急性大動脈解離〈acute aortic dissection〉 において緊急手術を行うかどうかの観点で用いる分類はどれか。
公式正答:2
解説
急性大動脈解離において、緊急手術を行うかどうかの観点で用いる分類を問う。スタンフォード分類である。
この問題で問われていること
分類ごとの目的を区別できるか。
しくみから理解する
スタンフォード分類は、解離が上行大動脈に及んでいるかどうかで2つに分ける。A型=上行大動脈に解離が及ぶもの。B型=上行大動脈に及ばないもの。弓部に限局する解離もB型に含まれる。A型では、心タンポナーデ、大動脈弁閉鎖不全、冠動脈の閉塞、そして脳への血流の障害といった、致死的な合併症を起こしやすく、内科的な治療のみでは死亡率が極めて高い。そのため、原則として緊急手術の適応になる。B型では、合併症(破裂、臓器の虚血、持続する疼痛、進行する解離)がなければ、まず降圧と鎮痛による内科的な治療を行う。この「治療方針を決める」という目的が、スタンフォード分類の特徴になる。
選択肢ごとの確認
ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類は、心不全の重症度を、身体活動の制限の程度により4段階に分ける分類になる。Ⅰ度=日常の活動で症状がない、Ⅱ度=日常の活動で症状が出る、Ⅲ度=日常より軽い活動で症状が出る、Ⅳ度=安静時にも症状がある。
キリップ分類は、急性心筋梗塞の重症度を、心不全の徴候により4群に分ける分類になる。Ⅰ群=心不全の徴候なし、Ⅱ群=軽度から中等度の心不全(ラ音が肺野の50%未満)、Ⅲ群=肺水腫(ラ音が50%以上)、Ⅳ群=心原性ショック。
ドベーキー分類も大動脈解離の分類だが、解離の範囲(入口部と、どこまで及ぶか)により、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲa型、Ⅲb型に分ける。解剖学的な広がりを詳しく表すが、治療方針を決める観点では、スタンフォード分類の方が簡潔で実用的になる。
フォレスター分類は、急性心筋梗塞などにおける血行動態を、心係数と肺動脈楔入圧により4群に分ける分類になる。カテーテルによる測定を要する。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、ドベーキー分類は同じ大動脈解離の分類であり、区別が問われている。スタンフォード=上行大動脈に及ぶかどうかの2分類、治療方針を決める。ドベーキー=解離の範囲による4分類、解剖学的な広がりを表す。他の3つは、心不全と心筋梗塞の分類になる。「何の疾患の、何を評価する分類か」を対応づけて覚える。
理解を深める
急性大動脈解離の理解を整理する。病態=大動脈の内膜が裂け、中膜へ血液が入り込んで、壁が2層に解離する。突然の激烈な胸背部痛(引き裂かれるような痛み)が特徴で、痛みが移動することもある。合併症=A型では、心タンポナーデ、大動脈弁閉鎖不全、冠動脈の閉塞(心筋梗塞)、そして頸動脈の閉塞(脳梗塞)。B型では、腹部の分枝の閉塞(腸管、腎、下肢の虚血)、そして破裂。所見=血圧の左右差、脈拍の左右差、そして新たな大動脈弁逆流の雑音。診断=造影CTが第一選択。心エコー(経食道)も用いられる。治療=A型は緊急手術(人工血管置換術)。B型は、合併症がなければ、降圧(収縮期血圧を100〜120mmHg程度、心拍数を60回/分程度に保つ)と鎮痛による内科的な治療。合併症があれば、ステントグラフト内挿術または手術。看護=①絶対安静(体動と怒責が解離の進行と破裂を招く)、②厳格な血圧の管理(両上肢で測定し、指示された範囲に保つ)、③疼痛の管理(痛みが血圧を上げるため、十分に)、④症状の変化の観察(新たな痛み、意識、麻痺、四肢の冷感と脈拍、腹痛、尿量)、⑤怒責を避ける(便通の管理)、⑥不安への対応。急性期は、状態が急変しうるため、継続的な観察が欠かせない。
間違えやすい考え方
分類を問う型で、誤肢が心不全・心筋梗塞の分類と、同じ疾患の別の分類である。何を評価する分類かで切る。
5分で振り返る
①スタンフォード分類=A型(上行大動脈に解離が及ぶ)とB型(及ばない)の2分類。②A型は、心タンポナーデ、大動脈弁閉鎖不全、冠動脈の閉塞、脳への血流障害を起こしやすく、原則として緊急手術の適応。③B型は、合併症がなければ降圧と鎮痛による内科的治療。④ドベーキー分類は解離の範囲による4分類(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲa、Ⅲb)で、解剖学的な広がりを表す。⑤NYHA分類は心不全の重症度(身体活動の制限)。⑥キリップ分類は急性心筋梗塞の重症度(心不全の徴候)。⑦フォレスター分類は血行動態(心係数と肺動脈楔入圧)。看護は、絶対安静、厳格な血圧管理、十分な鎮痛、怒責の回避になる。
1分チェック
- 緊急手術の判断に用いるのは。→ スタンフォード分類(上行大動脈に及ぶかどうか)。
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