A さんは職場の上司に不満をぶつけたいと考えているが、それができないので、 不満をぶつけやすい対象である後輩を叱責している。 A さんの防衛機制で正しいのはどれか。
公式正答:4
解説
上司にぶつけられない不満を、後輩を叱責することで表している状態の防衛機制を問う。置き換えである。
この問題で問われていること
防衛機制を、その働きの型で区別できるか。
しくみから理解する
置き換え(転位)は、ある対象へ向けられた感情を、それを向けにくい相手ではなく、より安全な別の対象へ向け変える働きになる。この事例では、上司への不満を、立場が下で反撃されにくい後輩へ向けている。感情そのものは残ったまま、向かう先だけが変わる点が特徴になる。日常でよくみられるもので、家庭内での八つ当たりもこれにあたる。防衛機制は、不安と葛藤から自我を守る無意識の働きであり、それ自体が病的なものではないが、繰り返し用いられて対人関係と生活に支障が出れば、問題になる。
選択肢ごとの確認
解離は、耐えがたい体験を、意識、記憶、同一性から切り離す働きになる。健忘、遁走、離人感、そして解離性同一性障害がこれにあたる。
昇華は、社会的に受け入れられない衝動を、価値のある活動へ向け変える働きになる。攻撃性をスポーツへ、性的な衝動を芸術へ向けるといった形で、最も適応的な防衛機制とされる。
合理化は、受け入れがたい事実に対して、もっともらしい理由をつけて正当化する働きになる。手に入らなかったものを「あれは価値がなかった」と考えるのが典型になる。
反動形成は、受け入れがたい感情と正反対の態度をとる働きになる。憎んでいる相手に、過度に親切にするといった形で現れる。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも実在する防衛機制であり、働きの型で区別する。置き換え=向かう先を変える。昇華=形を変えて価値ある活動へ。合理化=理由をつける。反動形成=正反対の態度。解離=切り離す。この事例では「上司→後輩」という向かう先の変更が明確であり、置き換えになる。
理解を深める
防衛機制を整理する。主なもの=抑圧(意識から締め出す。最も基本的な防衛機制)、否認(事実そのものを認めない)、退行(より幼い段階へ戻る)、投影(自分の受け入れがたい感情を、相手のものとみなす)、取り入れ(他者の性質を自分に取り込む)、同一化(他者と同じであるかのように振る舞う)、置き換え(向かう先を変える)、反動形成(正反対の態度)、打ち消し(過去の行為を打ち消す行動をとる)、隔離(感情と思考を切り離す)、知性化(感情を扱わず、理屈で処理する)、合理化(理由をつける)、昇華(価値ある活動へ)、そして分裂(対象を全て良いか全て悪いかに分ける)。適応の程度=昇華が最も適応的とされ、次いで抑圧、そして否認と分裂は比較的未熟なものとされる。看護での理解=①防衛機制そのものを否定しない(誰もが用いており、心を守る働きになる)、②その人が何から自分を守ろうとしているのかを考える、③繰り返し用いられて困難が生じている場合に、他の対処の方法を一緒に探す、④医療者自身の防衛機制にも気づく(つらい場面で、知性化して感情を扱わない、患者を否認する、といったことが起こる)。防衛機制を知ることは、患者を分類するためではなく、その人の背景にある不安を理解するためになる。
間違えやすい考え方
防衛機制を問う型で、誤肢がいずれも別の型である。働きの型(向かう先を変える)で切る。
5分で振り返る
①置き換え=ある対象へ向けた感情を、向けにくい相手ではなく、より安全な別の対象へ向け変える。感情は残ったまま向かう先だけが変わる。②解離=耐えがたい体験を意識・記憶・同一性から切り離す。③昇華=受け入れられない衝動を価値のある活動へ向け変える。最も適応的とされる。④合理化=もっともらしい理由をつけて正当化する。⑤反動形成=正反対の態度をとる。⑥その他=抑圧、否認、退行、投影、同一化、打ち消し、隔離、知性化、分裂。⑦防衛機制そのものを否定せず、その人が何から自分を守ろうとしているのかを考える。
1分チェック
- 不満を別の相手へ向けるのは。→ 置き換え。
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