上肢のフィジカルアセスメントの立位での実施場面の写真(別冊No. 1)を別に示 す。 手のひらを上にして、肩の高さで水平に前方に両腕を伸ばしてもらった。その 後、閉眼してもらうと、左腕が回内しながら下がっていった。 アセスメントの結果で正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
両腕を前方に伸ばして閉眼すると、左腕が回内しながら下がっていった場合のアセスメントを問う。錐体路の障害である。
この問題で問われていること
所見の名称と、それが示す障害の部位を対応づけられるか。
しくみから理解する
この検査は上肢バレー徴候(バレー試験)になる。手掌を上に向けて、肩の高さで両腕を前方に伸ばし、閉眼して保持してもらう。錐体路(大脳の運動野から脊髄へ至る、随意運動を伝える経路)が障害されていると、麻痺側の腕が、回内しながら次第に下がってくる。回内するのは、上肢では屈筋群より伸筋群の方が、また回内筋より回外筋の方が、錐体路の障害の影響を受けやすいことによる。回外の力が先に弱まるため、前腕は回内する方向へ向かう。軽度の麻痺(徒手筋力テストでは明らかでない程度)でも検出できるため、脳血管障害の早期の発見に有用な検査になる。
選択肢ごとの確認
位置覚の異常では、閉眼すると自分の手足の位置が分からなくなるが、腕が回内しながら下がるという特徴的な動きは示さない。位置覚は、ロンベルグ試験(閉眼して立位を保つ)、そして母趾の位置覚の検査で調べる。
小脳機能の異常では、企図振戦、測定障害(指鼻試験で目標を行き過ぎる、または届かない)、変換運動障害(回内回外を素早く繰り返せない)、そして体幹の動揺と失調性歩行が現れる。腕を保持する検査では、動揺はみられても、回内を伴って下がるという所見にはならない。
関節可動域の障害では、そもそも腕を水平に上げられない、あるいは特定の角度で止まる。閉眼によって変化するものではない。
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混同しやすいポイント
「回内しながら下がる」という特徴的な動きが、錐体路の障害を示す。誤肢は、いずれも別の神経学的な異常であり、現れ方が異なる。神経学的な検査を、何を調べるかで整理する。バレー徴候=錐体路(運動)。ロンベルグ試験=深部感覚と平衡。指鼻試験と回内回外試験=小脳。腱反射=反射弓と錐体路(亢進は錐体路の障害)。バビンスキー徴候=錐体路(陽性は障害を示す)。
理解を深める
脳血管障害の早期の発見を整理する。突然の症状に注意する=①片側の顔面、上肢、下肢の脱力またはしびれ、②言葉が出ない、ろれつが回らない、相手の言うことが理解できない、③片側または両側の視力の障害、④歩行の困難、めまい、平衡の障害、⑤原因の分からない激しい頭痛。市民向けの啓発では、顔(片側が下がる)、腕(片側が下がる)、言葉(ろれつが回らない)、そして時刻(発症の時刻を確認して直ちに119番)という形で伝えられる。発症の時刻が重要なのは、血栓を溶かす治療(発症から4.5時間以内)と、血栓を回収する治療(一定の条件下で発症から24時間以内)に、時間の制約があるためになる。したがって、「いつから症状が始まったか」「最後に正常だったのはいつか」を確認することが、看護師の最初の仕事の一つになる。院内で発症した場合も同様で、直前の様子を知る人から情報を得る。看護の観察=意識レベル、瞳孔、麻痺の有無と程度、言語、嚥下、バイタルサイン、そして症状の変化。急性期は、状態が刻々と変わるため、繰り返し評価する。加えて、誤嚥、転倒、そして深部静脈血栓症の予防も、早期から始める。
間違えやすい考え方
所見を問う型で、誤肢が別の神経学的異常である。「回内しながら下がる」という特徴で切る。
5分で振り返る
①上肢バレー徴候=手掌を上に向けて両腕を前方に伸ばし、閉眼して保持する。錐体路の障害があると、麻痺側が回内しながら下がる。②軽度の麻痺でも検出できるため、脳血管障害の早期発見に有用。③位置覚の異常はロンベルグ試験と母趾の位置覚で調べる。④小脳の異常=企図振戦、測定障害、変換運動障害、体幹の動揺、失調性歩行。⑤バビンスキー徴候の陽性も錐体路の障害を示す。⑥脳血管障害を疑う突然の症状=片側の脱力としびれ、言語の障害、視力の障害、歩行の困難とめまい、激しい頭痛。⑦発症の時刻の確認が重要(血栓溶解は4.5時間以内、血栓回収は条件下で24時間以内)。
1分チェック
- 腕が回内しながら下がるのは。→ 錐体路の障害(上肢バレー徴候)。
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