左前胸部から頸部や左上肢への放散痛が生じる疾患はどれか。
公式正答:2
解説
左前胸部から頸部や左上肢への放散痛が生じる疾患を問う。狭心症である。
この問題で問われていること
放散痛の機序と、疾患ごとの部位を覚えているか。
しくみから理解する
放散痛(関連痛)は、内臓からの痛みの信号が、脊髄の同じ高さに入る皮膚からの感覚神経と混線し、脳が皮膚の痛みと誤って認識することで生じる。心臓の求心路は第1〜5胸髄の高さで脊髄に入るため、同じ高さの皮膚領域である前胸部、左肩、左上肢の内側、そして心窩部に痛みを感じる。頸部と下顎への放散は、この胸髄の皮膚領域では説明できない。これらの感覚は上位頸髄と三叉神経の支配であり、迷走神経の求心路が上位頸髄と三叉神経脊髄路核へ収束することによって生じる。狭心症と心筋梗塞では、この放散痛が特徴的な所見になり、とくに「左上肢の内側へ広がる痛み」は、虚血性心疾患を強く疑わせる。
選択肢ごとの確認
胃潰瘍では、心窩部の痛みが主になる。食事との関係(胃潰瘍は食後、十二指腸潰瘍は空腹時と夜間に強い)が手がかりになる。背部への放散はありうるが、左上肢へは放散しない。
胆石症では、右季肋部から心窩部の痛みが生じ、右肩と右背部(右肩甲骨の下)へ放散する。脂肪の多い食事の後に起こりやすい。左ではなく右側になる点が、狭心症との違いになる。
尿管結石症では、側腹部から腰背部の激しい痛み(疝痛)が生じ、下腹部、鼠径部、そして陰部へ放散する。血尿を伴うことが多い。
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混同しやすいポイント
疾患ごとの放散痛の部位を、対応づけて覚える。心臓=左肩、左上肢の内側、頸部、下顎、心窩部。胆囊・胆道=右肩、右背部(右肩甲骨下)。膵臓=背部(腰背部への持続する痛み)。尿管=側腹部から鼠径部、陰部。横隔膜=肩(横隔神経が第3〜5頸髄から出るため)。虫垂=初期は臍周囲、その後右下腹部へ移動する。左右の違いが手がかりになる場面も多い(心臓は左、胆道は右)。
理解を深める
虚血性心疾患の症状を整理する。狭心症=心筋の一時的な虚血による。労作時に生じ、安静またはニトログリセリンで数分以内に軽快する(労作性狭心症)。安静時に起こるもの(異型狭心症=冠攣縮性狭心症)は、夜間から早朝に多く、心電図でST上昇を認める。心筋梗塞=冠動脈の閉塞による心筋の壊死。痛みは30分以上持続し、ニトログリセリンで軽快しないことが多い。ただしこれは典型像であって、心筋梗塞でも部分的に軽快することがあり、非心臓性の痛みが軽快することもある。軽快したことを心筋梗塞の除外根拠にしない。冷汗、悪心・嘔吐、呼吸困難、そして不安と恐怖を伴う。非典型的な症状=高齢者と糖尿病の患者では、神経障害により痛みを感じにくく、「何となく元気がない」「息が苦しい」「吐き気がする」といった形で現れることがある(無痛性心筋梗塞)。女性でも非典型的な症状が多いとされる。したがって、「胸が痛くないから心臓ではない」とは判断できない。看護=①痛みの評価(部位、性状、持続、放散、誘因、軽快の因子、随伴症状)、②12誘導心電図を速やかに記録する、③バイタルサインとモニター、④安静と静脈路の確保。酸素は酸素飽和度を測り、低酸素血症があるときに投与する(酸素化が保たれている急性冠症候群への一律の投与は推奨されていない)、⑤ニトログリセリンの投与(血圧の低下に注意)、⑥不安への対応、⑦発症からの時間の把握(再灌流療法の適応に関わる)。心筋梗塞では、発症から再灌流までの時間が予後を決めるため、迅速な対応が求められる。
間違えやすい考え方
放散痛の部位を問う型で、誤肢がすべて別の部位へ放散する疾患である。左右と部位で切る。
5分で振り返る
①放散痛は、内臓からの信号が脊髄の同じ高さの皮膚感覚と混線して生じる。②心臓の求心路は第1〜5胸髄に入るため、前胸部、左肩、左上肢の内側、心窩部に痛みを感じる。頸部と下顎への放散は胸髄の皮膚領域では説明できず、迷走神経の求心路が上位頸髄と三叉神経脊髄路核へ収束することによる。③胆石症は右季肋部から右肩と右背部へ放散する。④尿管結石は側腹部から鼠径部、陰部へ放散し、血尿を伴う。⑤横隔膜の刺激は肩へ放散する(横隔神経が第3〜5頸髄から出るため)。⑥典型的には、狭心症は数分で軽快し、心筋梗塞は30分以上持続してニトログリセリンで軽快しない。ただし軽快したことを心筋梗塞の除外根拠にしない。⑦高齢者と糖尿病の患者では痛みを感じにくく、無痛性心筋梗塞がある。「胸が痛くないから心臓ではない」とは判断できない。
1分チェック
- 左前胸部から頸部・左上肢への放散痛は。→ 狭心症(虚血性心疾患)。
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