次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。
入院時のA さんへの看護師の対応として適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
覚醒剤の使用により逮捕され、保釈後に薬物依存症の治療のため入院した32歳男性への、入院時の看護師の対応を問う。回復が期待できる病気であることを伝えることである。
この問題で問われていること
依存症を、どう捉えて関わるかを判断できるか。
しくみから理解する
依存症は、意志の弱さでも人格の問題でもなく、脳の報酬系の変化を伴う疾患になる。そして、①治療により回復が期待でき、②多くの人が回復している。この事実を伝えることには、①本人の絶望と自己否定を和らげる、②治療への動機づけになる、③「自分は変われる」という感覚(自己効力感)を支える、という意味がある。加えて、逮捕という経験を経ており、強い恥と自責を抱えている可能性が高いため、この最初の関わりが、その後の治療への姿勢を大きく左右する。
選択肢ごとの確認
二度と使用しないと約束させることは適切でない。①依存症では、再使用(再発)が経過の一部として起こりうる、②約束させれば、再使用したときに「約束を破った」という自責が加わり、③正直に話せなくなる、④その結果、最も支援が必要なときに、支援から遠ざかる。約束ではなく、再使用が起きたときにどうするかを、あらかじめ共に考えておくことが有効になる。
使用をやめられなかったことに対する反省を促すことも適切でない。①既に逮捕という形で、社会的な制裁を受けている、②反省を求めることは、恥と自責をさらに強める、③依存症は、意志で止められないことが本質であり、反省で止まるものではない。
自分で薬物を断ち切る強い意志を持つように伝えることも適切でない。①「強い意志があれば止められる」という考えは、依存症の理解として誤っている、②これまで意志で止められなかった経験を持つ本人にとって、この言葉は「自分の意志が弱いからだ」という自己否定を強める、③回復に必要なのは、意志ではなく、治療、環境、そしてつながりになる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①約束させる、②反省を促す、③意志に帰する、の3つになる。いずれも、依存症を「意志の問題」として扱う点で共通する。依存症への関わりの原則は、①疾患として理解する、②責めない、③正直に話せる関係を作る、④再使用を失敗と決めつけない、⑤本人の努力を認める、⑥つながり続ける、になる。
理解を深める
依存症を整理する。定義=物質または行動に対する、制御の困難な欲求と、それによる生活への支障。特徴=①渇望(強い欲求)、②制御の困難、③耐性(同じ量では効かなくなる)、④離脱症状、⑤有害な結果が生じても続ける、⑥他の関心と活動の優先度が下がる。覚醒剤=①作用=中枢神経の興奮。多幸感、覚醒、食欲の抑制、②離脱=強い脱力感、抑うつ、過眠、そして強い渇望、③長期の使用=幻覚と妄想(覚醒剤精神病。統合失調症に似た症状を呈する)、④フラッシュバック(断薬後も、ストレスと飲酒などを契機に、精神症状が再燃する)。治療=①解毒と、離脱症状の管理、②精神症状への治療、③心理社会的な治療(集団療法、認知行動療法にもとづくプログラム、動機づけ面接)、④自助グループへの参加、⑤生活の立て直し(住まい、仕事、人間関係)、⑥家族への支援。回復の考え方=①「治る」ではなく「回復し続ける」、②再使用は経過の一部として起こりうる。起きたときに、どれだけ早く戻れるかが重要になる、③孤立は再使用に関わる重要な要因の一つになる。ほかに渇望、引き金への曝露、ストレス、負の感情、併存する精神疾患、入手のしやすさが関わる。つながりを保つことが回復を支える、④「やめること」だけを目標にせず、その人が生きやすくなることを目指す(依存の背景に、生きづらさ、トラウマ、そして孤立があることが多い)。看護=①疾患として理解し、責めない、②正直に話せる関係を作る、③本人の言葉を聴く、④再使用を報告できる関係を保つ、⑤自助グループと社会資源につなぐ、⑥家族への支援(共依存、疲弊、そして自責)、⑦身体の合併症の管理、⑧看護師自身の陰性感情(「自業自得」「またか」)を自覚し、一人で抱えない。この感情は自然に生じるものであり、否定するのではなく、気づいて扱うことが必要になる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢がすべて依存症を意志の問題として扱うものである。疾患として捉えて切る。
5分で振り返る
①依存症は、意志の弱さでも人格の問題でもなく、脳の報酬系の変化を伴う疾患。治療により回復が期待できる。②この事実を伝えることは、絶望と自己否定を和らげ、治療への動機づけになる。③二度と使用しないと約束させると、再使用したときに自責が加わり、正直に話せなくなる。④反省を促すことは、恥と自責をさらに強める。依存症は意志で止められないことが本質。⑤「強い意志を持つように」という言葉は、依存症の理解として誤っており、自己否定を強める。⑥回復に必要なのは、意志ではなく、治療、環境、つながり。⑦再使用は経過の一部として起こりうる。起きたときにどれだけ早く戻れるかが重要。⑧孤立は再使用に関わる重要な要因の一つ。ほかに渇望、引き金への曝露、ストレス、負の感情、併存する精神疾患、入手のしやすさが関わる。⑨看護師自身の陰性感情を自覚し、一人で抱えない。
1分チェック
- 依存症の入院時には。→ 回復が期待できる病気であることを伝える。
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