次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(5か月、女児)は、父親(会社員)、母親(主婦)、兄のB君(3歳)と4人家族である。近所に祖父母が住んでいる。Aちゃんは3日前から鼻汁と咳嗽があり、昨日夕方より39℃の発熱がみられ小児科外来を受診した。自宅で哺乳量の低下はなく、1日に1、2回咳嗽とともに嘔吐がみられていた。来院時、体温39.3℃、呼吸数45/分、脈拍142/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(roomair)であった。診察と検査の結果、RSウイルスによる急性細気管支炎acutebronchiolitisと診断され、去痰薬が処方された。
入院後7日、A ちゃんは症状が軽快し、哺乳量も増加して翌日の金曜日に退院 が決定した。母親は「A はだいぶ元気になりました。でもB が泣いたり、かんしゃ くをおこしたりすることが増えているようです。どうしたらいいでしょう」と看護 師に相談した。入院中、土曜日、日曜日は父親がB 君の世話をしており、平日は 祖父母が世話をしているとのことであった。退院時、父親は休暇をとりA ちゃん と母親を迎えに来る予定である。 母親への看護師の対応として適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
妹の入院中、3歳の兄が泣いたりかんしゃくをおこすことが増えたと相談した母親への対応を問う。「B君に関わる時間をたっぷりとりましょう」である。
この問題で問われていること
きょうだいの反応の背景を理解できるか。
しくみから理解する
3歳という年齢では、①自分の気持ちを言葉で十分には表せず、②親が急にいなくなった理由を、説明されても理解しきれないことがあり、③自分が悪いことをしたからではないかと感じることもある。多くは3語以上の文を話し、発達に合わせた短い説明であればある程度は分かるため、説明しないという意味ではない。泣くこととかんしゃくは、この不安と寂しさの表現になる。加えて、①祖父母と父親という、普段とは違う人が世話をしていること、②生活のリズムが変わったこと、も影響する。したがって、必要なのは、親(とくに母親)と関わる時間を確保することになる。短い時間でも、その子だけに向き合う時間を持つことが有効になる。
選択肢ごとの確認
「B君のかかりつけ医に相談しましょう」は適切でない。この反応は、状況に対する正常な反応の範囲であり、医療的な問題ではない。医療機関へ回すことは、①母親の不安を高め、②「うちの子はおかしいのか」という受け止めを生む。
「B君の保育所への入所を検討しましょう」も適切でない。①妹は翌日退院する予定であり、②環境をさらに変えることは、この子にとって新たな負担になる。加えて、③母親が求めているのは、いまの困りごとへの対応であり、長期的な体制の変更ではない。
「お兄ちゃんだから頑張りなさいと伝えましょう」も適切でない。①3歳の子どもに、我慢を求めることは発達に見合わない、②「お兄ちゃんだから」という言葉は、その子の気持ちを否定し、③さらに我慢を重ねさせる、④加えて、退行(赤ちゃん返り)を強めることもある。年齢に関係なく、その子の気持ちを受け止めることが先になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①医療の問題として扱う、②環境をさらに変える、③我慢を求める、の3つになる。きょうだいへの配慮の原則は、①この反応が自然であることを、母親に伝える、②関わる時間を確保する、③その子の気持ちを言葉にして受け止める、④できるだけ日常を保つ、⑤何が起きているかを、その子に分かる形で伝える、になる。
理解を深める
きょうだいへの支援を整理する。入院した子どものきょうだいが経験すること=①親との分離(とくに母親が付き添う場合)、②生活の変化(食事、就寝、世話をする人)、③説明が十分でないことによる不安と誤解(「妹は死んでしまうのか」「自分のせいではないか」「自分は大事にされていないのではないか」)、④我慢を求められる、⑤親の不安と緊張を感じ取る、⑥自分の予定(行事、遊び)が後回しになる、⑦周囲から「お兄ちゃんだから」と言われる。現れる反応=①退行(夜尿、指しゃぶり、甘え、赤ちゃん言葉)、②かんしゃくと反抗、③無理に良い子になる(我慢して手のかからない子になる。これも支援を要するサインになる)、④身体症状(腹痛、頭痛)、⑤睡眠と食事の変化、⑥保育所と園での様子の変化。支援=①その子に、年齢に応じた説明をする(何が起きているか、いつ帰るか、そしてその子のせいではないこと)、②親と関わる時間を作る(短くても、その子だけに向き合う。電話とビデオ通話も有効になる)、③日常をできるだけ保つ(生活のリズム、通園、遊び)、④世話をする人を、なるべく固定し、なじみのある人にする、⑤その子の気持ちを言葉にして受け止める(「寂しかったね」「よく待っていたね」)、⑥我慢を当然としない、⑦できれば面会の機会を作る(施設の方針による)、⑧退院後も、その子に目を向ける時間を意識する、⑨保育所と学校へ状況を伝え、配慮を求める。医療者の役割=①きょうだいの存在を意識し、親に尋ねる(「上のお子さんはどうしていますか」)、②親が抱える申し訳なさを受け止める、③具体的な工夫を一緒に考える、④きょうだいが面会に来た際に、声をかけ、関わる、⑤長期の入院と、重篤な疾患の場合は、きょうだい支援の仕組み(きょうだい児支援)を紹介する。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が医療の問題とする・環境を変える・我慢を求めるものである。反応の背景で切る。
5分で振り返る
①3歳では、自分の気持ちを言葉で十分には表せず、親が急にいなくなった理由も理解しきれないことがある。発達に合わせた短い説明であればある程度は分かる。泣くこととかんしゃくは、不安と寂しさの表現になる。②必要なのは、親と関わる時間の確保。短い時間でも、その子だけに向き合う時間を持つ。③この反応は状況に対する正常なもので、医療的な問題ではない。かかりつけ医への相談は、母親の不安を高める。④妹は翌日退院する予定であり、保育所への入所は新たな負担になる。⑤3歳に我慢を求めることは発達に見合わず、「お兄ちゃんだから」は気持ちを否定し、退行を強めることもある。⑥きょうだいの反応=退行(夜尿、指しゃぶり、甘え)、かんしゃく、無理に良い子になる、身体症状。⑦「無理に良い子になる」ことも支援を要するサインになる。⑧医療者は、きょうだいの存在を意識し、親に尋ねる。
1分チェック
- きょうだいの反応には。→ 関わる時間をたっぷりとる。
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