次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。
入院後1か月、A さんは「正直に言うと、今も覚せい剤を使いたいという気持ち がある。もし誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」と悩みを打 ち明けた。 A さんの状態のアセスメントとして適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
「今も覚醒剤を使いたいという気持ちがある。誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」と打ち明けた患者の状態のアセスメントを問う。精神依存である。
この問題で問われていること
精神依存と身体依存を区別できるか。
しくみから理解する
精神依存は、その物質を使いたいという強い欲求(渇望)が続く状態を指す。身体的な離脱症状の有無とは独立して存在し、①断薬から長期間が経過しても残り、②再使用の最大の要因になる。この患者は、入院後1か月が経過し、身体的な症状はないにもかかわらず、「使いたい気持ちがある」「抑えきれないだろう」と述べており、まさに精神依存の状態になる。加えて、それを正直に打ち明けられたことは、治療の関係が築けている証でもあり、支援の重要な機会になる。
選択肢ごとの確認
否認は、問題の存在そのものを認めない状態を指す。「自分は依存症ではない」「いつでもやめられる」「困っていない」といった形で現れる。この患者は、むしろ自分の状態を認め、正直に語っており、否認とは逆になる。
共依存は、相手の世話をすることに自分の存在価値を見出し、その関係から離れられなくなる状態を指す。多くは、家族の側に生じる。この患者の状態ではない。
身体依存は、その物質が体内にない状態で、身体的な離脱症状(退薬症状)が現れる状態を指す。覚醒剤では、身体依存は比較的軽く、離脱時には強い脱力感、抑うつ、過眠が生じるが、アルコールとオピオイドのような激しい身体症状は生じにくい。急性の離脱はおおむね1〜2週で軽快するが、その後も無快感、不快気分、睡眠障害、渇望が数週から数か月続きうるため、経過した期間だけで離脱を否定はしない。この患者では現在、身体的な離脱症状を認めていない。
離脱症状は、物質の中止または減量により生じる身体的・精神的な症状を指す。この患者に、現在それは示されていない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①問題を認めない状態、②家族の側の状態、③④身体的な症状に関わるものになる。精神依存と身体依存を、対で覚える。①精神依存=使いたいという欲求。すべての依存性物質で生じる。長く続き、再使用の要因になる、②身体依存=離脱症状が生じる。アルコール、オピオイド、睡眠薬・抗不安薬で強く、覚醒剤と大麻では比較的軽い。この事例のように、身体依存が軽くても、精神依存は強いという物質がある点が重要になる。
理解を深める
依存の回復と再使用の予防を整理する。渇望への対処=①引き金を知る(人=一緒に使っていた仲間、場所=使っていた場所、物=道具と関連するもの、状況=孤独、ストレス、飲酒、疲労、そして「うまくいっているとき」も引き金になる)、②引き金を避ける(連絡先を消す、場所へ行かない、関係を切る)、③避けられない場合の対処をあらかじめ決めておく(その場を離れる、誰かに電話する、別の行動をとる)、④渇望は波であり、時間とともに必ず弱まることを知る(数分から数十分で峠を越える)、⑤一人で抱えない(打ち明けることが、最も有効な対処になる。この患者が打ち明けられたこと自体が、大きな一歩になる)、⑥生活を整える(睡眠、食事、運動、そして予定のある毎日)、⑦回復した人とのつながり(自助グループ)。再使用が起きたとき=①「すべてが台無し」と考えない(一度の使用と、元の状態へ戻ることは別になる)、②何が引き金だったかを振り返る、③早く戻る、④正直に話せる関係を保つ、⑤支援者は責めない。プログラム=①集団療法、②認知行動療法にもとづくプログラム(薬物依存の再発防止プログラム。引き金の分析と対処の練習を行う)、③自助グループ(同じ経験を持つ人が、経験を分かち合う。継続した参加が回復を支える)、④家族の会。看護=①打ち明けられたことを認める(「話してくださってありがとうございます」)、②責めない、③具体的な対処を一緒に考える、④退院後の生活を具体的に描く(どこに住み、誰と過ごし、何をするか)、⑤自助グループと社会資源につなぐ、⑥家族への支援、⑦身体と精神の症状の管理、⑧法的な状況(保釈中であること)への配慮と、必要な機関との連携。
間違えやすい考え方
状態のアセスメントを問う型で、誤肢が否認・家族の状態・身体症状である。欲求が続くかどうかで切る。
5分で振り返る
①精神依存は、その物質を使いたいという強い欲求(渇望)が続く状態。身体的な離脱症状の有無とは独立し、断薬から長期間経っても残り、再使用に関わる重要な要因の一つになる。②この患者は入院後1か月で、身体症状はないが「使いたい気持ちがある」と述べており、精神依存の状態。③正直に打ち明けられたことは、治療の関係が築けている証であり、支援の重要な機会になる。④否認は、問題の存在そのものを認めない状態。この患者は逆。⑤共依存は、多くは家族の側に生じる。⑥身体依存は離脱症状が生じる状態。覚醒剤では比較的軽い。急性の離脱はおおむね1〜2週で軽快するが、無快感や睡眠障害は数週から数か月続きうるため、期間だけで判断せず現在の所見で見る。この患者は身体症状を認めていない。⑦引き金=人、場所、物、状況(孤独、ストレス、飲酒、疲労、そしてうまくいっているとき)。⑧渇望は波であり、数分から数十分で峠を越える。⑨一人で抱えず、打ち明けることが最も有効な対処になる。
1分チェック
- 「使いたい気持ちがある」は。→ 精神依存(身体依存とは別)。
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