系の疾患、④別の機序の血管炎になる。
理解を深める
虚血性心疾患を整理する。分類=①労作性狭心症(安定狭心症。冠動脈の固定した狭窄。一定の労作で症状が出て、安静とニトログリセリンで軽快する。数分で治まる)、②不安定狭心症(粥腫の破綻と血栓形成。安静時にも起こる、頻度が増える、持続が長くなる、軽い労作で起こる。心筋梗塞へ進みうる)、③異型狭心症(冠攣縮性狭心症。冠動脈の攣縮による。夜間から早朝、そして飲酒と喫煙が誘因になる)、④心筋梗塞(冠動脈の閉塞により心筋が壊死する)。狭心症と心筋梗塞の典型像の違い=①持続時間(狭心症は数分、心筋梗塞は20分以上)、②ニトログリセリンの効果(狭心症は軽快、心筋梗塞は多くが無効)、③随伴症状(心筋梗塞では冷汗、悪心、死の恐怖)、④心電図と血液検査(トロポニンの上昇。ST上昇は必発ではなく、非ST上昇型心筋梗塞ではST上昇を示さない)。いずれも典型像であって、単一の所見で急性冠症候群を除外しない。とくにニトログリセリンで軽快したことを除外の根拠にしない。検査=①安静時心電図(発作時でなければ正常のことが多い)、②運動負荷心電図、③ホルター心電図、④心筋シンチグラフィ、⑤冠動脈コンピュータ断層撮影、⑥心臓カテーテル検査(冠動脈造影)。治療=①薬物(硝酸薬、ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬、スタチン)、②経皮的冠動脈形成術、③冠動脈バイパス術、④危険因子の管理。看護=①発作時の対応(安静、ニトログリセリンの舌下または口腔内噴霧。効果がなければ5分後に再度、それでも改善しなければ救急要請する。加えて、この薬は血圧を下げるため、座位または臥位で使う)、②ニトログリセリンの管理(携帯する、直射日光と高温を避ける、使用期限、そして開封後の期限)、③危険因子の管理(禁煙が最も重要。加えて、食事、運動、体重、血圧、脂質、血糖)、④心臓リハビリテーション、⑤ストレスと過労を避ける、⑥寒冷と急な温度差を避ける、⑦入浴の注意、⑧定期的な受診と服薬の継続。
間違えやすい考え方
危険因子から疾患を問う型で、誤肢が別の機序の疾患である。動脈硬化の危険因子の集積で切る。
5分で振り返る
①この患者は、喫煙、肥満(体格指数26)、脂質異常症、高血圧という動脈硬化の危険因子を4つ併せ持つ。②これらは冠動脈の粥状硬化を進め、狭窄をきたす。③労作性狭心症は、労作時に心筋の酸素需要が増したとき、供給が追いつかず胸痛が生じる。④1型糖尿病は自己免疫などによる。生活習慣とは関連しない。予測されるのは2型糖尿病。⑤潰瘍性大腸炎は原因不明の炎症性腸疾患で、指定難病。⑥肺血栓塞栓症は静脈系の疾患で、長期臥床と手術が主な危険因子。⑦バージャー病は40歳未満の男性の喫煙者に多く、機序と好発部位が異なる。⑧狭心症と心筋梗塞の典型像の違い=持続時間(数分か20分以上か)、ニトログリセリンの効果、随伴症状、心電図と血液検査。いずれも典型像であって、単一の所見で急性冠症候群を除外しない。⑨ニトログリセリンは血圧を下げるため、座位または臥位で使う。
1分チェック
- 喫煙・肥満・脂質異常症・高血圧が重なれば。→ 労作性狭心症(冠動脈の粥状硬化)。
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