次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy〈レビー〉小体型認知症dementiawithLewybodiesと診断された。
A さんに出現している睡眠障害はどれか。
公式正答:2
解説
入眠後90分以上経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回して暴れる行動が繰り返しみられる68歳男性の睡眠障害を問う。レム睡眠行動障害である。
この問題で問われていること
睡眠中の異常行動を、睡眠段階と結びつけて分類できるか。
しくみから理解する
レム睡眠行動障害は、レム睡眠中に本来生じるはずの骨格筋の緊張の低下が起こらず、夢の内容がそのまま行動として現れるものになる。大声で叫ぶ、腕や足を振り回す、隣で寝ている人を叩く、ベッドから転落する、といった行動がみられる。レム睡眠は入眠後およそ90分で最初に出現し、明け方に向けて時間が長くなるため、症状は睡眠の後半に多い。事例の「入眠後90分以上が経過した睡眠中」という記述は、この特徴を示している。加えて、昼寝では起こらない点も、レム睡眠が夜間の睡眠の後半に集中することと合う。レビー小体型認知症では、この障害が認知機能の低下より何年も前から現れることがあり、早期の手がかりになる。
選択肢ごとの確認
ナルコレプシーは、日中に突然の強い眠気に襲われる疾患になる。情動脱力発作(笑いや驚きで突然力が抜ける)、入眠時幻覚、睡眠麻痺を伴う。10代から20代に発症することが多く、この事例の年齢と症状に合わない。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まるものになる。いびき、無呼吸、日中の強い眠気、朝の頭痛が特徴で、暴れる行動は主症状ではない。
睡眠・覚醒スケジュール障害は、体内の時計と、社会生活で求められる時間帯とがずれるものになる。眠る時刻が大きく後ろへずれる型、逆に早くなる型などがある。この事例では、就寝時刻は21時で規則的であり、該当しない。
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混同しやすいポイント
区別する鍵は、①いつ起こるか(睡眠のどの段階か、日中か夜間か)、②何が起こるか(行動か、呼吸か、眠気か)、の2つになる。レム睡眠行動障害と混同しやすいものに、睡眠時遊行症(夢遊病)がある。こちらはノンレム睡眠の深い段階で起こり、小児に多く、起きているように歩き回るが、目覚めた後に本人は覚えていない。レム睡眠行動障害では、起こすと比較的すぐ目覚め、夢の内容を語れる点が異なる。
理解を深める
レビー小体型認知症を整理する。病態=レビー小体(異常なタンパク質の凝集体)が大脳皮質と脳幹に広く出現する。認知症の原因としては、アルツハイマー病、血管性認知症に次いで多い。中核となる特徴=①認知機能の変動(日により、時間により、はっきりしているときとぼんやりしているときの差が大きい)、②具体的で繰り返される幻視(人、子ども、動物、虫などが、はっきりと見える)、③パーキンソン症状(筋強剛、動作の緩慢、小刻み歩行、姿勢の不安定。振戦は目立たないこともある)、④レム睡眠行動障害。この4つのうち2つ以上があれば、可能性が高いとされる。その他=自律神経症状(起立性低血圧、便秘、失神、尿失禁)、抑うつ、繰り返す転倒、嗅覚の低下。治療と注意=①コリンエステラーゼ阻害薬が幻視と認知機能に有効なことがある、②抗精神病薬に対する過敏性があり、少量でも強いパーキンソン症状と意識障害を起こしうるため、原則として避ける(とくに定型抗精神病薬)、③レム睡眠行動障害にはクロナゼパムなどが用いられる。看護=①転倒の予防(パーキンソン症状、起立性低血圧、幻視をよけようとする動作)、②幻視への対応(否定も肯定もせず、不安を受け止める。照明を調整し、見間違いのもとになる物を片づける)、③変動を前提にした関わり(できるときとできないときの差を、怠けと受け取らない)、④睡眠中の安全(ベッドの高さ、周囲の物、転落の防止)、⑤家族への説明と支援。
間違えやすい考え方
睡眠障害の分類を問う型で、誤肢が他の睡眠障害である。いつ起こるか・何が起こるかの2軸で切る。
5分で振り返る
①レム睡眠行動障害=レム睡眠中の筋の緊張の低下が起こらず、夢の内容が行動として現れる。②レム睡眠は入眠後約90分で最初に出現し、睡眠の後半に多い。昼寝では起こりにくい。③レビー小体型認知症では、認知機能の低下より何年も前から現れることがある。④ナルコレプシー=日中の強い眠気、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺。10〜20代に発症。⑤睡眠時無呼吸症候群=いびき、無呼吸、日中の眠気、朝の頭痛。⑥睡眠・覚醒スケジュール障害=体内時計と社会生活の時間のずれ。⑦レビー小体型認知症の中核=認知機能の変動、具体的な幻視、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害。⑧抗精神病薬への過敏性があり、原則として避ける。
1分チェック
- 入眠後90分以降に暴れる行動は。→ レム睡眠行動障害(レビー小体型認知症の早期の手がかり)。
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