次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(75歳、女性)は、1人暮らし。高血圧症〈hypertension〉の内服治療をしているが、その他に既往歴はない。認知機能は問題ない。軽度の円背があるが、日常生活動作〈ADL〉は自立している。簡単な家事は自分で行っており、家の中で過ごすことが多かった。近所に住む長女が時々、Aさんの様子を見に来ていた。ある日、Aさんは自宅の階段を踏み外して転落し、横向きになったまま動けなくなったところを訪問してきた長女に発見され、救急車で病院に運ばれ、右大腿骨頸部骨折〈femoralneckfracture〉と診断された。そのまま入院し、緊急手術を行うことになった。
A さんの退院日が決定した。看護師は、A さんの退院前の指導を行うことに なった。A さんから「医師から骨がもろくなっていると言われました。これ以上悪 くならないように何をすればよいでしょうか」と質問があった。 A さんへの看護師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
「骨がもろくなっている。これ以上悪くならないように何をすればよいか」と質問した75歳女性への説明を問う。「日光を浴びるようにしましょう」である。
この問題で問われていること
骨を作るために必要なものを説明できるか。
しくみから理解する
皮膚に紫外線が当たると、コレステロールの誘導体からビタミンDが作られる。ビタミンDは、①腸管でのカルシウムの吸収を促し、②腎でのカルシウムの再吸収を促し、③骨の形成に関わる。したがって、日光を浴びることは、骨を保つうえで有用になる。加えて、この患者は「家の中で過ごすことが多かった」と記されており、日光を浴びる機会が少ないことが、骨粗鬆症の背景にあると考えられる。目安として、1日15〜30分程度、手と顔に日光が当たれば足りるとされる(季節と地域により異なる)。
選択肢ごとの確認
「体操は控えましょう」は誤りになる。骨は、荷重と筋の牽引という刺激を受けることで作られる。運動をしなければ、骨量はさらに減る。したがって、①荷重のかかる運動(歩行、片脚立ち、軽い筋力訓練)、②バランスの訓練(転倒の予防)を、無理のない範囲で続けることが勧められる。ただし、①既に骨折した後であり、②転倒の危険もあるため、内容と強度は理学療法士と医師の指示にもとづいて決める。
「炭酸飲料を飲みましょう」も誤りになる。炭酸飲料、とくにリンを多く含むものは、①カルシウムの吸収を妨げ、②リンの過剰摂取は骨の代謝に影響する。加えて、糖分の摂取と、それにより他の栄養素の摂取が減ることも問題になる。
「果物を積極的に摂りましょう」は、誤りとまではいえないが、この質問への答えとして最も適切ではない。果物に含まれるカリウムとビタミンCは、骨に一定の良い影響を持つとされるが、骨粗鬆症の予防として最も重要なのは、①カルシウム、②ビタミンD、③ビタミンK、④タンパク質、⑤運動、⑥日光になる。果物は、これらの中心ではない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①運動を止める、②妨げるものを勧める、③中心でないものを勧める、になる。骨粗鬆症の予防の柱=①栄養(カルシウム1日700〜800mg、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質)、②日光、③運動(荷重とバランス)、④生活(禁煙、節酒、やせすぎない)、⑤転倒の予防、⑥薬物療法(診断された場合)、になる。
理解を深める
骨粗鬆症を整理する。病態=骨量が減少し、骨の微細な構造が劣化して、骨折しやすくなった状態。原因=①原発性(閉経後骨粗鬆症=エストロゲンの減少により骨吸収が亢進する。老人性骨粗鬆症=加齢による骨形成の低下)、②続発性(副腎皮質ステロイド薬の長期投与、内分泌疾患=副甲状腺機能亢進症と甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、消化管の手術後、不動と長期臥床、そしてアルコール依存)。とくに、副腎皮質ステロイド薬による骨粗鬆症は、頻度が高く、予防的な治療が推奨される。診断=①脆弱性骨折(軽微な外力による骨折。とくに椎体と大腿骨近位部)の既往、②骨密度(若年成人平均値の70%以下、または-2.5標準偏差以下)。好発部位=①椎体(圧迫骨折。円背と身長の低下。この患者にも軽度の円背がある)、②大腿骨近位部(転倒により生じ、生活機能への影響が最も大きい)、③橈骨遠位端(手をついて)、④上腕骨近位部。栄養=①カルシウム(1日700〜800mg。乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜)、②ビタミンD(1日10〜20μg。魚、きのこ、そして日光)、③ビタミンK(納豆、緑黄色野菜。ただしワルファリンを服用している場合は納豆を避ける)、④タンパク質、⑤避けるもの=過度のリン(加工食品、炭酸飲料)、過度の食塩、過度のカフェイン、アルコール。運動=①荷重のかかる運動が有効(水泳は骨への効果が乏しい)、②歩行、③片脚立ち(開眼片脚立ちを左右1分ずつ、1日3回など)、④スクワット、⑤バランスの訓練。薬物療法=ビスホスホネート(第一選択の一つ。服用の方法に注意=起床時に十分な水で服用し、その後しばらくは横にならず飲食もしない。横にならない時間と飲食を控える時間は薬剤ごとに異なり、国内の承認薬にはより長い時間を要するものもあるため、その薬剤の指定時間を製品の表示で確認する。顎骨壊死と非定型骨折に注意する)、活性型ビタミンD3、選択的エストロゲン受容体調節薬、副甲状腺ホルモン薬、抗ランクル抗体薬。看護=①転倒の予防(骨折を防ぐことが最終の目的になる)、②生活の指導、③服薬の継続(症状がないため中断しやすい)、④椎体骨折の徴候(背部痛、身長の低下、円背)、⑤定期的な検査。
間違えやすい考え方
予防を問う型で、誤肢が運動を止める・妨げるものを勧める・中心でないものである。骨を作る条件で切る。
5分で振り返る
①皮膚に紫外線が当たるとビタミンDが作られる。ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収と、腎での再吸収を促す。②この患者は家の中で過ごすことが多く、日光を浴びる機会が少ないことが背景にある。1日15〜30分程度、手と顔に当たれば足りるとされる。③骨は荷重と筋の牽引で作られる。体操を控えると骨量はさらに減る。荷重のかかる運動とバランスの訓練を、無理のない範囲で続ける。④コーラ類のようにリン酸を加えた飲料はリンを含み、多量に摂るとカルシウムの吸収に影響しうる。炭酸そのものが原因ではなく、サイダーのようにリンをほとんど含まない炭酸飲料もある。⑤果物は誤りとまではいえないが、中心ではない。中心はカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質、運動、日光。⑥好発部位=椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端、上腕骨近位部。⑦ビタミンKは納豆に多いが、ワルファリン服用中は避ける。⑧ビスホスホネートは、起床時に十分な水で服用し、服用後しばらくは横にならない。横にならない時間と飲食を控える時間は薬剤ごとに異なるため、その薬剤の指定時間を製品の表示で確認する。
1分チェック
- 骨粗鬆症の予防は。→ 日光(ビタミンD)、カルシウム、運動。
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