安静臥床による廃用症候群〈disuse syndrome〉 で生じるのはどれか。
公式正答:4
解説
安静臥床による廃用症候群で生じるものを問う。骨吸収の亢進である。
この問題で問われていること
重力と筋の刺激が、骨に及ぼす影響を説明できるか。
しくみから理解する
骨は、荷重と筋の収縮による機械的な刺激を受けることで、骨形成が促され、量が保たれる。安静臥床では、この刺激が失われるため、骨形成が減り、逆に骨吸収(破骨細胞による骨の分解)が亢進する。その結果、骨密度が低下する。低下の速さは部位により大きく異なり、荷重のかかる部位でおよそ月1〜2%の水準になる。あわせて血中と尿中のカルシウムが増えて、高カルシウム血症と尿路結石の原因にもなる。宇宙飛行士の無重力環境でも同じ現象が起こり、骨の維持には重力と運動が必要であることが示されている。
選択肢ごとの確認
1回換気量は増加せず、減少する。臥位では横隔膜が挙上し、胸郭の動きも制限されるため、肺活量と1回換気量が減る。加えて、分泌物が貯留しやすく、無気肺と沈下性肺炎を招く。
循環血液量も増加せず、減少する。臥位では、下肢から中心へ体液が移動し、それを過剰と判断した身体が利尿を促すため、循環血液量が減る。その結果、起立時に血圧を保てず、起立性低血圧を生じる。
基礎代謝は上昇せず、低下する。活動の減少と筋肉量の減少により、エネルギーの消費が減る。
食欲は増進せず、低下する。活動の減少、腸蠕動の低下と便秘、そして精神的な要因により、食欲が落ちる。低栄養は、さらに筋肉量の減少と褥瘡を招く。
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混同しやすいポイント
誤肢はすべて、変化の方向が逆になっている。廃用症候群は、「使わないことで機能が落ちる」という一つの方向で統一されている。増えるのは、骨吸収、褥瘡の発生、そして深部静脈血栓症のリスクといった、望ましくないものになる。「機能は落ち、望ましくないものは増える」と整理する。
理解を深める
廃用症候群の予防を整理する。原則=①早期離床、②できることは自分で行ってもらう、③関節可動域の維持、④ポジショニングと体位変換、⑤日中の活動と生活のリズム、⑥栄養、⑦目標の共有。骨への対策=荷重をかけることが最も有効になる。立位、そして歩行が困難でも、端座位、立位保持、そして下肢への荷重(ティルトテーブルなど)が骨吸収を抑える。加えて、カルシウムとビタミンDの摂取、日光への曝露、そして必要に応じた薬物療法。循環への対策=下肢の運動(足関節の底背屈)、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫、早期離床、そして起立時はゆっくり段階的に(臥位→坐位→立位)。呼吸への対策=上体の挙上、体位変換、深呼吸、排痰、そして口腔ケア。筋への対策=等尺性収縮訓練(関節を動かさずに筋に力を入れる。ベッド上でもできる)、そして日常動作の中での運動。皮膚への対策=体圧分散寝具、体位変換、除圧、栄養、そして摩擦とずれの防止。精神への対策=日光、時計とカレンダー、会話、そして活動の機会。とくに高齢者では、入院そのものが機能の低下を招く(入院関連機能障害)ため、入院の初日から予防を始める。「安静の指示」の内容を具体的に確認し、必要以上に動きを止めないことが重要になる。ベッド上でも、上肢の運動、足関節の運動、そして体位の変換はできる。
間違えやすい考え方
変化を問う型で、誤肢がすべて方向の逆である。「使わないことで機能が落ちる」という一つの方向で切る。
5分で振り返る
①骨は荷重と筋の収縮による刺激で形成が促される。安静臥床でこの刺激が失われ、骨吸収が亢進して骨密度が低下する(荷重のかかる部位でおよそ月1〜2%。筋力の低下が1週間で10〜15%であるのと比べて緩やか)。②血中と尿中のカルシウムが増え、高カルシウム血症と尿路結石を招く。③1回換気量は減少する(横隔膜の挙上と胸郭の制限)。④循環血液量も減少する(体液の移動と利尿)。起立性低血圧を生じる。⑤基礎代謝は低下する(活動と筋肉量の減少)。⑥食欲も低下する(活動の減少、便秘、精神的要因)。⑦骨への対策は荷重が最も有効。端座位、立位保持、下肢への荷重に加え、カルシウムとビタミンD、日光。
1分チェック
- 安静臥床で生じるのは。→ 骨吸収の亢進(荷重と筋の刺激が失われる)。
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