次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全〈chronic renal failure〉のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。
A さんは「主治医からCAPD の合併症に腹膜炎〈peritonitis〉 があると聞きました。腹膜炎〈peritonitis〉に早く気付くにはどうすればよいですか」と看護師に質問した。 A さんに指導する観察項目はどれか。2つ選べ。
公式正答:1・5
解説
腹膜透析の合併症である腹膜炎に早く気づくために指導する観察項目を2つ選ぶ。腹痛と、透析液の排液のにごりである。
この問題で問われていること
合併症の機序から、現れる所見を導けるか。
しくみから理解する
腹膜炎では、腹腔内で細菌が増殖し、炎症が起こる。その結果、①腹膜の刺激により腹痛が生じ、②炎症により白血球と線維素が増えて、排液が混濁する(にごる)。排液の混濁と腹痛は、いずれも主要な徴候で、どちらが先に現れるかは定まらない。一方だけでも認めたら連絡する。したがって、毎回の排液を、明るい場所で、新聞の文字が透けて読めるかを目安に観察することが、早期発見の方法として指導される。混濁を認めたら、直ちに連絡し、排液を検査に出す(細胞数と培養)。加えて、発熱、悪心・嘔吐、そして排液量の減少も伴うことがある。
選択肢ごとの確認
体重の増加は、除水が不十分なこと、あるいは水分と塩分の摂りすぎを示す所見になる。腹膜炎の徴候ではない。ただし、腹膜炎では、腹膜の透過性が変わって除水が悪くなり、結果として体重が増えることもある。
腹部の張りは、透析液を貯留している状態では常に生じるため、腹膜炎に特有の所見にはならない。加えて、便秘、腸閉塞、そして液の貯留量によっても生じる。
下肢のむくみは、水分の貯留、低アルブミン血症、そして心不全を示す所見になる。腹膜炎の徴候ではない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも透析患者でみられる所見だが、腹膜炎に特有ではない。「腹腔内で炎症が起こる」という機序から、腹痛と排液の混濁が導ける。とくに、排液の混濁は、本人が毎回目にするものであり、日常の中で確認できる点で、指導の対象として最も実用的になる。
理解を深める
腹膜透析関連腹膜炎を整理する。原因=①接続時の細菌の侵入(最も多い。手技の不備、環境)、②出口部感染とトンネル感染からの波及、③腸管からの移行(憩室炎、便秘)、④その他(歯科処置、内視鏡検査の後)。症状=排液の混濁と腹痛が主要な徴候で、どちらが先に現れるかは定まらない。加えて発熱、悪心・嘔吐、排液量の減少。診断=排液の白血球数(100/μL以上で好中球が50%以上)と培養。治療=抗菌薬(腹腔内投与が基本)。改善しない場合、あるいは真菌性の場合は、カテーテルの抜去を要する。繰り返す腹膜炎は、腹膜の機能を損ない、被囊性腹膜硬化症のリスクも高める。予防=①手技の徹底(手洗い、マスク、清潔な環境、接続の操作)、②出口部のケア(毎日の洗浄と観察、固定による牽引の防止)、③便秘の予防、④歯科と内視鏡の処置の前に予防的な抗菌薬を検討する、⑤定期的な手技の確認(自己流になっていないか、看護師が実際に見て確認する)。指導=①毎回、排液を明るい場所で観察する(新聞の文字が読めるか)、②腹痛、発熱、混濁があれば直ちに連絡する、③排液を捨てずに持参する、④自己判断で抗菌薬を使わない。腹膜炎は、腹膜透析を続けられなくなる最大の原因であり、予防と早期の発見が、治療法そのものを守ることにつながる。
間違えやすい考え方
観察項目を2つ選ぶ型で、誤肢が透析患者でみられるが腹膜炎に特有でない所見である。機序から導いて切る。
5分で振り返る
①腹膜炎では、腹膜の刺激で腹痛が生じ、炎症により排液が混濁する。②排液の混濁と腹痛は、いずれも主要な徴候。どちらが先に現れるかは定まらないので、一方だけでも認めたら連絡する。③毎回、明るい場所で、新聞の文字が透けて読めるかを目安に観察する。④混濁を認めたら直ちに連絡し、排液を検査に出す(白血球数100/μL以上で好中球50%以上)。⑤体重の増加は除水不足と水分・塩分の過剰、下肢のむくみは水分貯留と低アルブミン血症を示す。腹膜炎の徴候ではない。⑥原因の多くは接続時の細菌の侵入。出口部感染からの波及と、便秘による腸管からの移行もある。⑦繰り返す腹膜炎は腹膜の機能を損ない、腹膜透析を続けられなくなる最大の原因になる。
1分チェック
- 腹膜炎の早期の徴候は。→ 腹痛と、排液のにごり(どちらが先に現れるかは定まらない)。
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