A さん(54 歳、女性)は甲状腺機能亢進症 hyperthyroidism と診断され、放射性ヨウ素内用療法を 受けることとなった。 看護師の説明で正しいのはどれか。
公式正答:1
解説
甲状腺機能亢進症で放射性ヨウ素内用療法を受ける54歳女性への説明で正しいものを問う。「治療前1週間は海藻類を摂取しないでください」である。
この問題で問われていること
治療の原理から、必要な準備を導けるか。
しくみから理解する
放射性ヨウ素内用療法は、放射性のヨウ素(ヨウ素131)を経口で投与する治療になる。甲状腺は、ヨウ素を選択的に取り込んで甲状腺ホルモンを作る性質があるため、放射性ヨウ素も甲状腺に集まり、そこから出る放射線によって甲状腺の細胞が破壊される。したがって、治療の効果を高めるには、甲状腺が「ヨウ素に飢えた」状態にしておく必要がある。食事から多量のヨウ素を摂っていると、放射性ヨウ素の取り込みが減り、効果が下がる。海藻類(昆布、わかめ、ひじき、のり)はヨウ素を非常に多く含むため、治療の1〜2週間前から制限する。ヨード造影剤とうがい薬も同様に避ける。
選択肢ごとの確認
治療中に体を固定することはない。放射性ヨウ素はカプセルまたは液体を飲む治療であり、体を固定して照射する外照射とは方法が異なる。固定が必要なのは、放射線の外照射と、一部の画像検査になる。
治療後の副作用に脱毛はない。放射性ヨウ素は甲状腺に集まるため、全身への影響は限られる。主な副作用は、甲状腺の部位の腫脹と痛み(放射線甲状腺炎)、唾液腺の炎症と口渇、味覚の変化、悪心、そして治療後に生じる甲状腺機能低下症になる。機能低下症は高い頻度で起こるため、その後は甲状腺ホルモン薬の補充が必要になることが多い。
治療後1週間の生野菜の制限も不要になる。生野菜の制限は、好中球が減少している患者に対する感染の予防として行われることがあるもので(現在は有効性が疑問視され、必ずしも行われない)、この治療とは関係しない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、治療の方法の取り違え、副作用の誤り、そして別の治療の制限の混同になる。「甲状腺がヨウ素を取り込む」という原理を押さえれば、ヨウ素の制限が必要な理由も、全身への影響が限られる理由も導ける。加えて、治療後の甲状腺機能低下症は頻度が高く、線量と治療の意図によっては意図された帰結でもある。ただし全例に必ず生じるものではなく、年単位で累積して現れるため、あらかじめ説明したうえで長期に経過を観察する。
理解を深める
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療を整理する。①薬物療法=抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)。第一選択になることが多い。副作用として、無顆粒球症(発熱と咽頭痛が徴候。直ちに受診するよう指導する)、肝障害、そして皮疹がある。②放射性ヨウ素内用療法=上記。妊娠中と授乳中は禁忌。治療後は一定期間、妊娠を避ける(女性で6か月程度)。周囲への被曝を減らすため、投与量に応じて、入院または一定期間の生活上の注意(乳幼児と妊婦との密着を避ける、トイレの後によく流す、寝室を分ける)が必要になる。③手術=甲状腺の亜全摘または全摘。腫大が大きい、悪性が疑われる、そして早期に治したい場合に選ばれる。合併症=反回神経麻痺(嗄声)、副甲状腺の機能低下(低カルシウム血症によるテタニー。口周囲のしびれ、手指の攣縮、そしてトルソー徴候とクボステック徴候)、出血による気道の圧迫(術直後の呼吸困難は緊急事態)、そして甲状腺クリーゼ。看護=①症状の観察(動悸、体重減少、発汗、手指振戦、易疲労感、眼症状)、②環境(涼しく静かに)、③栄養(代謝が亢進しているため十分なエネルギー)、④服薬の継続と副作用の早期発見、⑤眼症状のケア(乾燥の防止、サングラス、就寝時の眼軟膏)、⑥甲状腺クリーゼ(高熱、頻脈、意識障害、心不全)への注意になる。
間違えやすい考え方
治療の準備を問う型で、誤肢が方法・副作用・別の制限で誤っている。ヨウ素を取り込むという原理で切る。
5分で振り返る
①甲状腺はヨウ素を選択的に取り込む。放射性ヨウ素もそこに集まり、放射線で細胞を破壊する。②食事から多量のヨウ素を摂っていると取り込みが減り効果が下がる。海藻類(昆布、わかめ、ひじき、のり)を治療の1〜2週間前から制限する。ヨード造影剤とうがい薬も避ける。③経口で飲む治療であり、体を固定する外照射とは異なる。④主な副作用=甲状腺の腫脹と痛み、唾液腺の炎症と口渇、味覚の変化、悪心、そして治療後の甲状腺機能低下症。脱毛は生じない。⑤妊娠中と授乳中は禁忌。治療後は一定期間妊娠を避ける。⑥周囲への被曝を減らすため、乳幼児と妊婦との密着を避けるなどの注意が要る。⑦抗甲状腺薬の副作用である無顆粒球症は、発熱と咽頭痛が徴候になる。
1分チェック
- 放射性ヨウ素内用療法の前は。→ 海藻類(ヨウ素)を制限する(取り込みを高めるため)。
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