鼓室形成術を受けた患者の退院指導の内容で正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
鼓室形成術を受けた患者の退院指導の内容で正しいものを問う。鼻を強くかむことを禁じることである。
この問題で問われていること
中耳と鼻をつなぐ管の存在から、術後の注意を導けるか。
しくみから理解する
中耳(鼓室)は、耳管によって上咽頭とつながっている。鼻を強くかむと、鼻腔の圧が高まり、その圧が耳管を通って中耳へ伝わる。手術で再建した鼓膜と耳小骨、そして移植した組織は、この圧により移動または脱落しうる。加えて、鼻腔の分泌物が中耳へ押し込まれて感染を招く危険もある。したがって、鼻を強くかむことは禁じ、かむ場合は片方ずつ、静かに行うよう指導する。くしゃみも、口を開けて圧を逃がすよう伝える。
選択肢ごとの確認
水泳は可能ではない。術後しばらくは、外耳道から水が入ることによる感染と、水圧の影響を避けるため、水泳を禁じる。洗髪と入浴も、耳に水が入らないよう工夫し、医師の許可を得てから通常に戻す。再開の時期は、創の治癒の状態により医師が判断する。
耳垢をこまめに除去することも適切でない。術後の外耳道と鼓膜は脆弱で、綿棒などによる操作は、再建した部分を損傷し、また感染を招く。耳の中を自分で触らないよう指導し、耳垢の除去は受診時に医師が行う。
エレベーターの使用を勧めることも誤りになる。エレベーターによる急な高低差の移動は、気圧の変化を生じ、中耳の圧に影響する。同じ理由で、飛行機、登山、そして潜水も、一定期間避けるよう指導する。階段を用いる、あるいはゆっくりした移動を勧めることになる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも中耳の圧と感染に関わる。判断の基準は、①中耳へ圧がかかるか(鼻をかむ、くしゃみ、気圧の変化、いきみ)、②水と細菌が入るか(水泳、洗髪、耳を触る)の2つになる。この2点から、してよいこととしてはいけないことを導ける。
理解を深める
耳の疾患と手術後の看護を整理する。鼓室形成術=慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、鼓膜穿孔などに対し、病変を除去し、鼓膜と耳小骨の連鎖を再建して、聴力の改善と病変の再発の防止を図る手術になる。術後の注意=①鼻を強くかまない(片方ずつ静かに)、②くしゃみは口を開けて、③いきまない(便秘を予防する)、④重い物を持たない、⑤気圧の変化を避ける(飛行機、登山、潜水、急なエレベーター)、⑥耳に水を入れない(洗髪と入浴の工夫、水泳の禁止)、⑦耳を自分で触らない、⑧激しい運動を避ける、⑨風邪をひかないようにする(上気道の感染は耳管を通じて中耳へ及ぶ)、⑩指示された期間、患側を下にして寝ない。観察=①めまいと悪心(内耳への影響)、②顔面神経麻痺(顔面神経は中耳を走行するため、損傷の危険がある。閉眼、額のしわ寄せ、口角の動き、そして味覚を確認する)、③耳漏(量、性状、色、におい)、④聴力(術後しばらくは、詰め物と浮腫により聴こえにくい。回復には時間がかかることを説明する)、⑤耳鳴、⑥出血、⑦発熱と疼痛。中耳の疾患=①急性中耳炎(小児に多い。耳管が短く水平なため、上気道の感染が中耳へ及びやすい。耳痛、発熱、耳漏)、②滲出性中耳炎(痛みがなく、聴こえにくさだけが現れる。小児では気づかれにくく、言葉の発達に影響することがある)、③慢性中耳炎、④真珠腫性中耳炎(角化した上皮が中耳に入り込み、骨を破壊する。放置すると顔面神経麻痺、内耳の障害、頭蓋内合併症を招く)。難聴=伝音難聴(外耳と中耳の障害。手術と補聴器で改善しうる)、感音難聴(内耳と聴神経の障害)、混合性難聴。
間違えやすい考え方
退院指導を問う型で、誤肢が水・耳の操作・気圧に関わる。中耳への圧と感染の2点で切る。
5分で振り返る
①中耳は耳管で上咽頭とつながる。鼻を強くかむと圧が中耳へ伝わり、再建した鼓膜と耳小骨が移動・脱落しうる。分泌物が押し込まれて感染も招く。②鼻は片方ずつ静かにかむ。くしゃみは口を開けて圧を逃がす。③水泳は禁止。洗髪と入浴も耳に水が入らないよう工夫し、医師の許可を得る。④耳垢の除去を自分で行わない。術後の外耳道と鼓膜は脆弱で、損傷と感染を招く。⑤気圧の変化を避ける(飛行機、登山、潜水、急なエレベーター)。⑥いきまない、重い物を持たない、風邪をひかない。⑦観察=めまい、顔面神経麻痺、耳漏、聴力、耳鳴、出血、発熱。⑧術後しばらくは詰め物と浮腫で聴こえにくいことを説明する。
1分チェック
- 鼓室形成術の後は。→ 鼻を強くかまない(中耳へ圧が伝わる)。
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