次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症anorexianervosaと診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。
治療開始早期に看護師が最も注意すべき観察項目はどれか。
公式正答:2
解説
身長166cm、体重36kgで入院し、食事に加えて点滴による栄養補給が始まった神経性無食欲症の患者について、治療開始早期に最も注意すべき観察項目を問う。浮腫である。
この問題で問われていること
低栄養の状態から栄養を再開したときに起こる危険を知っているか。
しくみから理解する
長期の低栄養の後に急速に栄養を与えると、再栄養症候群が起こりうる。飢餓の状態では、体はエネルギー源を脂肪とタンパク質に切り替え、細胞内のリン、カリウム、マグネシウムが枯渇している。ここに糖質が入ると、インスリンが分泌され、糖とともにこれらの電解質が細胞内へ一気に取り込まれ、血中の濃度が急落する。低リン血症が中心で、心不全、不整脈、呼吸不全、けいれん、意識障害、そして死に至ることがある。同時に、インスリンによるナトリウムと水の貯留が起こり、浮腫として現れる。浮腫は、外から見て分かる早期の徴候であり、看護師が最も注意して観察すべきものになる。
選択肢ごとの確認
脱毛は、低栄養に伴って生じるが、進行が緩やかで、治療開始早期に急いで観察すべきものではない。栄養状態が改善すれば回復する。
抑うつも、神経性無食欲症にしばしば併存するが、治療開始早期の生命に関わる危険を示すものではない。低栄養そのものが抑うつと認知の障害を招くため、栄養が改善すると和らぐこともある。
嚥下障害は、この疾患の主な症状ではない。極度のるいそうによる筋力の低下があれば生じうるが、治療開始早期の観察の中心にはならない。
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混同しやすいポイント
「治療開始早期」という条件が鍵になる。栄養を再開した直後に、命に関わる変化が起こりうるという点を押さえる。誤肢は、いずれも低栄養に関連するが、緩やかに進むもの、または併存する症状であり、緊急性が異なる。浮腫を見たときは、体重の増加が脂肪や筋肉の回復ではなく水分によることも意味するため、体重だけで栄養状態を判断しないことにもつながる。
理解を深める
神経性無食欲症を整理する。診断=①有意に低い体重(この事例では体格指数が約13.1で、極めて重度になる)、②体重の増加または肥満になることへの強い恐怖、③自分の体重と体型の感じ方の障害(痩せているのに太っていると感じる)。摂食制限型と、過食・排出型がある。身体の合併症=①循環(徐脈、低血圧、不整脈、心筋の萎縮、突然死)、②電解質(低カリウム血症、低リン血症、低マグネシウム血症。嘔吐や下剤の乱用があるとさらに顕著)、③内分泌(無月経、成長ホルモンの上昇、甲状腺ホルモンの低下、低血糖)、④骨(骨密度の低下、骨折)、⑤消化管(胃排出の遅延、便秘、上腸間膜動脈症候群)、⑥血液(貧血、白血球減少)、⑦皮膚と毛髪(乾燥、産毛の増加、脱毛)、⑧腎(脱水、腎機能の低下)、⑨低体温。再栄養症候群=①危険因子は、極度の低体重、長期の絶食、嘔吐と下剤の乱用、電解質の異常、②予防は、少量から始めて段階的に増やす、③投与前と投与中の電解質(リン、カリウム、マグネシウム)の測定と補充、④ビタミンの補充、⑤体重、水分出納、浮腫、心電図、呼吸状態の観察。看護=①身体の管理を最優先にする(生命の危険がある段階では、心理的な介入より身体が先)、②体重測定の方法を定める(同じ時刻、同じ条件。水を飲んで重くする、物を隠すといった行動があるため、方法を取り決める)、③食事の時間と量を、治療の枠組みとして定める、④食後の嘔吐と過活動の観察、⑤本人を責めず、疾患として扱う、⑥回復の過程で、体重が増えることへの恐怖が強まることを理解する、⑦家族への支援。
間違えやすい考え方
早期の観察を問う型で、誤肢が緩やかに進むものと併存症状である。栄養再開直後の危険で切る。
5分で振り返る
①長期の低栄養の後に急速に栄養を与えると再栄養症候群が起こる。②飢餓ではリン、カリウム、マグネシウムが枯渇している。糖質が入るとインスリンが出て、これらが細胞内へ一気に移り、血中濃度が急落する。③低リン血症が中心で、心不全、不整脈、呼吸不全、けいれん、意識障害、死に至る。④同時にナトリウムと水が貯留し、浮腫として現れる。外から分かる早期の徴候になる。⑤予防=少量から段階的に増やす、電解質を測って補充する、ビタミンを補う。⑥観察=体重、水分出納、浮腫、心電図、呼吸状態。⑦浮腫があれば、体重増加が水分によることも意味する。体重だけで栄養状態を判断しない。
1分チェック
- 低栄養の患者に栄養を再開したとき最も注意するのは。→ 浮腫(再栄養症候群の早期徴候)。
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