1回の気管内吸引を30 秒以上実施した場合に生じるのはどれか。
公式正答:3
解説
1回の気管内吸引を30秒以上実施した場合に生じるものを問う。低酸素血症である。
この問題で問われていること
吸引という操作が、身体に何をするかを説明できるか。
しくみから理解する
気管内吸引では、カテーテルを気管へ入れ、陰圧をかけて分泌物を吸い取る。この間、①患者は息を吸えず、②気道内の空気そのものも吸い出され、③さらに肺胞が虚脱することもあるため、酸素化が急速に悪化する。したがって、1回の吸引は原則15秒以内(陰圧をかけている時間)にとどめる。大量分泌物で窒息のおそれがあり、吸引で改善が得られる例外を通常手順に一般化しない。30秒以上続ければ、低酸素血症は避けられない。加えて、低酸素は不整脈と徐脈、そして心停止も招きうるため、吸引の前後に酸素化を高め、酸素飽和度を監視しながら行う。
選択肢ごとの確認
嘔吐は、口腔内と咽頭の吸引で、カテーテルが咽頭後壁に触れると生じうるが、時間の長さによって特徴的に生じるものではない。
感染は、無菌操作が不十分な場合に生じる。時間の長さの問題ではない。
気道粘膜の損傷は、吸引圧が高すぎる、カテーテルを深く入れすぎる、陰圧をかけたまま挿入する、そして同じ部位を繰り返し吸引することで生じる。時間の長さも関わるが、30秒以上という条件から最も直接に生じるのは低酸素血症になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも吸引に伴う合併症だが、「時間の長さ」から直接生じるものではない。設問文の「30秒以上」という条件が、酸素化の問題を指している。吸引の合併症を、原因ごとに整理する。時間が長い=低酸素。圧が高い・深すぎる=粘膜の損傷。無菌操作の不備=感染。咽頭への刺激=嘔吐と迷走神経反射。深すぎる挿入=迷走神経反射による徐脈。
理解を深める
気管内吸引の実際を整理する。適応=分泌物の貯留を示す所見(副雑音、呼吸音の低下、努力呼吸、酸素飽和度の低下、人工呼吸器のグラフィックの変化、そして患者の訴え)があるとき。時間で決めて定期的に行うのではなく、必要なときに行う。準備=手指衛生、必要物品、酸素化(吸引の前に酸素濃度を上げる、または深呼吸を促す)、そして説明。実施=①吸引圧は成人で20kPa(150mmHg)程度を超えないよう設定する、②カテーテルの太さは気管チューブの内径の2分の1以下、③陰圧をかけずに挿入し、目的の深さで陰圧をかけながら引き抜く、④挿入の深さは、気管チューブの先端をわずかに越える程度(深すぎると気管分岐部と気管支の粘膜を傷つけ、迷走神経反射も起こす)、⑤1回10〜15秒以内、⑥必要なら間隔をあけて繰り返す(連続して行わない)。観察=酸素飽和度、心拍数とリズム、呼吸状態、顔色、分泌物の量・性状・色・におい、そして患者の反応。合併症=低酸素血症、不整脈と徐脈、粘膜の損傷と出血、感染、無気肺、頭蓋内圧の上昇、そして苦痛と不安。閉鎖式吸引=人工呼吸器の回路を外さずに吸引できるため、酸素化の低下と、飛沫による感染の拡大を防げる。吸引は、患者にとって強い苦痛を伴う処置であり、必要最小限にとどめ、実施の前後に声をかけることが基本になる。
間違えやすい考え方
合併症を問う型で、誤肢がいずれも別の原因で生じるものである。時間の長さから直接生じるもので切る。
5分で振り返る
①気管内吸引では、息を吸えず、気道内の空気も吸い出され、肺胞が虚脱するため酸素化が急速に悪化する。②1回は原則15秒以内にとどめ、酸素化・心拍・呼吸状態を監視する。窒息性の大量分泌物という例外を通常手順にしない。③低酸素は不整脈、徐脈、心停止も招く。④吸引圧は成人で20kPa(150mmHg)程度を超えない。⑤カテーテルは気管チューブの内径の2分の1以下の太さ。⑥陰圧をかけずに挿入し、引き抜きながら吸引する。深すぎると粘膜の損傷と迷走神経反射を招く。⑦時間で決めて定期的に行わず、分泌物の貯留を示す所見があるときに行う。
1分チェック
- 吸引を30秒以上続けると。→ 低酸素血症(1回は10〜15秒以内に)。
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