次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌〈rectal cancer〉と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。
A さんの手術は予定通り終了した。 術後1日、会陰部から挿入されたドレーンからは、淡血性の排液が10 mL/時で 流出していた。バイタルサインが安定していることを確認した後、Fowler〈ファウ ラー〉位にして15 分が経過したところで、A さんからナースコールがあった。看 護師が訪室すると「おしりが濡れているような気がする」と言う。確認すると、会陰 部のガーゼに淡血性の浸出液を認めた。 A さんへの対応で最も優先度が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
術後1日、体位を変えた後にガーゼへの浸出液を認めた際の対応で、最も優先度が高いものを問う。ドレーンの屈曲を確認することである。
この問題で問われていること
ガーゼが濡れた原因を、機序から推定できるか。
しくみから理解する
ドレーンは、体腔内に溜まる血液と滲出液を体外へ導き、貯留による感染と圧迫を防ぐために留置される。屈曲、閉塞、あるいは接続の外れが起これば、排液が体外へ出られず、創部から漏れ出る。この事例では、体位を変えた15分後にガーゼが濡れており、体位の変更に伴ってドレーンが屈曲した可能性が高い。したがって、まずドレーンの走行をたどって、屈曲、圧迫(体の下敷き、柵への挟まり)、そして接続を確認する。原因を取り除けば、排液が再び流れ、漏れも止まる。
選択肢ごとの確認
仰臥位にすることは、この場面の対応として最優先ではない。ファウラー位そのものは、術後の呼吸と、排液の重力による誘導という点で妥当な体位になる。まず原因を確認し、必要に応じて体位を調整する。
排液バッグを交換することも、この時点では必要ない。バッグが満杯であれば交換するが、まず排液が流れているかを確認する。
会陰部を消毒することも、優先されない。ガーゼの交換と創部の観察は必要だが、原因を取り除かなければ、繰り返し濡れることになる。加えて、術後の創部への消毒は、施設の方針と医師の指示による。
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混同しやすいポイント
「なぜ漏れたのか」を考えると、ドレーンが機能していない可能性に至る。誤肢は、いずれも結果への対応(体位、バッグ、消毒)であり、原因への対応になっていない。ドレーンが入っている患者で、創部から漏れる、あるいは排液が急に減った場合は、まずドレーンの機能を確認する、という手順を押さえる。
理解を深める
ドレーンの管理を整理する。目的=①治療的(既に貯留しているものを排出する)、②予防的(貯留を防ぐ)、③情報的(出血と縫合不全を早期に捉える)。種類=開放式(ペンローズドレーンなど。逆行性感染のリスクが高い)と閉鎖式(持続吸引式を含む。感染のリスクが低く、排液量を正確に測れる)。観察=①排液の量(急な増加は出血、急な減少は閉塞または改善)、②色と性状(術直後は血性、次第に淡血性、漿液性へ変わる。鮮血性が続く、あるいは急に増えれば出血。混濁と膿性は感染。腸液様、胆汁様、便汁様は縫合不全)、③におい、④ドレーンの走行(屈曲、圧迫、ねじれ、体の下敷き)、⑤接続部の外れ、⑥挿入部の状態(発赤、腫脹、疼痛、漏れ)、⑦固定(マーキングによる位置のずれの確認)、⑧排液バッグの位置(挿入部より低く保つ。逆流を防ぐ)。管理の原則=①閉鎖式は開放しない、②バッグを挿入部より高く上げない、③体位変換と移動の前後で、走行と接続を確認する、④ミルキングは、施設の方針と医師の指示に従う(過度な陰圧は組織を傷つける)、⑤抜去後は、挿入部からの漏れと感染を観察する。看護師は、ドレーンからの情報を、患者の状態と結びつけて解釈する。「排液が減った」だけでは、良くなったのか詰まったのか分からない。バイタルサイン、腹部の所見、疼痛、そして発熱とあわせて判断する。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢がいずれも結果への対応である。なぜ漏れたのかという原因を考えて切る。
5分で振り返る
①ドレーンが屈曲・閉塞・接続の外れを起こすと、排液が体外へ出られず創部から漏れる。②体位を変えた後の漏れは、体位変換に伴う屈曲を疑う。③走行をたどり、屈曲、圧迫(体の下敷き、柵への挟まり)、接続を確認する。④排液の観察=量(急増は出血、急減は閉塞または改善)、色と性状(鮮血性は出血、混濁と膿性は感染、腸液様・胆汁様・便汁様は縫合不全)。⑤バッグは挿入部より低く保ち、逆流を防ぐ。⑥閉鎖式は開放しない。体位変換と移動の前後で走行と接続を確認する。⑦「排液が減った」だけでは良化か閉塞か分からない。全身の所見とあわせて判断する。
1分チェック
- ガーゼが濡れたら。→ まずドレーンの屈曲と閉塞を確認する(排液が出られていない)。
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