患者の選択権の行使を最も促進するのはどれか。
公式正答:4
解説
患者の選択権の行使を最も促進するものを問う。インフォームド・コンセントである。
この問題で問われていること
概念の意味を、患者の自己決定という観点から説明できるか。
しくみから理解する
インフォームド・コンセントは、医療者が、疾患の状態、検査と治療の内容、期待できる効果、伴う危険、代わりの選択肢、そして何もしない場合の見通しについて、患者が理解できる形で説明し、患者がそれを理解したうえで、自らの意思で同意することを指す。患者が選択肢を知り、比較し、自分で決めるという過程そのものであるため、選択権の行使を最も直接的に促進する。同意は一度で終わるものではなく、状況が変われば繰り返し行われ、また同意した後に撤回することもできる。
選択肢ごとの確認
父権主義(パターナリズム)は、医療者が患者にとって良いと判断したことを、患者の意思を確かめずに行う考え方になる。患者を保護の対象として扱い、選択権を制限する方向に働く。かつては医療の場で当然とされていたが、現在は患者の自律の尊重が原則になる。
医師の裁量権は、医師が専門的な判断にもとづいて、診療の方法を選ぶ権限を指す。医療の質を保つために必要なものだが、患者の選択権を促進するものではない。裁量権と患者の自己決定は、対話によって調整される。
コンプライアンス(服薬遵守)は、患者が医療者の指示に従うことを指す。従来はこの語が用いられてきたが、指示に従うかどうかという一方向の見方であるため、現在はアドヒアランス(患者が治療の方針の決定に参加し、その決定に沿って自ら治療を実行すること)、さらにはコンコーダンス(医療者と患者が対等な立場で合意を形成すること)という考え方へ移っている。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、父権主義と裁量権は、選択の主体が医療者の側にある。コンプライアンスは、患者が従うという構造で、やはり主体が医療者になる。インフォームド・コンセントだけが、患者を選択の主体として位置づけている。「誰が決めるのか」という問いで整理すると、すべて判断できる。
理解を深める
医療倫理と患者の権利を整理する。生命倫理の4原則=①自律の尊重(自己決定を尊重する)、②無危害(害を与えない)、③善行(利益をもたらす)、④正義(公平に扱う)。インフォームド・コンセントの要件=①医療者による十分な説明、②患者の理解、③自発性(強制がない)、④同意能力、⑤同意の表明。同意能力が不十分な場合=小児では、年齢と理解に応じた説明と同意(インフォームド・アセント)を行い、保護者から同意を得る。認知症や意識障害では、本人の意思を推定し、家族等と話し合って決める(意思決定支援)。関連する概念=セカンドオピニオン(他の医師の意見を求めること。患者の権利として保障される)、共同意思決定(医療者と患者が情報を共有し、一緒に決める過程。とくに選択肢が複数あり、価値観が判断を左右する場面で用いられる)、アドバンス・ケア・プランニング(将来の医療とケアについて、本人を中心に、家族と医療者が繰り返し話し合う過程)、そしてリビングウィル。看護師の役割=①説明の場に同席し、患者の理解を確認する、②説明の後に、分からなかったことを聞き取り、補う、③患者が質問できるよう支える、④迷いを聞く、⑤決めたことを支える、⑥決定を変えてもよいことを伝える。「説明したから同意を得た」ではなく、「理解して決められたか」を確認することが、看護の関わりになる。
間違えやすい考え方
概念を問う型で、誤肢がいずれも選択の主体を医療者に置く。誰が決めるのかという問いで切る。
5分で振り返る
①インフォームド・コンセント=十分な説明を受け、理解したうえで、自らの意思で同意すること。患者が選択の主体になる。②説明の内容=疾患の状態、検査と治療、効果、危険、代替の選択肢、何もしない場合の見通し。③同意は繰り返し行われ、後から撤回できる。④父権主義は、医療者が良いと判断したことを患者の意思を確かめずに行う考え方。⑤コンプライアンスは指示に従うこと。現在はアドヒアランス、コンコーダンスという考え方へ移っている。⑥生命倫理の4原則=自律の尊重、無危害、善行、正義。⑦同意能力が不十分な場合=小児はインフォームド・アセント、認知症等では意思を推定して家族等と話し合う。
1分チェック
- 患者の選択権を促進するのは。→ インフォームド・コンセント。
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