次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全〈chronic renal failure〉のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。
A さんはできるだけ早い職場復帰を望んでおり、入院中はCAPD の操作に熱心 に取り組んでいた。退院後、CAPD を1日4回(0時、6時、12 時、18 時)行うこ とになった。 A さんが会社の昼休みにCAPD を行うために必要な設備はどれか。2つ選べ。
公式正答:3・4
解説
会社の昼休みに腹膜透析を行うために必要な設備を2つ選ぶ。透析液の交換時に使用する個室と、物品を保管する専用棚である。
この問題で問われていること
手技に必要な条件から、設備を導けるか。
しくみから理解する
腹膜透析の交換の操作では、①清潔な環境(埃が立たず、風が当たらず、人の出入りがない場所)で行うこと、②接続の操作を清潔に行うこと、が感染(腹膜炎)の予防に不可欠になる。したがって、他人の出入りがなく、落ち着いて操作できる個室が必要になる。加えて、透析液と接続の器材を、清潔に、そして本人がすぐ使える形で保管する専用の棚も要る。透析液は重く、また量も多いため、毎回持ち運ぶことは現実的でない。この2つが、職場で継続するための最低限の条件になる。
選択肢ごとの確認
透析液を保管する冷蔵庫は不要になる。透析液は常温で保管する。むしろ、冷たいまま注入すると、腹痛と不快感を招くため、使用前に体温程度に温める必要がある。冷蔵は逆になる。
透析液を温める電子レンジも使用しない。電子レンジでは、加熱が不均一になり、また過度に温まった部分ができて、腹膜を傷つける危険がある。透析液はもともと常温で保管するもので、室温に戻すことは体温程度への加温にはならない。専用の加温器を用いて、注入前に体温程度まで温める。
透析液の貯留中に使用するベッドは不要になる。連続携行式腹膜灌流法では、注入した後は、そのまま日常の活動を続けられる(貯留中は腹腔内に液が入っているが、動くことに支障はない)。交換の操作そのものは、坐位で20〜30分程度で終わる。ベッドで横になる必要はない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「透析液の扱い」に関する誤解になっている。冷蔵は不要(常温)、電子レンジは危険(専用の加温器)、貯留中のベッドは不要(活動できる)。手技の実際を知っていれば、すべて判断できる。設問の要点は、「清潔な場所」と「物品の保管」という、環境の条件にある。
理解を深める
透析患者の就労支援を整理する。腹膜透析の利点=①通院が少ない(月1〜2回)、②時間の自由度が高い(自分で時間を決められる)、③残存する腎機能が保たれやすい、④食事の制限が比較的緩やか、⑤循環動態への負担が少ない。就労のための条件=①交換の場所(個室、または人の出入りのない部屋)、②物品の保管場所、③手洗いの設備、④交換の時間の確保(昼休みの活用、または勤務時間の調整)、⑤職場の理解。職場との調整=本人が疾患を開示するかどうかは、本人が決める。開示すれば配慮を得られるが、不利益を心配する人もいる。産業医と産業保健師がいれば、その支援を得られる。障害者手帳(腎臓機能障害)により、障害者雇用の枠での就労も選択肢になる。制度=特定疾病療養受療証(長期にわたる高額な治療を要する疾病として、自己負担が月1万円または2万円に軽減される)、身体障害者手帳、自立支援医療(更生医療)、そして障害年金。血液透析の場合=夜間透析とオーバーナイト透析により、就労と両立している人も多い。いずれの方法でも、「働き続けたい」という希望を実現するために、医療の側が生活に合わせて調整する姿勢が求められる。透析導入は、生活の大きな転機になるが、仕事と社会的な役割を続けることが、その人の生きる意欲を支える。
間違えやすい考え方
設備を2つ選ぶ型で、誤肢が透析液の扱いに関する誤解である。清潔な場所と物品の保管という条件で切る。
5分で振り返る
①腹膜透析の交換は、埃が立たず、風が当たらず、人の出入りのない清潔な環境で行う。個室が必要になる。②透析液と器材は重く量も多いため、職場に専用の保管棚が要る。③透析液は常温で保管する。冷蔵は不要で、冷たいまま注入すると腹痛を招く。④加温には専用の加温器を用いる。電子レンジは加熱が不均一で腹膜を傷つける危険がある。⑤貯留中は日常の活動を続けられ、ベッドは不要。交換の操作は坐位で20〜30分程度。⑥腹膜透析の利点=通院が少ない、時間の自由度が高い、残存腎機能が保たれやすい。⑦制度=特定疾病療養受療証、身体障害者手帳、自立支援医療(更生医療)、障害年金。
1分チェック
- 職場で腹膜透析を行うには。→ 交換用の個室と、物品を保管する専用棚。
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