次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(34歳、初産婦)は順調な妊娠経過であった。妊娠40週5日の午前8時、10分毎の規則的な子宮収縮を主訴に来院し、医師の診察の結果、入院となった。入院時の胎児心拍数基線は130bpm、胎児の推定体重は3,300gであった。
A さんの分娩は順調に進行した。午後5時に破水し、午後6時には子宮口開大 8cm となった。「便が出そうです。もう、これ以上頑張れない」と陣痛発作時には 全身に力が入っている。 このときの看護師の声かけで正しいのはどれか。
公式正答:4
解説
破水後、子宮口開大8cmで「便が出そう」「これ以上頑張れない」と訴え、陣痛発作時に全身に力が入っている産婦への声かけを問う。「息を吐いて力を抜きましょう」である。
この問題で問われていること
子宮口全開大前の努責を、どう扱うかを判断できるか。
しくみから理解する
子宮口開大8cmは、分娩第1期の終わり(移行期)にあたる。児頭の下降により直腸が圧迫され、便意に似た感覚と、いきみたい感じが生じるが、子宮口がまだ全開大していない段階でいきむと、子宮頸管の浮腫と裂傷を招き、分娩の進行をかえって妨げる。したがって、この時期は努責を逃がすことが必要になる。息を吐く呼吸(短く吐く、あるいはゆっくり長く吐く)は、腹圧がかかるのを防ぎ、全身の力を抜くことにつながる。加えて、この時期は産婦が最もつらく、自制を失いやすい時期でもあるため、そばに付き添い、短い言葉で具体的に導くことが有効になる。
選択肢ごとの確認
「リラックスするためにお風呂に入りましょう」は誤りになる。既に破水しており、破水後の入浴は、上行性の感染(絨毛膜羊膜炎、新生児の感染)の危険があるため禁忌になる。加えて、子宮口8cmの移行期に浴室へ移動すること自体が現実的でない。
「赤ちゃんのために我慢しましょう」も適切でない。「これ以上頑張れない」という訴えを受け止めておらず、我慢を求めるだけで、どうすればよいかを示していない。産婦の努力を認め、いま何をすればよいかを具体的に伝える。
「トイレに行って排便しましょう」も誤りになる。この便意は、児頭の下降による直腸の圧迫によるもので、実際の便意ではない。破水後で子宮口8cmの状態でトイレへ移動すれば、臍帯の脱出、急速な分娩の進行、そして転倒の危険がある。破水後の移動を一律に避けるという規則があるわけではなく、臥床を要するのは児頭が未固定、骨盤位、多胎、羊水過多、早産といった条件がある場合になる。この場面で移動が危険なのは、子宮口8cmで分娩が切迫していることによる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、入浴とトイレへの移動は、いずれも破水後の禁忌または危険に触れる。「我慢しましょう」は、訴えを受け止めず、対処も示していない。移行期の産婦への声かけは、①訴えを受け止める(「つらいですね」「よく頑張っています」)、②いま何が起きているかを短く伝える(「赤ちゃんが下りてきています」「もうすぐです」)、③具体的な行動を示す(「息を吐いて」「肩の力を抜いて」)、の3つを組み合わせる。長い説明は、この時期には届かない。
理解を深める
分娩の移行期と第2期を整理する。移行期(子宮口8〜10cm)=①最も陣痛が強く、間隔も短い(2〜3分ごと、持続60〜90秒)、②便意といきみたい感じ、③悪心と嘔吐、④震え、⑤発汗、⑥自制が困難になり、「もうだめ」「帰りたい」と訴えることがある。看護=①そばを離れない、②短い言葉で導く、③呼吸を一緒に行う、④努責を逃がす(息を吐く、肛門を圧迫する、体位を変える=側臥位、胸膝位)、⑤汗を拭き、口を潤す、⑥励ましと承認、⑦経過を伝える。全開大の確認=内診による。全開大の後は、陣痛発作に合わせて努責を促す。努責の方法=基本は産婦自身のいきみたい感覚に沿った自発的な努責を支える。息を吸って止め下腹部に力を入れる指示的な方法(1回の陣痛で2〜3回)は、いきみたい感覚が乏しい場合や第2期が遷延する場合など、適応を限って用いる。発作の間は力を抜く。児頭が娩出される直前は、会陰の裂傷を防ぐため、努責をやめて短く息を吐く(この切り替えを事前に伝えておく)。破水後の管理=①臍帯脱出の有無を確認する(破水直後に胎児心拍数を確認する。児頭が固定していない場合、また骨盤位、多胎、羊水過多ではとくに注意する)、②羊水の性状(混濁の有無)、③感染の予防(体温の測定、内診の回数を減らす、清潔を保つ、入浴は避ける)。歩行や床上排泄の可否は産科的な評価による。臍帯脱出の危険が高い児頭未固定、骨盤位、多胎、羊水過多では臥床とするが、児頭が固定している正期産例で一律に歩行を止める根拠はない。本症例で移動が危険なのは子宮口8cmで分娩が切迫していることによる、④破水からの時間の記録(24時間を超えると感染の危険が高まる)。
間違えやすい考え方
声かけを問う型で、誤肢に破水後の禁忌(入浴・移動)が含まれる。全開大前の努責を逃がす方向で切る。
5分で振り返る
①子宮口8cmは移行期。全開大前にいきむと子宮頸管の浮腫と裂傷を招き、分娩の進行を妨げる。②便意は児頭の下降による直腸の圧迫で、実際の便意ではない。③努責を逃がす方法=息を吐く、肛門を圧迫する、体位を変える(側臥位、胸膝位)。④破水後の入浴は上行性感染の危険があり禁忌。⑤破水後に移動を一律に避けるわけではなく、臥床を要するのは児頭が未固定、骨盤位、多胎、羊水過多、早産といった条件がある場合。この場面で移動が危険なのは、子宮口8cmで分娩が切迫していることによる。⑥移行期は最もつらい時期。そばを離れず、短い言葉で具体的に導く。⑦破水後は、臍帯脱出の確認、羊水の性状、感染の予防、破水からの時間の記録。24時間を超えると感染の危険が高まる。
1分チェック
- 子宮口8cmで便意といきみたい訴えには。→ 息を吐いて力を抜く。
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