次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(75歳、女性)は、1人暮らし。高血圧症〈hypertension〉の内服治療をしているが、その他に既往歴はない。認知機能は問題ない。軽度の円背があるが、日常生活動作〈ADL〉は自立している。簡単な家事は自分で行っており、家の中で過ごすことが多かった。近所に住む長女が時々、Aさんの様子を見に来ていた。ある日、Aさんは自宅の階段を踏み外して転落し、横向きになったまま動けなくなったところを訪問してきた長女に発見され、救急車で病院に運ばれ、右大腿骨頸部骨折〈femoralneckfracture〉と診断された。そのまま入院し、緊急手術を行うことになった。
手術前オリエンテーションの際の看護師の説明内容で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
自宅の階段から転落し、右大腿骨頸部骨折で緊急手術を行うことになった75歳女性への、手術前オリエンテーションの説明内容を問う。「手術後は背中にクッションを当てます」である。
この問題で問われていること
術後の体位の保持の意味を、事前に伝えられるか。
しくみから理解する
この患者には軽度の円背があり、仰臥位では背部と寝具の間に空隙ができて腰部に圧が集中し、不快になりやすい。背中と腰にクッションを当てるのは、この空隙を埋めて体位を安定させ、同一部位への圧迫を減らすためである。術前オリエンテーションの時点では術式も進入法も示されていないが、人工骨頭置換術が行われる場合には、脱臼を防ぐため術側の下肢を内転・内旋にしない配慮が加わり、両下肢の間に外転枕を挟む方法をとる。あらかじめ伝えておけば、術後に本人が驚かず、また協力も得られる。
選択肢ごとの確認
「手術はすぐに終わります」は適切でない。大腿骨頸部骨折の手術(骨接合術または人工骨頭置換術)は、通常1〜2時間程度を要する。「すぐ」という曖昧で事実に反する表現は、①本人の予測を誤らせ、②家族の待ち時間の見込みも狂わせる。具体的な時間の目安を伝える。
「手術後はすぐに水を飲めます」も適切でない。麻酔の方法により異なるが、①全身麻酔では、覚醒の程度と嚥下の回復を確認してから、②脊椎麻酔でも、状態を確認してから、飲水を開始する。加えて、悪心と嘔吐がある場合は遅らせる。「すぐ」とは言えない。
「手術後は両足とも動かしてはいけません」は誤りになる。むしろ、①健側の下肢は自由に動かしてよく、②術側も、禁忌肢位を避けた範囲で、足関節の底背屈運動などを早期から行う。動かさないことは、深部静脈血栓症、筋力の低下、関節の拘縮、そして褥瘡を招く。「動かしてはいけない」ではなく、「この動きは避け、この動きは行う」と、具体的に伝える。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①②が曖昧で事実に反する保証、③が過度の制限になる。術前の説明では、「すぐ」「大丈夫」「痛くない」「動いてはいけない」といった、曖昧または過度な表現を避ける。代わりに、①具体的な時間と手順、②予測される感覚(痛み、だるさ)、③その対処(鎮痛薬を我慢せず求めてよいこと)、④してよい動きとしてはいけない動き、を伝える。
理解を深める
大腿骨頸部骨折の周術期を整理する。背景=①高齢者に多く、②多くは転倒による、③骨粗鬆症が背景にある、④受傷後、歩行不能となり、⑤放置すれば臥床が続き、認知機能の低下、肺炎、褥瘡、そして深部静脈血栓症を招く。したがって、⑥可能な限り早期(受傷から48時間以内が望ましいとされる)に手術を行い、⑦早期に離床することが、生命予後と生活機能の両方を左右する。手術=①骨接合術(骨をつなぐ。転位が小さい場合)、②人工骨頭置換術(骨頭を人工物に置き換える。転位が大きい場合と、骨頭壊死の危険が高い場合)。術前の看護=①全身状態の評価(併存疾患、内服薬=とくに抗血栓薬、認知機能、栄養、そして受傷前の生活機能)、②疼痛の管理(強い痛みがあり、体位変換も困難になる。十分な鎮痛を行う)、③安静による合併症の予防(褥瘡、深部静脈血栓症、肺炎、便秘)、④せん妄の予防(環境、眼鏡と補聴器、家族の面会、そして薬剤の見直し)、⑤オリエンテーション(手術の流れ、術後の状態、深呼吸と咳嗽、離床の予定、疼痛の伝え方、そして禁忌肢位=人工骨頭置換術の場合)、⑥家族への説明と、退院後の生活の見通しの共有。術後の看護=①疼痛の管理(痛みがあると離床できない)、②早期離床(術後翌日からの座位と立位を目指す)、③脱臼の予防(人工骨頭置換術の場合。後方アプローチでは、屈曲・内転・内旋を避ける)、④深部静脈血栓症の予防、⑤せん妄、⑥感染、⑦栄養、⑧リハビリテーション、⑨退院支援(受傷前の生活へ戻れるか、住環境、介護保険、そして再骨折の予防)。予後=①受傷前の歩行能力へ戻れるのはおよそ半数、②1年以内の死亡率は1割前後、③反対側の骨折の危険も高まる。したがって、①骨粗鬆症の治療、②転倒の予防、③栄養と運動が、退院後の重要な課題になる。
間違えやすい考え方
説明を問う型で、誤肢が曖昧な保証と過度の制限である。具体的に、事実にもとづいて伝えるで切る。
5分で振り返る
①この患者には軽度の円背があり、仰臥位では背部に空隙ができて腰部に圧が集中する。背中と腰にクッションを当てるのは、その空隙を埋めて体位を安定させ、圧迫を減らすためである。②人工骨頭置換術が行われる場合には、脱臼を防ぐため術側の下肢を内転・内旋にせず、両下肢の間に外転枕を挟む配慮が加わる。③あらかじめ伝えておけば、本人が驚かず、協力も得られる。④「両足とも動かしてはいけない」は誤り。健側は自由に動かし、術側も禁忌肢位を避けて足関節の運動を早期から行う。⑤動かさないことは、深部静脈血栓症、筋力低下、拘縮、褥瘡を招く。⑥手術は通常1〜2時間程度。「すぐ終わる」とは言わない。⑦術後の飲水は、覚醒の程度と嚥下の回復を確認してから。⑧後方アプローチの禁忌肢位=屈曲(90度超)・内転・内旋。⑨受傷から48時間以内の手術と、早期離床が予後を左右する。
1分チェック
- 術後の体位は。→ 背中にクッションを当て、外転枕で内転と内旋を防ぐ。
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