次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(47歳、女性、会社員)は、夫(54歳)と2人暮らし。6か月前から月経不順になり、閉経前の症状と思い様子をみていた。しかし、徐々に普段の月経時の出血量よりも多くなり、下腹部痛が出現してきたため、病院の婦人科外来を受診した。診察後、経腟超音波検査の指示が出され、看護師はAさんに検査について説明することになった。
A さんはその後、順調に経過し退院した。退院後、初回の外来受診時に看護師 がA さんに心配なことを尋ねると「退院のときも性生活の説明を聞きましたが、子 宮がなくなって自分の身体がどう変化しているかわからないし、やっぱり性生活の ことが気がかりです。夫も私の身体を気遣ってくれて、今日も一緒に病院に来てく れました」と語った。 A さんへの性生活の説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
準広汎子宮全摘出術と両側付属器切除術を受けた患者への、性生活の説明で適切なものを問う。腟の乾燥に対して潤滑ゼリーを用いるとよいである。
この問題で問われていること
術後の身体の変化から、具体的な助言を導けるか。
しくみから理解する
両側の卵巣を摘出したことでエストロゲンが失われ、腟の粘膜が萎縮し、分泌が減って乾燥する。その結果、性交痛が生じ、性生活を避けるようになることが多い。潤滑ゼリーの使用は、①具体的で、②すぐに実行でき、③効果が得られる助言になる。加えて、①エストロゲンの局所投与(腟錠、クリーム)も選択肢になるが、この患者はエストロゲン依存性の腫瘍であるため、医師の判断を要する、②時間をかける、③無理をしない、といった助言も併せて伝える。
選択肢ごとの確認
術後1年までは性行為を控える、という説明は適切でない。腟断端の治癒を待つ必要はあるが、通常は術後1〜2か月程度で、医師の許可を得て再開できる。1年という期間には根拠がなく、不必要に長い制限は、本人とパートナーの関係にも影響する。
夫と別々に説明することを提案することも、この場面では適切でない。この患者は、夫が気遣ってくれていること、そして一緒に来院していることを語っており、二人で共有したいという意向がうかがえる。加えて、性生活は二人の問題であり、双方が理解することで、無理と誤解を避けられる。ただし、①本人が別々を望む場合、②聞かれたくないことがある場合もあるため、本人の意向を確認したうえで進める。
性行為再開後は避妊を続けてもらう、という説明も適切でない。子宮と両側の卵巣を摘出しているため、妊娠は生じない。避妊は不要になる。ただし、①性感染症の予防としてのコンドームの使用は、状況により勧められる、②この点を混同しないよう、目的を明確にして伝える。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①根拠のない制限、②本人の意向に反する提案、③不要な指導になる。術後の性生活の相談では、①身体の変化を正確に伝える、②具体的な工夫を示す、③パートナーとの関係に配慮する、④本人が話しやすい場を作る、という4点が重要になる。加えて、この話題は、医療者の側が避けがちであり、そのために本人が相談できずに悩み続けることが多い。こちらから話題にすることが、支援の入口になる。
理解を深める
婦人科の手術後の性生活を整理する。身体の変化=①腟の乾燥と萎縮(エストロゲンの欠乏による)、②腟の短縮(広汎子宮全摘出術では、腟壁の一部も切除される)、③知覚の変化、④手術後の疼痛と、傷への意識、⑤排尿と排便の変化(広汎子宮全摘出術では、骨盤内の神経が損傷され、排尿障害が生じうる)、⑥リンパ浮腫(リンパ節郭清後)。心理的な変化=①ボディイメージの変化(子宮を失うこと、傷、そして「女性でなくなった」という感覚)、②性的な自己像の揺らぎ、③再発への不安、④パートナーへの気兼ね(「相手に申し訳ない」「求められるのがつらい」)、⑤パートナー側の戸惑い(「傷つけてしまうのでは」「求めてよいのか」)。この、双方が相手を気遣って言い出せない状態が、しばしば生じる。支援=①話題にする(「性生活について、気がかりなことはありませんか」と、こちらから尋ねる)、②正確な情報を伝える(何が変わり、何が変わらないか。子宮がなくても性交は可能であり、快感が失われるわけではないこと)、③具体的な工夫(潤滑ゼリー、時間をかける、体位の工夫、無理をしない、痛みがあれば中断する)、④再開の時期(医師の許可を得てから。通常は術後1〜2か月)、⑤パートナーを含めた説明(本人の同意を得て)、⑥性交だけが性生活ではないこと(触れ合い、共に過ごす時間も含まれる)、⑦専門的な相談先(がん相談支援センター、性に関する相談窓口)。看護師の姿勢=①この話題を避けない、②価値観を押しつけない(性生活を持つべき、持たなくてよい、のいずれも押しつけない)、③プライバシーを確保する、④一度で終わらせず、機会を作る、⑤自分が答えられないことは、答えられる人へつなぐ。
間違えやすい考え方
指導を問う型で、誤肢が根拠のない制限・意向に反する提案・不要な指導である。身体の変化から導いて切る。
5分で振り返る
①両側の卵巣の摘出によりエストロゲンが失われ、腟の粘膜が萎縮して乾燥し、性交痛が生じる。②潤滑ゼリーは、具体的で、すぐ実行でき、効果が得られる助言になる。③エストロゲンの局所投与も選択肢だが、エストロゲン依存性の腫瘍では医師の判断を要する。④性行為の再開は、通常は術後1〜2か月程度で、医師の許可を得てから。1年という制限には根拠がない。⑤この患者は夫と一緒に来院しており、二人で共有したい意向がうかがえる。ただし本人の意向を確認する。⑥子宮と両側の卵巣を摘出しているため妊娠は生じず、避妊は不要。性感染症の予防とは目的を分けて伝える。⑦本人とパートナーが互いを気遣って言い出せない状態が生じやすい。こちらから話題にすることが支援の入口になる。⑧性交だけが性生活ではない。
1分チェック
- 術後の腟の乾燥には。→ 潤滑ゼリーを用いる(避妊は不要)。
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