A さん(24 歳、男性)は急性虫垂炎〈acute appendicitis〉の 術後1日で、ベッド上で仰臥位になり右前腕から点滴静脈内注射が行われている。A さんは左利きである。 病室外のトイレまでA さんが移動するための適切な療養環境はどれか。
公式正答:4
解説
急性虫垂炎の術後1日で、右前腕から点滴を受けている左利きの24歳男性が、病室外のトイレまで移動するための療養環境を問う。ベッドは端座位時に足底が床につく高さにすることである。
この問題で問われていること
安全に起き上がり、立ち上がるための条件を判断できるか。
しくみから理解する
端座位で足底が床につく高さは、立ち上がりの動作の土台になる。足底が床につくことで、①姿勢が安定し、②立ち上がる際に床を蹴る力を出せ、③起立性低血圧が起きたときにも踏みとどまれる。足が浮いていると、前方へ滑り落ちる危険があり、また立ち上がりに大きな力を要する。術後1日で、初回の歩行に近い状況であり、また点滴もあるため、まず安全に起き上がれる環境を整えることが基本になる。
選択肢ごとの確認
履物を左手側に置くことは、この場面の判断とは関係が薄い。利き手が左であることは、点滴が右前腕にあるため、日常の動作をしやすいという意味では有利になるが、履物の位置は、ベッドから降りる側(多くはベッド柵の開いている側)に合わせて置く。
ベッド柵を右手側に設置することは、この場面で優先されない。事例に示されているのは、術後1日で仰臥位であること、右前腕に点滴があることである。どちら側から降りるかは示されていないため、柵をどちら側に置くべきかを事例から導くことはできない。ベッド柵は、転落を防ぐ側と、起き上がりの支えにする側を、その人の動き方に合わせて決めるものであり、位置だけを指定してもどの目的で置くのかが定まらない。
輸液スタンドを左手側に置くことは適さない。点滴は右前腕から入っているため、スタンドは右手側に置く方が、ラインが身体を横切らず、引っかかりと引き抜きの危険が減る。移動の際も、点滴のある側でスタンドを押す形になる。
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混同しやすいポイント
「安全に立ち上がれるか」という基本の条件を、まず満たす。誤肢は、履物、柵、そしてスタンドの位置に関わるものだが、いずれも根拠が弱いか、逆になっている。とくに、輸液スタンドを点滴と反対側に置くと、ラインが身体を横切り、危険が増す。「ラインは身体を横切らせない」という原則を押さえる。
理解を深める
療養環境の整備を整理する。ベッドの高さ=端座位で足底が床につく高さ(膝がやや高くなる程度)。立ち上がりやすく、転落時の高さも低い。ベッド柵=転落の防止と、起き上がりの支え。両側を上げると拘束にあたる場合があるため、必要な範囲にとどめ、降りる側は開けておく。点滴=スタンドは点滴側に置き、ラインは身体を横切らせない。長さに余裕を持たせ、引っかかりを防ぐ。移動の際は、患者が自分でスタンドを押せるか確認する。履物=かかとを覆い、滑りにくく、脱げにくいもの。ベッドから降りる側に、向きをそろえて置く。ナースコール=手の届く位置に。左利きであれば、動かしやすい側に置く配慮もできる(ただし点滴のある側との兼ね合いを見る)。照明=夜間の足元灯。動線=ベッドからトイレまでの経路に、障害物、段差、コード、そして濡れた床がないか確認する。手すりの有無も見る。初回の歩行=必ず付き添う。起立性低血圧に注意し、端座位で数分待ってから立つ。めまい、ふらつき、そして創部の痛みを確認する。術後1日の患者では、麻酔の影響、疼痛、そして安静による筋力の低下が重なるため、転倒のリスクが高い。「自分で行けます」と言われても、初回は付き添うことが原則になる。
間違えやすい考え方
環境の整備を問う型で、誤肢が根拠の弱いものと逆になっているものである。安全に立ち上がれるかで切る。
5分で振り返る
①端座位で足底が床につく高さは、姿勢を安定させ、立ち上がる力を出せ、ふらついても踏みとどまれる。②足が浮いていると前方へ滑り落ちる危険がある。③輸液スタンドは点滴のある側に置き、ラインを身体を横切らせない。④ベッド柵は、転落を防ぐ側と起き上がりの支えを考えて配置する。両側を上げると拘束にあたる場合がある。⑤履物はかかとを覆い滑りにくいものを、降りる側に向きをそろえて置く。⑥ナースコールは手の届く位置に。⑦術後の初回歩行は必ず付き添い、端座位で数分待ってから立つ(起立性低血圧に注意)。
1分チェック
- 術後の初回歩行に向けて。→ 端座位で足底が床につく高さにベッドを合わせる。
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