A さん(53 歳、男性、会社員)は、数日前から耳鳴、めまい、耳閉感が出現し、 突発性難聴〈sudden deafness〉 と診断され入院となった。副腎皮質ステロイド薬の投与で症状が改善したため退院することになった。入院前の生活習慣は、外食2回/週、飲酒(ビール 700 mL)/日、睡眠6時間/日、入浴1回/日、喫煙20 本/日、散歩2回/週。 退院後の生活で、A さんが控えるべき事項はどれか。2つ選べ。
公式正答:1・3
解説
突発性難聴で入院し、副腎皮質ステロイド薬の投与で症状が改善して退院する53歳男性が、退院後の生活で控えるべき事項を2つ問う。飲酒と喫煙である。
この問題で問われていること
内耳の血流に影響するものを挙げられるか。
しくみから理解する
突発性難聴の原因は完全には解明されていないが、内耳の循環障害とウイルス感染が有力な説になる。したがって、内耳の血流を妨げる要因を避けることが、回復と再発の予防のうえで重要になる。①喫煙は、ニコチンにより血管を収縮させ、一酸化炭素により酸素の運搬を妨げるため、内耳の血流と酸素化を悪化させる。②飲酒(1日ビール700mL)は、この患者では過量であり、①脱水、②睡眠の質の低下、③血圧への影響、④ステロイドとの関係からも控えるべきものになる。
選択肢ごとの確認
外食(週2回)は、この時点で控えるべき事項として挙げられない。塩分の過剰には注意するが、週2回であれば過度ではない。
散歩(週2回)は、控える必要がない。適度な運動は、血流を促し、ストレスを和らげ、睡眠を改善するため、むしろ勧められる。
入浴(1日1回)も、控える必要がない。入浴は、血行を促し、リラックスをもたらす。ただし、めまいがある時期は、転倒の危険があるため、①長湯を避ける、②熱い湯を避ける、③一人で入らない、といった注意を伝える。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも控える必要のない生活習慣になる。この設問の鍵は、生活習慣の中から、①内耳の血流を妨げるもの、②全身の健康を害するもの、を選ぶことになる。喫煙20本/日と、飲酒700mL/日は、いずれも過量であり、この機会に改めるべきものになる。加えて、突発性難聴では、①安静、②ストレスの回避、③十分な睡眠も重要になる。
理解を深める
突発性難聴を整理する。特徴=①突然(多くは、いつ発症したかを特定できるほど急に)、②一側性(両側は極めてまれ)、③高度の感音難聴、④原因不明(他の疾患を除外して診断する)、⑤耳鳴と、めまいを伴うことがある(めまいを伴う場合は、予後がやや悪いとされる)、⑥再発しない(繰り返す場合は、メニエール病などの別の疾患を疑う)。この「一度きり」という点が、メニエール病との重要な違いになる。予後=①およそ3分の1が治癒、3分の1が改善、3分の1が改善しない、とされる、②発症から治療開始までの期間が短いほど予後がよい。したがって、突然の難聴は、①耳鼻咽喉科を、②できるだけ早く(数日以内に)受診することが極めて重要になる。「そのうち治るだろう」と様子をみることが、最も避けるべき対応になる。治療=①副腎皮質ステロイドの全身投与(第一選択)、②循環改善薬、ビタミンB12、③高気圧酸素療法、④鼓室内へのステロイドの注入、⑤安静とストレスの回避。看護=①安静の必要性を伝える、②聞こえにくさへの配慮(患側から話しかけない、正面から、はっきりと、静かな環境で、書いたものも用いる)、③めまいがある場合の転倒の予防、④ステロイドの副作用(血糖の上昇、感染、不眠、胃腸障害、気分の変動。とくに糖尿病がある場合は血糖の管理を要する)、⑤不安への対応(聞こえが戻るかという不安は極めて強い。加えて、仕事と生活への影響も大きい)、⑥生活の指導(禁煙、節酒、睡眠、ストレス、そして騒音を避ける)、⑦改善しない場合の支援(補聴器、身体障害者手帳、そして片耳が聞こえないことによる生活の困難=音の方向が分からない、騒音の中で聞き取れない、への対応)。他の耳の疾患との区別=①メニエール病=反復するめまい発作、変動する難聴と耳鳴、耳閉感、②聴神経腫瘍=緩やかに進行する一側の難聴と耳鳴、③加齢性難聴=両側性、高音域から、緩やかに進行、④急性低音障害型感音難聴=低音域の難聴と耳閉感。再発しうる。
間違えやすい考え方
生活指導を問う型で、誤肢が控える必要のない習慣である。内耳の血流を妨げるもので切る。
5分で振り返る
①突発性難聴の原因は、内耳の循環障害とウイルス感染が有力な説。内耳の血流を妨げる要因を避ける。②喫煙は、血管を収縮させ、酸素の運搬を妨げ、内耳の血流と酸素化を悪化させる。③この患者の飲酒(1日ビール700mL)は過量であり、脱水、睡眠の質の低下、血圧への影響からも控える。④外食(週2回)、散歩(週2回)、入浴(1日1回)は控える必要がない。散歩は血流を促し、ストレスを和らげる。⑤特徴=突然、一側性、高度の感音難聴、原因不明、再発しない。⑥予後=およそ3分の1が治癒、3分の1が改善、3分の1が改善しない。発症から治療開始までが短いほど予後がよい。⑦突然の難聴は、できるだけ早く(遅くとも数日以内に)耳鼻咽喉科を受診する。治療開始が早いほど予後がよい。様子をみることが最も避けるべき対応になる。⑧治療の第一選択は副腎皮質ステロイドの全身投与。
1分チェック
- 突発性難聴の退院後は。→ 飲酒と喫煙を控える(散歩と入浴は続けてよい)。
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