A さん(55 歳、男性、会社員)は胃癌〈gastric cancer〉の終末期である。 A さんの訴えのうちスピリチュアルペインの表出はどれか。
公式正答:4
解説
胃がんの終末期にある55歳男性の訴えのうち、スピリチュアルペインの表出を問う。「これまでの自分の人生が意味のないものに思えます」である。
この問題で問われていること
全人的苦痛の4つの側面を、訴えの言葉から見分けられるか。
しくみから理解する
全人的苦痛は、①身体的苦痛(痛み、呼吸困難、悪心、倦怠感などの症状)、②精神的苦痛(不安、抑うつ、恐れ、いらだち、孤独)、③社会的苦痛(経済、仕事、家族の役割、人間関係、相続)、④スピリチュアルペイン(生きる意味の喪失、存在の無価値感、死への問い、罪責感、なぜ自分がという問い)の4つからなる。「人生が意味のないものに思える」という訴えは、自分の存在と、生きてきたことの意味そのものが揺らいでいる表現であり、スピリチュアルペインに当たる。
選択肢ごとの確認
「腹痛がずっと続いています」は身体的苦痛になる。症状の緩和により対応する。
「吐き気が続くと思うと不安です」は精神的苦痛になる。ただし、悪心そのものは身体的苦痛であり、それが続くことへの不安が精神的苦痛になる。両者は絡み合っており、身体症状の緩和が精神的苦痛の軽減にも直結する。
「今後の生活にかかるお金が心配です」は社会的苦痛になる。医療費、生活費、そして家族の生活に関わるもので、医療ソーシャルワーカーとの連携、高額療養費と傷病手当金などの制度の紹介により対応する。
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混同しやすいポイント
4つの側面を、訴えの言葉から判断する。①身体=症状そのもの、②精神=感情(不安、恐れ、抑うつ)、③社会=お金、仕事、家族、役割、④スピリチュアル=意味、価値、存在、なぜ、になる。混同しやすいのは②と④で、「不安」という言葉が入れば精神的苦痛、「意味がない」「生きている価値がない」「なぜ自分が」といった存在に関わる言葉であればスピリチュアルペインになる。
理解を深める
終末期の看護を整理する。全人的苦痛への対応=①身体=症状の緩和(痛み、呼吸困難、悪心、便秘、倦怠感、浮腫、せん妄)。世界保健機関の3段階除痛ラダーと、オピオイドの適切な使用。②精神=不安と抑うつへの対応、傾聴、そばにいること、必要に応じて薬物療法と専門家との連携。③社会=経済的な支援の制度、仕事と家族の調整、医療ソーシャルワーカーとの連携。④スピリチュアル=答えを与えるのではなく、問いを共に抱える。傾聴、沈黙を共にする、その人の歩んできた道を聴く(人生を振り返る対話)、大切にしてきた価値を確かめる、宗教的な支援を望む場合はつなぐ。スピリチュアルペインへの関わりの要点=①「そんなことないですよ」と否定しない。否定は、その人の苦しみを閉ざす。②解決しようとしない。多くは解決できない問いであり、共にいることが支えになる。③その人の言葉を、そのまま受け止めて返す。④これまでの人生の中に、その人が大切にしてきたもの、成し遂げたこと、人とのつながりを見出し、共に確かめる。⑤沈黙を恐れない。⑥自分の限界を知り、一人で抱えず、チームで支える。⑦看護師自身も苦しくなることを自覚し、支え合う仕組みを持つ。緩和ケアの考え方=生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族に対し、痛みその他の身体的、心理社会的、そしてスピリチュアルな問題を早期に見出し、適切に評価して対応することにより、苦痛を予防し和らげ、生活の質を改善する。終末期に限らず、診断の時点から、治療と並行して行われる。家族へのケアも含まれ、死別後の悲嘆への支援も対象になる。
間違えやすい考え方
苦痛の分類を問う型で、誤肢が身体・精神・社会の各苦痛である。意味と存在に関わる言葉で切る。
5分で振り返る
①全人的苦痛=身体的、精神的、社会的、スピリチュアルの4つ。②身体=症状そのもの(痛み、悪心、呼吸困難)。③精神=不安、抑うつ、恐れ、孤独。④社会=お金、仕事、家族の役割、人間関係。⑤スピリチュアル=生きる意味の喪失、存在の無価値感、死への問い、罪責感、「なぜ自分が」。⑥「意味がない」「生きている価値がない」という存在に関わる言葉で見分ける。⑦関わりの要点=否定しない、解決しようとしない、そのまま受け止める、その人が大切にしてきたものを共に確かめる、沈黙を恐れない、チームで支える。⑧緩和ケアは終末期に限らず、診断の時点から治療と並行して行う。家族と死別後の悲嘆も対象になる。
1分チェック
- スピリチュアルペインとは。→ 生きる意味と存在の価値が揺らぐ苦痛。
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