次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全〈chronic renal failure〉のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。
A さんに対する説明として正しいのはどれか。
公式正答:1
解説
連続携行式腹膜灌流法を導入する50歳男性への説明として正しいものを問う。「食事療法が必要です」である。
この問題で問われていること
腹膜透析の生活を、血液透析と対比して説明できるか。
しくみから理解する
腹膜透析でも食事療法は必要になる。血液透析に比べれば制限は緩やかだが、①塩分(水分の貯留と高血圧を防ぐ。1日6g程度)、②水分(尿量と除水量に応じて)、③カリウム(血液透析ほど厳しくないことが多いが、値により調整する)、④リン(高リン血症の予防。吸着薬も併用)、⑤蛋白質(慢性透析患者の食事療法基準では、目標は血液透析・腹膜透析ともに0.9〜1.2g/kg標準体重/日で同じ。腹膜透析では透析液へ蛋白質が失われるが、それを理由に目標値が高く設定されているわけではない)、⑥エネルギー(透析液のブドウ糖が吸収されるため、その分を差し引いて計算する。過剰になると肥満と脂質異常症を招く)といった管理が要る。したがって、食事療法が必要になる。
選択肢ごとの確認
通院は週に2、3回ではない。腹膜透析の大きな利点は、通院が月に1〜2回程度で済むことにある。週3回の通院が必要なのは血液透析になる。この患者が腹膜透析を選んだ理由の一つも、仕事との両立にあると考えられる。
宿泊を伴う旅行はできる。透析液と物品を持参する、または滞在先へ配送してもらうことで、旅行も可能になる。むしろ、時間と場所の自由度が高いことが、腹膜透析の利点になる。事前の計画と、緊急時の連絡先の確認が必要になる。
カテーテル挿入術後の翌日から入浴することはできない。出口部の創が治癒するまで(通常は2週間程度)は、入浴を避け、シャワー浴も出口部を濡らさないようにする。創が治癒した後は、専用のパックで出口部を覆えば入浴も可能になる(施設の方針による)。出口部の感染は、腹膜炎につながるため、清潔の保持が重要になる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、通院の頻度と旅行の可否は、いずれも腹膜透析の利点を否定する方向になっている。血液透析と腹膜透析を対比して押さえる。血液透析=週3回の通院、1回4時間、確実な除去、バスキュラーアクセスが必要。腹膜透析=毎日自宅で行う、通院は月1〜2回、生活の自由度が高い、残存する腎機能が保たれやすい、腹膜炎のリスク、継続できる期間に限りがある。
理解を深める
腹膜透析の管理を整理する。方法=腹腔内へ留置したカテーテルから透析液を注入し、一定時間貯留して、腹膜を介して老廃物と水分を除去し、排液する。連続携行式では、1日4回程度、日中に手動で交換する。自動腹膜透析では、夜間に機械が自動で交換する。両者を組み合わせることもある。交換の場所=清潔で、埃が立たず、風が当たらず、動物がいない場所。個室が望ましい。手洗いとマスクを行い、接続の操作を清潔に行う。合併症=①腹膜炎(最も重要。原因の多くは接続時の細菌の侵入。症状は腹痛、排液の混濁、発熱、悪心。排液の混濁が最も早い徴候になる。直ちに連絡し、排液を検査に出す)、②出口部感染とトンネル感染、③カテーテルの位置異常と閉塞、④被囊性腹膜硬化症(長期の使用により腹膜が肥厚し、腸閉塞を起こす重篤な合併症)、⑤ヘルニアと液漏れ、⑥高血糖と脂質異常症(透析液のブドウ糖による)。継続の期間=腹膜の機能は次第に低下する。移行の時期は、腹膜機能の個別の評価と、被囊性腹膜硬化症の危険に応じて判断するもので、一律の期限が定められているわけではない。長期の使用はその危険因子の一つになる。移行の際は血液透析へ移るか、腎移植を検討する。看護=手技の指導(清潔操作を確実に)、出口部のケア、排液の観察、体重と血圧、水分出納、そして食事。仕事との両立では、交換の場所と時間の確保が課題になるため、職場との調整も支援に含まれる。
間違えやすい考え方
説明を問う型で、誤肢が腹膜透析の利点を否定する方向と、入浴の時期の誤りである。血液透析と対比して切る。
5分で振り返る
①腹膜透析でも食事療法は必要。塩分(1日6g程度)、水分、カリウム、リンを管理する。②蛋白質の目標は、血液透析・腹膜透析ともに0.9〜1.2g/kg標準体重/日で同じ。腹膜透析では透析液へ失われるが、それが目標値を高くする根拠にはなっていない。③エネルギーは、透析液のブドウ糖の吸収分を差し引いて計算する。過剰は肥満と脂質異常症を招く。④通院は月1〜2回程度(血液透析は週3回)。⑤宿泊を伴う旅行も、透析液と物品を持参または配送してもらえば可能。⑥カテーテル挿入後、出口部の創が治癒するまで(約2週間)は入浴を避ける。⑦最も重要な合併症は腹膜炎。排液の混濁が最も早い徴候になる。
1分チェック
- 腹膜透析でも。→ 食事療法が必要(塩分、水分、リン、そして蛋白質は多めに)。
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