前立腺癌〈prostate cancer〉に ついて正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
前立腺がんについて正しいものを問う。血清前立腺特異抗原値が高値となる、である。
この問題で問われていること
腫瘍マーカーと、この疾患の特徴を押さえているか。
しくみから理解する
前立腺特異抗原は、前立腺の上皮細胞が産生するタンパク質で、血中の値は前立腺がんのスクリーニングと、治療の効果の判定、そして再発の発見に用いられる。一般に4.0ng/mL以下が基準とされ、これを超えると精査(直腸診、超音波検査、磁気共鳴画像、そして生検)が行われる。ただし、前立腺肥大症、前立腺炎、そして射精と直腸診の後にも上昇するため、値が高いことがそのままがんを意味するわけではない。
選択肢ごとの確認
肺転移の頻度が低いわけではない。前立腺がんは骨転移が特に多い(脊椎、骨盤、肋骨。造骨性の転移が特徴)が、肺、肝臓、リンパ節への転移も生じる。骨転移では、疼痛、病的骨折、そして脊髄の圧迫による麻痺が問題になる。
患者の多くは60歳未満ではない。加齢とともに頻度が高まり、多くは65歳以上、とくに70歳代以降に多い。日本では罹患数が増加を続けており、男性のがんの中で最も多い部類になった。背景には、高齢化、食生活の変化、そして検査の普及がある。
テストステロン補充療法は行わない。前立腺がんは男性ホルモンにより増殖するため、補充は禁忌になる。治療では逆に、男性ホルモンの働きを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が行われる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、④は機序から明確に判断できる。「男性ホルモンで育つがんに、男性ホルモンを補充することはありえない」という一点になる。③は年齢の分布、①は転移の部位に関する知識になる。前立腺がんの特徴として、①高齢者に多い、②進行が緩やかなものが多い、③骨転移が多い、④男性ホルモンに依存する、⑤前立腺特異抗原で追える、の5点を押さえる。
理解を深める
前立腺がんを整理する。症状=早期は無症状。進行すると排尿の症状(頻尿、排尿困難、残尿感、尿意切迫、血尿)、そして骨転移による腰背部痛が現れる。ただし排尿の症状は前立腺肥大症でも生じ、区別できない。診断=①前立腺特異抗原、②直腸診(硬く、凹凸のある腫瘤を触れる)、③経直腸的超音波検査、④磁気共鳴画像、⑤生検(確定診断)、⑥病期の評価(骨シンチグラフィー、コンピュータ断層撮影)。悪性度はグリソンスコアで表す。治療=①監視療法(低リスクで進行が緩やかな場合、治療をせずに定期的に検査で追う。過剰な治療による生活の質の低下を避ける)、②手術(前立腺全摘除術。ロボット支援下の手術が普及している)、③放射線療法(外部照射、組織内照射)、④内分泌療法(去勢術、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの作動薬と拮抗薬、抗アンドロゲン薬)、⑤化学療法、⑥骨転移への治療(放射線、骨修飾薬)。手術後の合併症=①尿失禁(尿道括約筋の機能の低下。骨盤底筋訓練により改善を図る。多くは時間とともに回復する)、②勃起障害(神経血管束の温存の程度による)、③吻合部の狭窄。看護=①骨盤底筋訓練の指導(術前から始めると効果的)、②尿失禁への対応(パッド、皮膚のケア、外出時の工夫、心理的な支援)、③性機能への影響についての説明と、本人とパートナーへの配慮、④内分泌療法の副作用(ほてり、発汗、性欲の低下、女性化乳房、骨密度の低下、脂質と血糖の異常、筋肉量の低下、抑うつ)への対応、⑤骨転移がある場合の疼痛管理と、病的骨折・脊髄圧迫の予防と早期発見(下肢の脱力、しびれ、排尿と排便の障害は緊急の徴候)、⑥定期的な検査の継続。
間違えやすい考え方
疾患の正誤を問う型で、誤肢が転移・年齢・治療を誤る。男性ホルモンに依存するという一点で切る。
5分で振り返る
①前立腺特異抗原は、スクリーニング、治療効果の判定、再発の発見に用いる。一般に4.0ng/mL以下が基準。②前立腺肥大症、前立腺炎、射精と直腸診の後にも上昇する。高値がそのままがんを意味しない。③骨転移が特に多く(造骨性)、肺、肝臓、リンパ節にも転移する。④多くは65歳以上、とくに70歳代以降。男性のがんで最も多い部類になった。⑤男性ホルモンにより増殖するため、テストステロン補充は禁忌。治療は逆に内分泌療法。⑥低リスクでは監視療法(治療せず定期的に検査で追う)を選ぶことがある。⑦手術後の合併症=尿失禁(骨盤底筋訓練を術前から)、勃起障害。⑧骨転移での下肢の脱力、しびれ、排尿排便の障害は脊髄圧迫を示す緊急の徴候。
1分チェック
- 前立腺がんで上昇するのは。→ 血清前立腺特異抗原(基準は4.0ng/mL以下)。
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