生後11 か月の男児。ある日の朝、自宅でボタン型電池を飲み込んだ疑いがあり、 その日の午前中に外来を受診した。胸部エックス線撮影によって、ボタン型電池が 食道下部にあることが確認された。 行われる処置で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
生後11か月の男児がボタン型電池を飲み込み、食道下部にあることが確認された際の処置を問う。緊急摘出術の実施である。
この問題で問われていること
誤飲した物によって、対応が変わることを理解しているか。
しくみから理解する
ボタン型電池が食道にとどまると、①電池の正極と負極が粘膜を介して短絡し、電流により組織が壊死する(電気化学的損傷)、②漏れ出した強アルカリの電解液が粘膜を融解する、③圧迫による壊死、という機序により、数時間のうちに食道の穿孔、気管食道瘻、そして大血管への穿破を起こしうる。とくにリチウム電池では損傷が速く重い。したがって、食道にある場合は緊急に内視鏡で摘出することが原則になる。時間が経つほど損傷が進むため、待機せず直ちに行う。
選択肢ごとの確認
背部の叩打は、気道の異物による窒息に対する処置になる。この児は電池を飲み込んで食道にあり、窒息していない。加えて、叩打によって電池が移動する保証はなく、状態を悪化させうる。
緩下薬の使用は適切でない。食道にある電池を、下剤で排出させることはできない。胃と腸へ進めばよいという考えもあるが、食道にとどまっている段階では、待つのではなく直ちに摘出する。
催吐薬の使用は禁忌になる。吐かせることで、①電池が食道を再び通り、損傷を広げる、②誤嚥する、③吐物により気道が閉塞する、という危険がある。加えて、腐食性の物質を誤飲した場合も、催吐は禁忌になる。
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混同しやすいポイント
誤飲の対応は、①何を、②どれだけ、③いつ飲んだか、④いまどこにあるか、で決まる。ボタン型電池は、誤飲の中でも最も緊急性が高いものの一つになる。誤肢は、①窒息への処置、②排出を待つ処置、③催吐という、いずれもこの場面に合わないものになる。とくに催吐は、多くの誤飲で禁忌となる点を押さえる。
理解を深める
小児の誤飲を整理する。緊急性が高いもの=①ボタン型電池(食道にあれば緊急摘出。胃内にある場合は、年齢〈おおむね5歳未満〉、電池の直径〈20mm以上〉、症状の有無、磁石の同時誤飲、食道への停留の既往を確認して摘出の要否を判断する。無症状でこれらに当たらない場合は、7〜14日後の再撮影で通過を確認する。実際の対応は、現行の中毒情報および内視鏡の手順に従う)、②磁石(2個以上、または磁石と金属を飲むと、腸管の壁を挟んで吸着し、穿孔と壊死を起こす)、③鋭利な異物、④たばこ(ニコチン中毒。ただし乾いた葉をそのまま飲んだ場合は吸収が遅い。たばこの浸出液=吸い殻を入れた飲料は危険)、⑤医薬品(家族の薬。とくに血糖降下薬、降圧薬、向精神薬)、⑥灯油と有機溶剤(誤嚥性肺炎を起こすため催吐は禁忌)、⑦強酸と強アルカリ(催吐と中和は禁忌。粘膜を再び傷める)。催吐が禁忌の場合=①意識障害とけいれん、②腐食性の物質、③石油製品、④鋭利な物、⑤月齢が低い児。応急の対応=①何をどれだけいつ飲んだかを確認し、可能なら現物と容器を持参する、②中毒110番などの相談窓口を活用する、③自己判断で吐かせない、④牛乳や水を飲ませてよい場合と、いけない場合がある(指示に従う)。予防=①誤飲の危険がある大きさの目安は直径39mm以下(トイレットペーパーの芯を通る大きさ)、②手の届く範囲(床から1メートル以内)に置かない、③子どもは何でも口へ入れる時期がある(生後5〜6か月から2歳頃)、④家族への指導(薬、電池、たばこ、洗剤、化粧品、硬貨、ボタン、ナッツ類)。窒息=①乳児は背部叩打法と胸部突き上げ法、②1歳以上は背部叩打法と腹部突き上げ法(ハイムリック法)、③意識がなければ心肺蘇生を開始する。硬い豆やナッツ類は気道に入ると取れにくく、5歳以下には与えない。
間違えやすい考え方
処置を問う型で、誤肢が窒息への処置・待つ処置・催吐である。何がどこにあるかで切る。
5分で振り返る
①ボタン型電池が食道にとどまると、電流による組織の壊死、強アルカリの電解液による融解、圧迫壊死により、数時間で食道穿孔と気管食道瘻、大血管への穿破を起こしうる。②食道にある場合は緊急に内視鏡で摘出する。待機しない。③催吐は禁忌。食道を再び通って損傷を広げ、誤嚥と気道閉塞を招く。④背部の叩打は気道の異物による窒息への処置で、この場面には合わない。⑤緊急性が高い誤飲=ボタン型電池、磁石2個以上、鋭利な異物、たばこの浸出液、医薬品、灯油と有機溶剤、強酸と強アルカリ。⑥催吐が禁忌=意識障害、腐食性物質、石油製品、鋭利な物、月齢が低い児。⑦誤飲の危険がある大きさの目安は直径39mm以下。⑧硬い豆やナッツ類は5歳以下には与えない。
1分チェック
- ボタン型電池が食道にあれば。→ 緊急に内視鏡で摘出する(催吐は禁忌)。
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