A さん(63 歳、男性)は3年前から肺気腫〈pulmonary emphysema〉で定期受診を続けていた。最近、歩行 時の息切れが強くなってきたことを自覚し、心配になったため受診した。受診時、 呼吸数は34/分で、口唇のチアノーゼがみられた。 A さんについて正しいのはどれか。
公式正答:4
解説
3年前から肺気腫で受診を続け、歩行時の息切れが強くなり、呼吸数34/分、口唇のチアノーゼがみられる63歳男性について正しいものを問う。病状が進行すると動脈血二酸化炭素分圧が上昇する、である。
この問題で問われていること
閉塞性換気障害で、血液ガスがどう変化するかを説明できるか。
しくみから理解する
肺気腫では、肺胞の壁が破壊されて肺胞が融合し、ガス交換に使える面積が減る。加えて、気道を外から支える力が失われるため、呼気時に気道が虚脱し、息を吐き出しにくくなる。その結果、肺に空気が残り(残気量の増加)、換気が不十分になる。初期は、二酸化炭素は拡散しやすいため、呼吸数を増やすことで排出が保たれ、動脈血二酸化炭素分圧は正常か、むしろ低下する。しかし進行すると、換気そのものが追いつかなくなり、二酸化炭素が体内に貯留して動脈血二酸化炭素分圧が上昇する。これを高炭酸ガス血症といい、二酸化炭素ナルコーシスの原因になる。
選択肢ごとの確認
1回換気量は増加していない。肺気腫では、肺の弾性収縮力が低下し、肺は過膨張の状態にある。息を吐き切れず、1回に入れ替えられる空気の量は減る。換気を保つために、浅くて速い呼吸になる(この事例では呼吸数34/分)。
呼気よりも吸気を促すことは効果的ではない。この疾患では、息を吐き出せないことが問題の中心になる。したがって、口すぼめ呼吸により、呼気の時間を長くとり、気道の内圧を高めて虚脱を防ぐことが有効になる。吸気は鼻から1、呼気は口をすぼめて2〜4の割合で、ゆっくり吐く。
経皮的動脈血酸素飽和度は上昇していない。口唇のチアノーゼは、還元ヘモグロビンが増えていることを示し、酸素飽和度は低下している。チアノーゼは、還元ヘモグロビンが5g/dL以上になると現れる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①換気量、②呼吸の指導、③酸素化という、この疾患の3つの要点をそれぞれ逆に述べている。「吐けない病気」という一点から、すべてが導ける。吐けない→残気が増える→1回換気量は減る→呼気を助ける(口すぼめ呼吸)→進行すると二酸化炭素がたまる、という流れになる。加えて、チアノーゼがあれば酸素飽和度は低い、という基本も押さえる。
理解を深める
慢性閉塞性肺疾患を整理する。病態=肺気腫(肺胞の破壊)と慢性気管支炎(気道の慢性の炎症と粘液の過剰)が、さまざまな割合で組み合わさる。最大の原因は喫煙。症状=労作時呼吸困難(徐々に進行)、慢性の咳と痰、喘鳴、体重減少、樽状胸郭、口すぼめ呼吸、呼吸補助筋の使用。なお、ばち指はこの疾患の所見ではない。認めた場合は、肺癌、気管支拡張症、間質性肺疾患などの併存を検討する契機になる。検査=スパイロメトリーで1秒率70%未満(気管支拡張薬を吸入した後)が診断の基準。胸部エックス線で肺の過膨張、横隔膜の平低化、心陰影の狭小化。動脈血ガス分析。合併症=肺高血圧と右心不全(肺性心)、気胸、呼吸器感染、骨粗鬆症、栄養障害、抑うつ、心血管疾患。治療=①禁煙(最も重要。進行を遅らせる唯一の手立て)、②吸入薬(長時間作用性抗コリン薬、長時間作用性ベータ2刺激薬、必要に応じて吸入ステロイド薬)、③ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌)、④呼吸リハビリテーション(運動療法、呼吸法、排痰法、栄養指導)、⑤在宅酸素療法(安静時の動脈血酸素分圧55mmHg以下などが適応)、⑥増悪時の治療(気管支拡張薬、ステロイド、抗菌薬、酸素、換気補助)。看護=①口すぼめ呼吸と腹式呼吸の指導、②動作の工夫(息を吐きながら動く、動作を分ける、上肢を支持した前傾姿勢で呼吸が楽になる患者もいるため、反応を見て個別に調整する、上肢を挙げる動作を減らす)、③排痰(体位、加湿、水分、呼吸法)、④栄養(呼吸に使うエネルギーが多く、体重が減りやすい。高エネルギー、少量頻回、腹部の膨満を避ける)、⑤感染の予防、⑥酸素療法の管理(低酸素血症を放置せず、増悪時は通常SpO2 88〜92%を目標に制御酸素を投与し、動脈血ガスでPaCO2とpHを再評価して個別に調整する)、⑦禁煙の支援、⑧不安への対応。
間違えやすい考え方
病態の正誤を問う型で、誤肢が換気量・呼吸指導・酸素化を逆に述べる。「吐けない病気」という一点で切る。
5分で振り返る
①肺気腫では、肺胞の壁が破壊され、呼気時に気道が虚脱して息を吐き出せない。残気量が増え、1回換気量は減る。②浅くて速い呼吸になる(この事例では34/分)。③初期は二酸化炭素の排出が保たれるが、進行すると貯留し、動脈血二酸化炭素分圧が上昇する(高炭酸ガス血症)。④口唇のチアノーゼは還元ヘモグロビンが5g/dL以上になった状態で、酸素飽和度は低下している。⑤口すぼめ呼吸で呼気の時間を長くとり、気道の内圧を高めて虚脱を防ぐ。吸気1に対し呼気2〜4。⑥診断は1秒率70%未満(気管支拡張薬吸入後)。⑦最も重要な治療は禁煙。⑧増悪時は低酸素血症を放置せず、通常SpO2 88〜92%を目標に制御酸素を投与し、動脈血ガスでPaCO2とpHを再評価して個別に調整する。
1分チェック
- 肺気腫が進行すると。→ 動脈血二酸化炭素分圧が上昇する。
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