A さん(48 歳、男性、会社員)は、大量の飲酒の後、急激な上腹部痛と背部痛を 訴え、救急外来を受診し、急性膵炎〈acute pancreatitis〉と診断された。 A さんの救急外来受診時の血液検査結果で予測されるのはどれか。
公式正答:4
解説
大量の飲酒の後、急激な上腹部痛と背部痛を訴えて受診し、急性膵炎と診断された48歳男性の血液検査結果で予測されるものを問う。血清アミラーゼ値の上昇である。
この問題で問われていること
膵の炎症により、何が血中へ出るかを説明できるか。
しくみから理解する
膵臓は、消化酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)を産生する。急性膵炎では、何らかの契機により、これらの酵素が膵の内部で活性化し、膵自身を消化する(自己消化)。その結果、破壊された膵の細胞から酵素が血中へ漏れ出し、①血清アミラーゼ、②血清リパーゼが上昇する。とくにリパーゼは、膵に特異性が高く、診断における価値が高い。
選択肢ごとの確認
血小板数は増加せず、重症化すると減少する。播種性血管内凝固症候群を合併するためになる。
血清乳酸脱水素酵素は低下せず、上昇する。組織の障害を反映する酵素であり、膵の壊死により上昇する。重症度の判定の項目にも含まれる。
血清ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼも低下せず、上昇しうる。アルコールと胆道系の障害を反映するためになる。この患者は大量の飲酒歴があり、上昇していることが多い。
血清カルシウム値は上昇せず、低下する。①膵の周囲で脂肪が壊死し、遊離した脂肪酸がカルシウムと結合して沈着する(石鹸化)、②低アルブミン血症、という理由による。低カルシウム血症は、重症度の判定の項目に含まれ、テタニーを起こしうる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも変化の方向を逆にしている。急性膵炎で上昇するもの=アミラーゼ、リパーゼ、乳酸脱水素酵素、白血球、C反応性タンパク、血糖、尿素窒素。低下するもの=カルシウム、血小板(重症例)、酸素分圧(重症例)、血圧(重症例)。この方向を、機序とともに押さえる。
理解を深める
急性膵炎を整理する。原因=①アルコール(男性に多い)、②胆石(女性に多い)、③特発性、④その他(高トリグリセリド血症、高カルシウム血症、薬剤、内視鏡的逆行性胆管膵管造影の後、外傷、感染、膵の腫瘍)。この3つ(アルコール、胆石、特発性)で大部分を占める。症状=①上腹部痛(急激で持続する激痛。心窩部から左上腹部)、②背部への放散痛、③前かがみになると軽快する(膝胸位、胎児の姿勢)、④悪心と嘔吐(吐いても痛みは軽快しない)、⑤発熱、⑥腹部膨満と腸蠕動の低下、⑦重症では、ショック、呼吸不全、腎不全、意識障害、そして皮下出血斑(グレイ・ターナー徴候=側腹部、カレン徴候=臍周囲)。診断=①上腹部の急性腹痛と圧痛、②血中または尿中の膵酵素の上昇、③画像(超音波、コンピュータ断層撮影)で膵に急性膵炎に伴う異常所見、のうち2つ以上を満たす。重症度の判定=予後因子(9項目。ベースエクセス、酸素分圧、尿素窒素またはクレアチニン、乳酸脱水素酵素、血小板数、カルシウム、C反応性タンパク、全身炎症反応症候群の項目数、年齢)と、造影コンピュータ断層撮影による評価による。治療=①絶飲食(膵を休める)、②輸液(大量の体液が血管外の間隙(第三の間隙)へ移動するため、初期から十分に補う。ただし量は重症度と循環動態の評価に基づいて決め、目標を定めて反応をみながら調整する。非重症例に対する積極的な大量輸液は利益を示さず輸液過剰を増やしたため、バイタルサイン、尿量、酸素化、浮腫の徴候で過剰を監視する)、③疼痛の管理(十分な鎮痛。痛みは強く、我慢させない)、④重症例では、集中治療と経腸栄養の早期の開始(腸を使うことが、感染性の合併症を減らす)。抗菌薬は感染性膵壊死などの感染が疑われるか確認された場合に用いるもので、感染のない段階での予防投与は推奨されていない、⑤胆石が原因の場合は、内視鏡的な処置。看護=①疼痛の管理と、楽な体位(側臥位で膝を抱える)、②絶飲食の苦痛への対応(口腔ケア、含嗽)、③輸液の管理と水分出納、④バイタルサインと全身状態(ショック、呼吸、尿量、意識)、⑤血糖(膵の内分泌の機能も障害される)、⑥感染の徴候、⑦禁酒の支援(アルコールが原因の場合、再発を防ぐには断酒が不可欠になる。依存が背景にあることも多く、専門的な支援へつなぐ)、⑧食事の再開(少量から、脂肪を制限して段階的に)、⑨慢性膵炎への移行と、膵性糖尿病への注意。
間違えやすい考え方
検査値を問う型で、誤肢がすべて方向を逆にしている。膵の自己消化で酵素が漏れ出るという機序で切る。
5分で振り返る
①急性膵炎では、消化酵素が膵の内部で活性化し、膵自身を消化する(自己消化)。破壊された細胞から酵素が血中へ漏れ、アミラーゼとリパーゼが上昇する。リパーゼは特異性が高い。②血小板は、重症化すると播種性血管内凝固症候群により減少する。③乳酸脱水素酵素は、組織の障害を反映して上昇する。④ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼも、アルコールと胆道系の障害により上昇しうる。⑤カルシウムは低下する。脂肪壊死により遊離脂肪酸がカルシウムと結合して沈着するため(石鹸化)。低カルシウム血症は重症度の判定項目に含まれる。⑥原因は、アルコール、胆石、特発性で大部分を占める。⑦症状=上腹部の激痛、背部への放散、前かがみで軽快、悪心と嘔吐。⑧治療=絶飲食、十分な輸液、疼痛の管理。アルコールが原因なら断酒が不可欠。
1分チェック
- 急性膵炎では。→ 血清アミラーゼが上昇(カルシウムは低下)。
この問題に対応する教材の確認中です。