母親がA さん(27 歳、統合失調症 schizophrenia )に対して「親に甘えてはいけない」と言いなが ら、過度にA さんの世話をすることで、A さんが混乱していた。 この親子関係を示すのはどれか。
公式正答:4
解説
「親に甘えてはいけない」と言いながら過度に世話をすることで子が混乱している親子関係を示す語を問う。二重拘束(ダブルバインド)である。
この問題で問われていること
矛盾したメッセージが同時に発せられる状況を、用語で言えるか。
しくみから理解する
二重拘束は、ベイトソンらが提唱した概念で、①二つの矛盾するメッセージが同時に発せられ、②その場から逃れることができず、③矛盾を指摘することも許されない、という状況を指す。この事例では、言葉では「甘えてはいけない」と自立を求めながら、行動では過度に世話をして依存を促しており、どちらに従っても相手の期待に背くことになる。逃れられない矛盾に置かれた結果、混乱が生じる。かつては統合失調症の発症を説明する仮説として提唱されたが、現在では発症の原因とは考えられていない。ただし、家族の関係を理解する枠組みとしては有用性が残る。
選択肢ごとの確認
共依存は、相手の世話をすることに自分の存在価値を見出し、その関係から離れられなくなる状態になる。世話をする側が、相手の問題(依存症など)を結果的に支えてしまう関係を指す。この事例は、矛盾したメッセージという点が中心であり、共依存とは異なる。
同一視は、他者の特徴、価値観、そして態度を自分のものとして取り入れることになる。防衛機制の一つで、モデルとなる人物に自分を重ねる働きを指す。
ネグレクトは、必要な世話をしないことになる。この事例では、むしろ過度に世話をしており、正反対になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①関係の型(共依存)、②防衛機制(同一視)、③虐待の一類型(ネグレクト)という、それぞれ異なる枠組みの用語になる。この設問の鍵は、「言っていること」と「していること」が食い違い、しかも逃げ場がないという構造になる。「矛盾+逃れられない」が二重拘束の要件になる。
理解を深める
家族の関係と精神の健康を整理する。二重拘束の要件=①二人以上の関係、②繰り返される経験、③一次的な否定の命令(「〜してはいけない」)、④それと矛盾する二次的な命令(多くは非言語的に、より抽象的な水準で発せられる)、⑤その場から逃げることを禁じる、⑥矛盾を指摘できない。臨床での意味=医療の場面でも生じうる。「何でも聞いてくださいね」と言いながら、忙しそうにして質問を許さない態度、「無理しないで」と言いながら回復を急かすこと、「あなたの意思を尊重します」と言いながら選択肢を一つしか示さないことなどが当たる。看護師自身が二重拘束を生んでいないか、自覚することが必要になる。関係を表す他の用語=①感情表出(家族が患者に対して示す批判、敵意、そして過度の巻き込まれ。高いと再発率が上がる)、②共依存、③スケープゴート(家族の問題が特定の一人に集中して現れる)、④世代境界の混乱(親子の役割が逆転する)、⑤三角関係化(二者間の緊張に第三者を巻き込む)。家族への支援=①家族を責めない(原因探しをしない)、②家族もまた困っており、支援を必要としていると捉える、③心理教育により、疾患の理解と対応の方法を提供する、④家族自身の生活を保つことを勧める、⑤家族会と相談窓口につなぐ、⑥必要に応じて家族療法を導入する。防衛機制=抑圧、否認、投影、合理化、反動形成、置き換え、昇華、退行、同一視、知性化、解離。これらは誰にでも働く心の仕組みであり、それ自体が病的なのではない。過度に、また硬直して用いられるときに問題になる。
間違えやすい考え方
用語を問う型で、誤肢が別の枠組みの用語である。矛盾+逃れられないという構造で切る。
5分で振り返る
①二重拘束=矛盾する二つのメッセージが同時に発せられ、その場から逃れられず、矛盾を指摘することも許されない状況。②この事例では、言葉で自立を求め、行動で依存を促しており、どちらに従っても期待に背く。③ベイトソンらが提唱。かつては統合失調症の発症を説明する仮説とされたが、現在では原因とは考えられていない。④共依存=相手の世話をすることに存在価値を見出し、関係から離れられない。⑤同一視=他者の特徴や価値観を自分のものとして取り入れる防衛機制。⑥ネグレクト=必要な世話をしないこと。この事例とは正反対。⑦医療の場面でも二重拘束は生じうる。看護師自身が生んでいないか自覚する。
1分チェック
- 矛盾したメッセージから逃れられない関係は。→ 二重拘束(ダブルバインド)。
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