次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(47歳、女性、会社員)は、夫(54歳)と2人暮らし。6か月前から月経不順になり、閉経前の症状と思い様子をみていた。しかし、徐々に普段の月経時の出血量よりも多くなり、下腹部痛が出現してきたため、病院の婦人科外来を受診した。診察後、経腟超音波検査の指示が出され、看護師はAさんに検査について説明することになった。
A さんは、経腟超音波検査で異常所見が認められ、その後の精密検査で 子宮体癌〈uterine corpus cancer〉と診断 されて準広汎子宮全摘出術と両側付属器(卵巣、卵管)切除術を受けた。術後の経過はよく、排尿障害もなく順調に回復していた。術後12 日目のバイ タルサイン測定時に「身体のほてりがあり、急に汗が出るようになったりして、夜 もよく眠れません。そのためかイライラします」と看護師に訴えた。 A さんに出現している症状の原因はどれか。
公式正答:1
解説
準広汎子宮全摘出術と両側付属器切除術を受けた47歳女性が、術後12日目に「身体のほてり、急に汗が出る、夜眠れない、イライラする」と訴えた原因を問う。エストロゲンの減少である。
この問題で問われていること
両側の卵巣を摘出した影響を説明できるか。
しくみから理解する
両側の付属器(卵巣と卵管)を切除すると、エストロゲンを産生する器官が失われる。閉経が自然に訪れる場合、卵巣の機能は数年かけて緩やかに低下するが、手術では一日で失われるため、①症状が急激に、②強く現れる(外科的閉経)。ほてり、のぼせ、発汗(血管運動神経症状)、そして不眠といらだち(精神症状)は、いずれもエストロゲンの急減による更年期様症状になる。術後12日という時期も、これに合致する。
選択肢ごとの確認
プロラクチンの減少ではない。プロラクチンは下垂体前葉から分泌され、乳汁の産生を促す。この症状とは関係しない。
アンドロゲンの増加でもない。卵巣からはアンドロゲンも分泌されるため、摘出により、むしろ減少する。
オキシトシンの増加でもない。オキシトシンは、子宮の収縮と射乳を促す。
プロゲステロンの増加でもない。プロゲステロンも卵巣(黄体)から分泌されるため、摘出により失われる。
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混同しやすいポイント
卵巣が分泌するホルモンを押さえる。①エストロゲン、②プロゲステロン、③少量のアンドロゲン。したがって、両側の卵巣を摘出すれば、これらがすべて失われる。誤肢のうち、③⑤は「増加」と述べている点で、機序と逆になる。②④は、卵巣以外から分泌されるホルモンになる。
理解を深める
外科的閉経を整理する。特徴=自然の閉経と比べ、①症状が急激で強い、②年齢が若いほど影響が大きい、③長期の健康への影響も大きい(骨粗鬆症、心血管疾患、そして認知機能への影響が、より早く現れうる)。症状=①血管運動神経症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸)、②精神症状(不眠、いらだち、不安、抑うつ、集中力の低下)、③泌尿生殖器の症状(腟の乾燥、性交痛、頻尿、繰り返す膀胱炎)、④その他(関節痛、皮膚の乾燥、疲労感)。対応=①ホルモン補充療法(適応と禁忌を評価して行う。子宮を摘出していればエストロゲン単独で行える。ただし、現在の乳癌と現在の子宮内膜癌は禁忌になる。治療を終えた子宮体癌については、再発の危険に応じて個別に判断する。この患者は子宮体癌の術後であるため、慎重な判断を要する)、②漢方薬、③向精神薬、④生活の調整(環境の温度、通気性のよい衣服、カフェインとアルコールの調整、運動、睡眠)、⑤心理的な支援。看護=①症状の説明(手術によるものであり、本人の気持ちの問題ではないと伝える。「気のせい」「年のせい」と受け取らない)、②見通しを伝える(時間とともに和らぐことが多い)、③生活の工夫を一緒に考える、④骨と血管の健康を長期的に守る(カルシウムとビタミンD、運動、禁煙、定期的な骨密度の測定)、⑤ボディイメージと女性性への影響(子宮と卵巣を失うことは、単なる臓器の摘出ではなく、その人の自己像に関わる。喪失感、女性でなくなったという感覚、そしてパートナーとの関係への不安を伴うことがある)、⑥性生活への影響と、その相談(後述の設問に続く)、⑦妊よう性の喪失(若年の場合、極めて大きな影響になる)。加えて、①がんの治療そのものへの不安、②再発への恐れ、③今後の経過という課題も同時に抱えている。症状を一つずつ扱うだけでなく、その人が置かれた状況の全体に目を向けることが求められる。
間違えやすい考え方
原因を問う型で、誤肢が別のホルモンと機序の逆である。卵巣が分泌するホルモンで切る。
5分で振り返る
①両側の付属器(卵巣と卵管)の切除により、エストロゲンを産生する器官が失われる。②自然の閉経では数年かけて緩やかに低下するが、手術では一日で失われるため、症状が急激かつ強く現れる(外科的閉経)。③ほてり、発汗、不眠、いらだちは、エストロゲンの急減による更年期様症状。④卵巣は、エストロゲン、プロゲステロン、そして少量のアンドロゲンを分泌する。摘出によりすべて失われる。アンドロゲンとプロゲステロンは増加しない。⑤プロラクチンは下垂体前葉から、オキシトシンは下垂体後葉から分泌される。⑥年齢が若いほど影響が大きく、骨粗鬆症と心血管疾患の危険も早く高まる。⑦ホルモン補充療法は、エストロゲン依存性の腫瘍の既往があれば慎重な判断を要する。⑧症状は本人の気持ちの問題ではないと伝える。
1分チェック
- 両側の卵巣を摘出すると。→ エストロゲンの急減による更年期様症状(外科的閉経)。
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