解離性大動脈瘤〈dissecting aortic aneurysm〉の 破裂直後に出血性ショックhemorrhagic shock となった患者の症状として正しいの はどれか。
公式正答:4
解説
解離性大動脈瘤の破裂直後に出血性ショックとなった患者の症状として正しいものを問う。呼吸不全である。
この問題で問われていること
ショックの病態から、現れる症状を導けるか。
しくみから理解する
出血性ショックでは、循環血液量が急激に減り、全身の組織への酸素の供給が不足する。これに対して、身体は代償として、①交感神経を刺激して心拍数を増やし、末梢の血管を収縮させ、②呼吸を速く深くして酸素の取り込みを増やそうとする。しかし、供給が需要に追いつかなければ、組織は嫌気性の代謝に移り、乳酸が蓄積して代謝性アシドーシスをきたす。これをさらに呼吸で代償しようとするため、頻呼吸が進む。最終的には、呼吸筋の疲労と、肺への灌流の低下により、呼吸不全に至る。したがって、呼吸不全は出血性ショックの経過の中で現れる。
選択肢ごとの確認
黄疸は、ビリルビンの処理と排泄の障害により生じる。急性の出血で直ちに現れるものではない。大量輸血の後に溶血が起これば、間接ビリルビンが上がることはあるが、破裂の直後の症状ではない。
浮腫も、直後には現れない。むしろ、循環血液量が減った状態であり、組織の間質へ水が移動するのは、輸液の後、あるいは炎症が進んだ段階になる。
顔面紅潮ではなく、顔面蒼白になる。末梢の血管が収縮し、皮膚への血流が減るためになる。冷汗も伴う。なお、血液分布異常性ショック(アナフィラキシー、敗血症の初期、神経原性)では、末梢の血管が拡張するため、皮膚が温かく紅潮することがある(ウォームショック)。この違いが、ショックの型を見分ける手がかりになる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、顔面紅潮は、出血性ショックとは逆の所見になる。「循環血液量が減る→末梢を締めて血圧を保つ→皮膚は蒼白で冷たい」という流れを押さえる。ショックの5徴(蒼白、虚脱、冷汗、脈拍触知不能、呼吸不全)は、この機序から導ける。呼吸不全が5徴に含まれている点も、この設問の根拠になる。
理解を深める
ショックの分類と対応を整理する。①循環血液量減少性ショック=出血、脱水、熱傷。前負荷が減る。対応は、出血の制御と輸液・輸血。②心原性ショック=心筋梗塞、重症の不整脈、弁膜症。ポンプの機能が落ちる。対応は、原因の治療と、強心薬、そして補助循環。③閉塞性ショック=緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓症。血流が物理的に妨げられる。対応は、閉塞の解除(脱気、心膜穿刺、血栓の溶解)。④血液分布異常性ショック=アナフィラキシー、敗血症、神経原性。末梢の血管が拡張し、血液の分布が偏る。対応は、原因の治療と、血管を収縮させる薬、そして輸液。徴候=血圧の低下(収縮期90mmHg未満が目安。ただし初期は代償により保たれる)、頻脈、蒼白、冷汗、意識の変容、尿量の減少(0.5mL/kg/時未満)、そして毛細血管再充満時間の延長。ショック指数(心拍数÷収縮期血圧)は、出血量の推定に用いられる(1.0でおよそ1L、2.0でおよそ2Lの出血に相当する)。看護=①気道・呼吸・循環の評価と確保、②酸素投与、③静脈路の確保(太い針で2本)、④輸液と輸血の準備、⑤保温、⑥体位(下肢の挙上。ただし呼吸困難があれば無理に行わない)、⑦継続的なモニタリング、⑧原因の検索への協力。ショックは、早期に発見して介入すれば救えるが、進行すると不可逆になる。「血圧が下がってから」では遅い、という認識が重要になる。
間違えやすい考え方
症状を問う型で、誤肢が直後に現れないものと、逆の所見である。循環血液量の減少という機序から導く。
5分で振り返る
①出血性ショックでは循環血液量が減り、組織への酸素供給が不足する。②代償=頻脈、末梢血管の収縮、頻呼吸。③嫌気性代謝により乳酸が蓄積し、代謝性アシドーシスをきたす。呼吸で代償しようとして頻呼吸が進み、最終的に呼吸不全に至る。④ショックの5徴=蒼白、虚脱、冷汗、脈拍触知不能、呼吸不全。⑤末梢血管の収縮により皮膚は蒼白で冷たい。紅潮は血液分布異常性ショックの一部(ウォームショック)でみられる。⑥ショックの4分類=循環血液量減少性、心原性、閉塞性、血液分布異常性。⑦ショック指数(心拍数÷収縮期血圧)は出血量の推定に用いる(1.0で約1L)。
1分チェック
- 出血性ショックでは。→ 呼吸不全(ショックの5徴の一つ)。顔面は紅潮でなく蒼白になる。
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