乳癌〈breast cancer〉の患者に対する抗エストロゲン薬の副作用はどれか。
公式正答:2
解説
乳がんの患者に対する抗エストロゲン薬の副作用を問う。ほてりである。
この問題で問われていること
薬の作用機序から、副作用を導けるか。
しくみから理解する
抗エストロゲン薬(タモキシフェンなど)は、乳がん細胞のエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンの作用を遮断することで増殖を抑える。その結果、体はエストロゲンが不足した状態に近くなり、更年期に似た症状が現れる。ほてり(顔や上半身が急に熱くなる)、のぼせ、発汗、動悸、そして不眠と気分の変動が代表になる。ほてりは最も頻度の高い副作用で、生活の質に影響し、服薬の継続を妨げる要因にもなる。
選択肢ごとの確認
低血糖は、糖尿病治療薬(インスリン、スルホニル尿素薬)で問題になるもので、抗エストロゲン薬の副作用ではない。
肺線維症は、一部の抗がん薬(ブレオマイシン、ゲフィチニブなど)、放射線療法、そして特定の薬剤で生じる間質性肺疾患になる。抗エストロゲン薬の代表的な副作用ではない。
末梢神経障害は、タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル)と白金製剤、そしてビンカアルカロイド系の抗がん薬で問題になる。手足のしびれ、感覚の鈍麻、そして疼痛が現れる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
「エストロゲンを抑える薬なので、エストロゲンが減ったときの症状が出る」という一本の理屈で導ける。誤肢は、いずれも別の薬剤の副作用として有名なものが並んでいる。薬の副作用を問う設問では、作用機序から生じる必然の副作用と、薬剤に固有の副作用を分けて考える。ほてりは前者になる。
理解を深める
乳がんの薬物療法を整理する。治療の選択は、①ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)の有無、②増殖に関わる受容体の過剰発現の有無、③増殖の指標、により決まる。内分泌療法=ホルモン受容体が陽性の場合に行う。①抗エストロゲン薬(タモキシフェン。閉経の前後を問わず使える)、②アロマターゼ阻害薬(閉経後に用いる。閉経後は、副腎由来のアンドロゲンが脂肪組織のアロマターゼによりエストロゲンへ変換されるため、この酵素を阻害する)、③性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬(閉経前で、卵巣の機能を抑える場合)。副作用=①抗エストロゲン薬=ほてり、発汗、不正性器出血、帯下、血栓症、そして子宮体がんの危険がわずかに高まる(不正出血があれば受診するよう指導する)。②アロマターゼ阻害薬=関節のこわばりと痛み、骨密度の低下と骨折、脂質異常。内分泌療法は5年から10年と長期にわたるため、副作用への対応と、継続の支援が看護の要点になる。化学療法=アンスラサイクリン系、タキサン系などを組み合わせる。副作用=骨髄抑制、悪心と嘔吐、脱毛、末梢神経障害、心毒性。分子標的薬=特定の受容体が過剰に発現している場合に用いる。心機能の低下に注意する。手術=乳房部分切除術と乳房全切除術、腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検。看護=①術後の患側上肢のリンパ浮腫への対応。注意の程度は、腋窩リンパ節郭清を受けたかどうかと、リンパ浮腫があるかどうかで変わる。郭清を受けた人やリンパ浮腫のある人では、可能なら採血と血圧測定に対側を用い、外傷と感染を避け、締めつけず、皮膚を保護する。センチネルリンパ節生検のみの人へこれらを一律に当てる根拠は乏しい。重い物を持たないという制限も一律ではなく、監視下で段階的に進めるレジスタンス運動は安全で有益とされる。腕を全く使わないのではなく、日常的に動かす、②肩関節の可動域の訓練、③ボディイメージの変化への支援(下着、補整具、乳房再建の情報提供)、④脱毛への対応(かつら、頭皮のケア、事前の説明)、⑤妊よう性への配慮(若年者では、治療の前に卵子と受精卵の凍結という選択肢がある。治療開始前に情報を提供する)、⑥就労と経済の相談、⑦定期的な受診と自己検診の継続。
間違えやすい考え方
副作用を問う型で、誤肢が他の薬剤に固有の副作用である。作用機序から必然の副作用で切る。
5分で振り返る
①抗エストロゲン薬は、乳がん細胞のエストロゲン受容体を遮断して増殖を抑える。②その結果、更年期に似た症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸、不眠、気分の変動)が現れる。③ほてりは最も頻度が高く、服薬の継続を妨げる要因になる。④タモキシフェンでは、不正性器出血、血栓症、そして子宮体がんの危険がわずかに高まる。不正出血があれば受診するよう指導する。⑤アロマターゼ阻害薬は閉経後に用い、関節のこわばりと痛み、骨密度の低下が問題になる。⑥低血糖は糖尿病治療薬、肺線維症はブレオマイシン等、末梢神経障害はタキサン系と白金製剤の副作用。⑦内分泌療法は5〜10年と長期。継続の支援が看護の要点になる。
1分チェック
- 抗エストロゲン薬の副作用は。→ ほてり(エストロゲンが減った状態になる)。
この問題に対応する教材の確認中です。