上位運動ニューロン徴候および下位運動ニューロン徴候の有無について表に示 す。 下位運動ニューロン徴候 あり なし 上 位 運 動 ニ ュ ー ロ ン 徴 候 あ り a b な し c d 筋萎縮性側索硬化症〈amyotrophic lateral sclerosis〉 〈ALS〉において正しいのはどれか。
公式正答:1
解説
上位運動ニューロン徴候と下位運動ニューロン徴候の有無を組み合わせた表で、筋萎縮性側索硬化症に当てはまる区分を問う。両方が「あり」のaである。
この問題で問われていること
この疾患が、どの運動ニューロンを侵すかを知っているか。
しくみから理解する
筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロン(大脳皮質から脊髄前角へ至る経路)と、下位運動ニューロン(脊髄前角細胞から筋へ至る経路)の両方が変性する疾患になる。したがって、両方の徴候が同時に現れる点が最大の特徴になる。上位運動ニューロン徴候=腱反射の亢進、病的反射(バビンスキー徴候)の出現、痙縮。下位運動ニューロン徴候=筋萎縮、線維束性収縮、筋力の低下、腱反射の低下。通常は反射が低下するはずの筋萎縮した部位で、かえって腱反射が亢進しているという所見が、この疾患を強く示唆する。
選択肢ごとの確認
bは、上位運動ニューロン徴候のみになる。脳血管疾患、脊髄の圧迫(頸椎症性脊髄症の一部)、多発性硬化症などでみられる。
cは、下位運動ニューロン徴候のみになる。脊髄性筋萎縮症、末梢神経障害、ギラン・バレー症候群、そして脊髄前角の障害でみられる。
dは、どちらの徴候もない状態になる。運動ニューロンの障害を示さない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
表を用いた設問では、まず行と列が何を表すかを確認し、そのうえで疾患の特徴を当てはめる。この疾患では「上位も下位も」という点が鍵になる。加えて、この疾患で保たれるもの(陰性徴候)も覚えておく。①眼球運動、②膀胱直腸機能、③感覚、④褥瘡ができにくいこと、の4つが、古典的に保たれるとされる。ただし、人工呼吸器による長期の生存では、これらも障害されうる。
理解を深める
筋萎縮性側索硬化症を整理する。病態=運動ニューロンが選択的に変性し、進行性に筋力が低下する。原因は多くが不明で、一部に遺伝性がある。指定難病。発症は50〜70歳代に多い。症状=①上肢の遠位から始まる筋力低下と筋萎縮(箸が使いにくい、字が書きにくい、物を落とす)、②線維束性収縮、③下肢型(歩きにくい、つまずく)、④球麻痺型(構音障害、嚥下障害から始まる)、⑤進行すると呼吸筋が侵され、呼吸不全に至る。診断=臨床所見、筋電図、画像検査による除外。治療=根治療法はない。リルゾール、エダラボンが進行を遅らせる可能性がある。療養=①呼吸(非侵襲的陽圧換気、そして気管切開下の人工呼吸療法。導入するかどうかは、本人の意思決定が要となる重い選択になる)、②栄養(嚥下障害が進めば胃瘻)、③コミュニケーション(文字盤、視線入力の装置、意思伝達装置。眼球運動が保たれることを活かす)、④関節の拘縮と褥瘡の予防、⑤唾液と痰の管理(吸引、薬剤)、⑥痛みと不安への対応、⑦介護者の負担の軽減(訪問看護、訪問介護、短期入所、レスパイト入院)、⑧制度(指定難病の医療費助成、身体障害者手帳、障害福祉サービス、介護保険)。意思決定の支援=進行が速く、また意思を伝える手段が失われていくため、早い段階から、本人の価値観と希望を繰り返し確認し、記録しておくことが重要になる。一度決めたことも変えてよいと伝える。看護師は、選択を迫るのではなく、選べる状態を保ち続ける役割を担う。
間違えやすい考え方
表の区分を問う型で、誤肢が片方のみと両方なしである。両方の徴候が同時に現れる特徴で切る。
5分で振り返る
①筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が変性する。②上位の徴候=腱反射の亢進、病的反射、痙縮。③下位の徴候=筋萎縮、線維束性収縮、筋力低下、腱反射の低下。④筋萎縮した部位で腱反射が亢進しているという所見が、この疾患を強く示唆する。⑤保たれるもの(陰性徴候)=眼球運動、膀胱直腸機能、感覚、褥瘡ができにくいこと。⑥上位のみは脳血管疾患と脊髄の圧迫、下位のみは脊髄性筋萎縮症と末梢神経障害でみられる。⑦進行すると呼吸筋が侵され呼吸不全に至る。人工呼吸療法の導入は重い意思決定になる。⑧眼球運動が保たれることを活かし、文字盤と視線入力の装置を用いる。
1分チェック
- 筋萎縮性側索硬化症の徴候は。→ 上位も下位も「あり」。
この問題に対応する教材の確認中です。