次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(35歳、男性)は1人暮らし。両親は他県に住んでいる。30歳のときに双極性障害〈bipolardisorder〉と診断され、これまでに4回の入退院を繰り返している。給料をインターネットゲームの利用料金で度々使い果たし、それが原因で両親と何度も口論になったことがある。仕事では同僚とトラブルを起こすたびに転職を繰り返しており、今回も同僚と口論になり自ら退職した。Aさんは「前の職場の同僚に嫌がらせをしてやる」と母親に電話をかけ、心配した両親が一緒に精神科病院を受診した。診察室では多弁で大きな声を出し、椅子を蹴るなどの行為がみられた。医師の診察の結果、入院して治療することになった。
入院後2か月、A さんの状態は落ち着き、退院に向けての準備が進められてい る。A さんは、「会社で同僚と言い合いになってこれまでも仕事を変わってきた。 そのたびに調子が悪くなって、何度も入院した。家族と言い合いをしたぐらいで近 所から苦情があって、嫌になって引っ越した」と看護師に訴えた。 A さんの退院に向けて連携をとる機関はどれか。
公式正答:2 または 4
「または」で区切った組のいずれかと一致すれば正解です。解説
対人関係のつまずきから転職と入退院を繰り返し、近隣との関係でも困難を抱えてきた双極性障害の患者について、退院に向けて連携をとる機関を問う。保健所と地域活動支援センターである。この設問は、採点上、保健所と地域活動支援センターのいずれを選んでも正解とされた。
この問題で問われていること
地域で支える機関の役割を言えるか。
しくみから理解する
この患者に必要なのは、①退院後に、地域で継続して相談できる先と、②日中に安心して過ごせる居場所になる。保健所は、精神保健福祉に関する相談、訪問指導、そして関係機関との調整を担う公的機関であり、①退院後の継続した相談、②近隣との関係を含む生活上の困難への対応、③必要に応じた訪問、を行える。地域活動支援センターは、障害者総合支援法にもとづき、①創作的活動と生産活動の機会、②社会との交流の促進、③日中の居場所と相談、を提供する。この患者は、①仕事のたびに対人関係でつまずき、②孤立しやすく、③1人暮らしであるため、日中の居場所と、人との関わりを持てる場が有効になる。
選択肢ごとの確認
警察は、この患者の退院に向けて連携をとる機関ではない。「嫌がらせをしてやる」という発言は、症状としての易怒性の現れであり、既に治療により落ち着いている。犯罪行為があったわけではない。
保護観察所は、①保護観察、②医療観察制度の対象者への処遇(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者)、を担う機関になる。この患者は、いずれにも該当しない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも司法に関わる機関になる。精神障害があることと、司法の対象になることは、まったく別になる。連携先を選ぶ問いでは、①その機関が何を担うか、②この患者に何が必要か、の2つを照らし合わせる。この設問は、必要な支援が複数あり、どちらも正しいため、保健所と地域活動支援センターのいずれを選んでも正解とされた。
理解を深める
精神障害のある人を地域で支える仕組みを整理する。相談の窓口=①保健所=精神保健福祉の第一線の機関。相談、訪問指導、普及啓発、そして関係機関の調整。措置入院に関する事務も担う、②市町村=障害福祉サービスの支給決定、自立支援医療の申請、手帳の申請の窓口、③精神保健福祉センター=都道府県に設置。専門的な相談、技術支援、普及啓発、そして自立支援医療と手帳の判定、④基幹相談支援センター=地域の相談支援の中核、⑤相談支援事業所=サービス等利用計画の作成と、継続した相談。日中の場と就労=①地域活動支援センター=創作的活動、生産活動、社会との交流。日中の居場所として、気軽に利用できる、②就労移行支援=一般就労を目指す訓練(原則2年)、③就労継続支援A型(雇用契約あり)とB型(雇用契約なし)、④就労定着支援=就職後の定着を支える、⑤障害者職業センターとハローワーク=職業評価、職業準備訓練、職場適応援助者(ジョブコーチ)。住まい=①共同生活援助(グループホーム)、②自立生活援助、③住宅入居等支援事業。訪問と生活の支援=①訪問看護、②居宅介護(ホームヘルプ)、③自立訓練(生活訓練)、④アウトリーチ支援。経済=①自立支援医療(精神通院医療。医療費の自己負担が原則1割になる)、②精神障害者保健福祉手帳(税の控除、公共料金の割引など)、③障害年金、④生活保護。この患者への支援の組み立て=①保健所と相談支援事業所による継続した相談、②地域活動支援センターによる日中の居場所、③訪問看護による服薬と生活の支援、④自立支援医療による医療費の負担軽減、⑤就労支援(本人が「ゲーム関連の仕事」を望んでいるため、その希望を踏まえた職業評価と準備)、⑥両親への支援(他県在住であり、これまで口論を重ねてきた。家族が抱える困難も支える)、⑦再発の早期発見の仕組み(本人、家族、支援者が、徴候を共有しておく)。
間違えやすい考え方
連携先を問う型で、誤肢が司法の機関である。この患者に何が必要かで切る。複数正答の措置がある設問。
5分で振り返る
①保健所=精神保健福祉の相談、訪問指導、関係機関の調整を担う公的機関。②地域活動支援センター=創作的活動、生産活動、社会との交流。日中の居場所と相談を提供する。③この患者は、対人関係でつまずき、孤立しやすく、1人暮らしのため、継続した相談先と日中の居場所が有効。④この設問は、保健所と地域活動支援センターのいずれを選んでも正解とされた。⑤警察と保護観察所は司法に関わる機関。精神障害があることと、司法の対象になることは別。⑥保護観察所は、保護観察と医療観察制度の対象者への処遇を担う。⑦精神保健福祉センターは都道府県に設置され、専門的な相談と、自立支援医療・手帳の判定を行う。⑧自立支援医療により、精神科の通院医療費の自己負担が原則1割になる。⑨就労支援=就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援、職場適応援助者。
1分チェック
- 退院後の相談と日中の居場所は。→ 保健所と地域活動支援センター。
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