次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(生後24日、女児)は両親と3人暮らし。母親が母子健康手帳の便色カードを見て、Aちゃんの便色が気になったため、Aちゃんを連れて近所の小児科医院を受診した。Aちゃんは在胎39週、出生体重3,100g、出生時に異常はない。現在、混合栄養で体重は3,700gである。体温37.2℃、呼吸数36/分、心拍数108/分、整、血圧78/44mmHg。眼球結膜に黄染を認める。血液検査結果:Hb12.6g/dL、白血球7,800/μL、血小板21万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉88%、総ビリルビン11.3mg/dL、直接ビリルビン9.5mg/dL、AST96U/L、ALT126U/L。紹介先の病院で腹部超音波検査を実施した結果、Aちゃんは胆道閉鎖症biliaryatresiaの疑いがあり入院した。
A ちゃんは入院7日に術中胆道造影検査で胆道閉鎖症 biliary atresia と確定診断された。手術 は無事に終了した。術後は絶食となり、腹腔ドレーンが挿入され、持続的点滴静脈 内注射が行われている。母親は疾患や治療について理解している。術後3日、付き 添っていた母親は看護師に「A はおなかが空いて泣き止まないし、私はA を抱っこ もできず、何もしてあげられません。つらいです」と涙を浮かべて話した。 看護師の母親への対応で、最も適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
術後3日、絶食で抱っこもできず「何もしてあげられません」と涙を浮かべる母親への対応を問う。話しかけやおしゃぶりの活用など、母親ができることを伝えることである。
この問題で問われていること
無力感を訴える家族に、何を提供するかを判断できるか。
しくみから理解する
この母親の訴えの中心は、「何もしてあげられない」という無力感になる。したがって、実際にできることを具体的に示すことが、直接の応えになる。話しかけること、手や足に触れること、名前を呼ぶこと、おしゃぶりを使うこと(絶食中の吸啜の欲求を満たし、児を落ち着かせる。非栄養的吸啜という)、身体をさすること、そして母乳を搾って保存することなど、この状況でもできることは複数ある。これらは、児にとって意味があるだけでなく、母親が「役に立っている」と感じられることで、無力感を和らげる。
選択肢ごとの確認
「早期発見だったので早く退院できる」と説明することは、根拠のない保証になる。胆道閉鎖症では、手術が成功しても、胆汁の排出が十分に得られないこと、胆管炎を繰り返すこと、そして肝硬変へ進んで肝移植を要することがある。見通しを楽観的に伝えれば、後に事実が異なったときの落胆と不信を招く。
心療内科の受診を勧めることは、この段階では早い。この母親の反応は、子どもの手術という危機的な状況に対する、正常な反応の範囲になる。涙を浮かべて気持ちを話せていること自体が、健康な対処の表れでもある。まず話を聴き、できることを示す。それでも抑うつが続き、生活が営めなくなるようなら、専門的な支援を検討する。
患者家族会の紹介は、有用な資源だが、いま最も必要なものではない。同じ疾患の家族とのつながりは、長期の療養を支えるうえで大きな意味を持つため、時期をみて紹介する。ただし、術後3日で、目の前の子どもに何もできないと感じている段階では、まず「今日、ここでできること」を示すことが先になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、根拠のない保証、時期の早い専門機関への紹介、そして時期の合わない資源の紹介になる。いずれも、「いま、この場で、この人が必要としているもの」からずれている。家族の訴えに応えるときは、訴えの言葉そのものに立ち返る。「何もしてあげられない」に対する応えは、「できることがあります」になる。
理解を深める
入院中の子どもの家族への支援を整理する。親の心理=①子どもの苦痛を代われないことへの無力感、②病気の原因を自分に求める罪責感、③予後への不安、④医療者への遠慮と依存、⑤きょうだいと仕事、家事との両立、⑥経済的な不安、⑦付き添いによる疲労(睡眠、食事、休息の不足)。支援=①話を聴く、②できることを具体的に示す(ケアへの参加=清拭、更衣、体位の調整、口腔ケア、話しかけ、抱っこ、授乳)、③状態と見通しを、分かる形で、繰り返し説明する、④「あなたのせいではない」と伝える、⑤休息を促す(交代、仮眠の場所、食事)、⑥きょうだいへの配慮を伝える、⑦経済と制度の相談につなぐ、⑧同じ経験を持つ家族とのつながり(時期をみて)。ケアへの参加の意義=親が子どもの世話に関わることは、①親としての実感を保つ、②無力感を減らす、③子どもの安心につながる、④退院後の育児への準備になる、⑤親子の関係を守る、という点で重要になる。「危ないから」「時間がかかるから」と、医療者がすべてを引き受けてしまうと、親は傍観者になり、無力感を深める。安全を確保しながら、できることを一緒に見つける姿勢が求められる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が根拠のない保証・時期の早い紹介・時期の合わない資源である。訴えの言葉に立ち返って切る。
5分で振り返る
①訴えの中心は無力感。実際にできることを具体的に示すことが直接の応えになる。②できること=話しかける、手足に触れる、名前を呼ぶ、おしゃぶり(非栄養的吸啜で児を落ち着かせる)、身体をさする、母乳を搾って保存する。③これらは児にとって意味があるだけでなく、母親が「役に立っている」と感じられる。④胆道閉鎖症では、手術が成功しても肝硬変へ進み肝移植を要することがある。楽観的な見通しを伝えない。⑤涙を浮かべて気持ちを話せていることは健康な対処の表れ。心療内科の紹介は早い。⑥家族会は有用だが、いまは「今日ここでできること」が先。⑦ケアへの参加は、親としての実感を保ち、無力感を減らし、退院後の育児への準備にもなる。
1分チェック
- 「何もしてあげられない」には。→ できることを具体的に伝える。
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