次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌〈rectal cancer〉と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。
術後10 日、A さんは退院日が決まり、「落ち着いたら仕事に復帰します。1人 暮らしなので、自分で人工肛門を管理しないといけないですね」と述べた。 A さんの退院に際し、人工肛門の管理に関する看護師の指導で正しいのはどれ か。
公式正答:4
解説
退院を控えた人工肛門の患者への、管理に関する指導で正しいものを問う。「定期的に人工肛門の大きさを確認してください」である。
この問題で問われていること
術後のストーマの変化を踏まえた指導ができるか。
しくみから理解する
ストーマは、術後しばらくの間、浮腫が引くにつれて小さくなる。この変化は、数週間から数か月かけて進む。面板の孔がストーマより大きすぎると、露出した皮膚に排泄物が触れて皮膚障害を起こし、小さすぎるとストーマを圧迫して血流を妨げ、また出血の原因にもなる。したがって、定期的にストーマの大きさを測り(ノギスまたは付属の測定シート)、面板の孔をそれに合わせて調整する必要がある。適切な大きさは、ストーマより2〜3mm程度大きい孔になる。
選択肢ごとの確認
面板を1日2回交換する必要はない。皮膚保護剤の溶解の程度をみて、3〜7日ごとを目安に交換する。頻回の交換は、剝がす際の刺激により皮膚を傷める。逆に、長く貼りすぎると、保護剤が溶けて排泄物が皮膚に触れる。剝がしたときの保護剤の溶け具合を見て、次回の交換の間隔を決める。
装具の交換に滅菌手袋は不要になる。ストーマは消化管の粘膜が体表に出たもので、無菌の部位ではない。自宅では、手を洗ってから素手で行うのが一般的になる。医療者が行う場合も、標準予防策として未滅菌の手袋を用いる。
面板を除去した部の皮膚は、石けんを用いて洗浄するのが一般的な方法になる。石けんを使う場合は、保湿成分や油分を含まないものを選ぶ。なお微温湯のみでも洗浄は成立するため、湯だけでは落ちないというわけではない。よく泡立てた石けんで、こすらずに洗い、湯で十分にすすいで、押さえるように水分を取る。消毒は不要になる。アルコールと消毒薬は、皮膚を傷めるため用いない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、交換の頻度、清潔操作の程度、そして洗浄の方法という3点で誤っている。ストーマの管理は、「無菌ではない」「毎日は交換しない」「石けんで洗う」という3点で、病院の他の処置と異なる。この違いを押さえると、判断できる。加えて、正答は「ストーマの大きさが変わる」という時間的な変化を踏まえた指導になる。
理解を深める
ストーマの自己管理の指導を整理する。手順=①物品を準備する(装具、はさみ、測定シート、石けん、タオル、ビニール袋、鏡)、②古い装具を、皮膚を押さえながらゆっくり剝がす(粘着剝離剤を用いてもよい)、③ストーマと周囲の皮膚を観察する(色、大きさ、形、出血、皮膚の発赤とびらん)、④石けんで洗い、すすぎ、水分を取る、⑤ストーマの大きさを測り、面板の孔を合わせて切る、⑥面板を、しわを伸ばして貼り、手のひらで温めながら密着させる、⑦袋を装着し、排出口を確認する。指導の進め方=①まず見てもらう、②看護師と一緒に行う、③本人が行い、看護師が見守る、④本人が一人で行う、という段階を踏む。鏡を使うと見やすい。一人暮らしの場合も、訪問看護、ストーマ外来、皮膚・排泄ケア認定看護師による継続的な支援を受けられる。すべてを退院までに一人で完結できるようにする必要はなく、本人がどこまでできるかと、退院後に利用できる支援を合わせて退院の計画を立てる。生活の指導=食事(原則として制限なし。ただし、においとガスを生じやすい食品=ねぎ、にんにく、豆類、炭酸飲料。詰まりやすい食品=きのこ、海藻、こんにゃく、繊維の強い野菜は、よく噛む)、入浴(装具を付けたままでも、外してでも可能)、衣服(締めつけない)、運動と就労(制限は少ない)、そして旅行(装具を多めに持参する)。心理=排泄の経路が変わることは、ボディイメージと自尊心に大きく関わる。「人に知られたくない」という気持ちも強い。技術の習得と並行して、気持ちを聞くことが支援になる。相談先(ストーマ外来、皮膚・排泄ケア認定看護師、患者会)を伝えておく。
間違えやすい考え方
指導を問う型で、誤肢が頻度・清潔操作・洗浄の方法で誤っている。無菌ではない・毎日交換しない・石けんで洗うで切る。
5分で振り返る
①ストーマは術後、浮腫が引くにつれて数週間から数か月かけて小さくなる。②面板の孔が大きすぎると皮膚障害、小さすぎると圧迫と出血を招く。定期的に測り、ストーマより2〜3mm程度大きい孔にする。③面板は3〜7日ごとの交換が目安。1日2回は多すぎ、剝がす刺激で皮膚を傷める。④ストーマは無菌の部位ではないため、滅菌手袋は不要。自宅では手を洗って素手で行う。⑤皮膚は石けんをよく泡立てて洗い、すすいで押さえ拭きする。消毒とアルコールは用いない。⑥指導は、見てもらう→一緒に行う→見守る→一人で行う、と段階を踏む。⑦食事の制限は原則としてないが、においとガス、詰まりやすい食品への配慮を伝える。
1分チェック
- ストーマの管理では。→ 定期的に大きさを確認する(術後に小さくなるため面板を合わせる)。
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