加齢に伴う高齢者の循環器系の変化で正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
加齢に伴う高齢者の循環器系の変化で正しいものを問う。心室壁が厚くなる、である。
この問題で問われていること
血管の硬化が心臓に何をもたらすかを説明できるか。
しくみから理解する
加齢により、大動脈をはじめとする動脈の壁で弾性線維が減り、膠原線維とカルシウムの沈着が増えて、血管が硬くなる。硬い血管は、心臓が血液を送り出すときに広がりにくいため、左心室にかかる後負荷が増える。心筋は、この負荷に対応するために肥大し、心室壁が厚くなる。これは高血圧による心肥大と同じ機序になる。厚くなった心室は、収縮する力は保たれても、拡張して血液を受け入れる力が落ちるため、拡張機能が低下する。
選択肢ごとの確認
運動時の心拍出量は増大しない。加齢により、①最大心拍数が低下する(およそ220から年齢を引いた値が目安)、②心筋の収縮力の予備が減る、③交感神経の刺激に対する反応が鈍る、④拡張機能が低下する、という変化が重なるため、運動時に必要な心拍出量を増やす力(予備能)が低下する。
拡張期血圧は上昇せず、むしろ低下する傾向になる。血管が硬くなると、収縮期に血液を送り出したときの圧が高くなる一方、拡張期には血管の弾性による押し戻しが弱いため、圧が下がる。結果として、収縮期血圧だけが高い収縮期高血圧が高齢者に特徴的になる。
脈圧は狭小化せず、拡大する。脈圧は収縮期血圧と拡張期血圧の差であり、収縮期が上がって拡張期が下がるため、差は大きくなる。脈圧の拡大は、動脈の硬化の程度を反映する指標になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①予備能、②拡張期血圧、③脈圧という3点を、いずれも逆に述べている。すべては「血管が硬くなる」という一点から導ける。硬い血管→収縮期血圧が上がる→拡張期血圧は下がる→脈圧は拡大する→後負荷が増える→心室壁が厚くなる→拡張機能が低下する、という流れになる。この連鎖を覚えておけば、循環器に関する加齢の問題の多くに答えられる。
理解を深める
高齢者の循環器の特徴と看護を整理する。加齢による変化=①動脈の硬化(収縮期高血圧、脈圧の拡大)、②心室壁の肥厚と拡張機能の低下、③洞結節の細胞の減少(徐脈、洞不全症候群)、④刺激伝導系の線維化(房室ブロック、心房細動)、⑤圧受容器の感受性の低下(起立性低血圧、食後低血圧)、⑥静脈の弾性の低下(下肢の浮腫、静脈瘤)、⑦最大心拍数と予備能の低下。臨床上の意味=①起立性低血圧が起こりやすい(急に立たない、段階的に起き上がる、脱水を避ける、降圧薬の見直し)、②食後低血圧(食後30分から1時間に生じる。食後すぐに動かない、少量頻回の食事)、③心不全になりやすい(拡張機能の低下が背景。塩分と水分の負荷、頻脈、貧血、感染が引き金になる)、④心房細動が増える(脳梗塞の危険が高まるため、抗凝固療法の適応を検討する)、⑤症状が典型的でない(心筋梗塞でも胸痛がなく、息切れ、悪心、意識の低下、そして食欲不振として現れることがある。無痛性心筋梗塞)、⑥薬の影響を受けやすい。看護=①血圧の測定(臥位と立位の両方で測り、起立性低血圧を評価する)、②脈拍(不整の有無、心房細動では脈拍と心拍数が一致しない)、③浮腫と体重、④活動時の症状(息切れ、動悸、胸部の不快)、⑤水分出納、⑥転倒の予防、⑦保温(寒冷は血管を収縮させ、血圧を上げる。入浴と排泄の場面での温度差=ヒートショックに注意する)、⑧服薬の管理。
間違えやすい考え方
加齢による変化を問う型で、誤肢がすべて実際と逆である。血管が硬くなるという一点から連鎖させて切る。
5分で振り返る
①加齢で動脈が硬くなり、左心室の後負荷が増えるため、心室壁が厚くなる。②厚くなった心室は、拡張して血液を受け入れる力が落ちる(拡張機能の低下)。③収縮期血圧は上がり、拡張期血圧は下がる。結果として収縮期高血圧になる。④脈圧(収縮期と拡張期の差)は拡大する。動脈硬化の程度を反映する。⑤運動時の心拍出量を増やす予備能は低下する(最大心拍数の低下、交感神経への反応の鈍化)。⑥圧受容器の感受性が低下し、起立性低血圧と食後低血圧が起こりやすい。⑦心筋梗塞でも胸痛がなく、息切れ、悪心、意識の低下として現れることがある。⑧血圧は臥位と立位の両方で測る。
1分チェック
- 加齢で心室壁は。→ 厚くなる(後負荷の増加による)。拡張期血圧は下がり、脈圧は拡大する。
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