A さん(85 歳、女性)は1人暮らし。うっ血性心不全〈congestive heart failure〉 で臥床して過ごすことが多い。訪問看護師が訪問すると、A さんは体温37.6 ℃、口唇の乾燥はなく、体熱感 はあるが手足が冷えると言って羽毛布団を肩まで掛けている。室温30 ℃、湿度65 %、外気温は32 ℃、冷房設備はあるが使っていない。 このときの訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
室温30℃、湿度65%、外気温32℃の環境で、体温37.6℃、体熱感があるが手足が冷えると訴えて羽毛布団を肩まで掛けている85歳女性への対応を問う。冷房設備で室温を調整することである。
この問題で問われていること
熱の原因が発熱か環境かを見分けられるか。
しくみから理解する
この場面で最初に手をつけるべきは、明らかに不適切な環境になる。室温30℃、湿度65%は、高齢者にとって熱中症の危険が高い条件で、冷房があるのに使っていない。加えて、うっ血性心不全があり臥床がちで、体温調節の予備も乏しい。まず室温と湿度を適正な範囲(夏期でおおむね25〜28℃、湿度50〜60%)へ調整することが、体温を下げ、脱水を防ぎ、そして安楽にもつながる。環境を整えたうえで、本人の状態を再評価する。
選択肢ごとの確認
本問の公式正答は冷房の使用である。ただし、高温環境で熱中症が疑われる人に厚い掛け物を保持することは一般化できない。涼しい場所へ移し、余分な衣類・掛け物を調整して身体を冷やす。一方、感染性発熱の悪寒や冷却で震えが増す場合もあるため、意識、皮膚、呼吸循環、体温経過を再評価し、急激な冷却を一律に行わない。
頓用の解熱薬を服用してもらうことも、この時点では優先されない。37.6℃という体温は、環境の高温による影響が大きい可能性があり、まず環境を整えて再評価する。加えて、高齢者では解熱薬による急な発汗と血圧の低下が、脱水と転倒を招く。心不全があればなおさら慎重になる。
直ちに経口補水液を飲むよう促すことも、最優先ではない。口唇の乾燥がなく、著明な脱水の所見は示されていない。加えて、うっ血性心不全があるため、水分の負荷は慎重に判断する必要がある。水分摂取は必要だが、量と種類は医師の指示にもとづいて調整する。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①本人の訴えに反する処置、②原因を確かめる前の薬、③心不全がある人への水分負荷になる。この設問の鍵は、事例文に置かれた環境の数値(室温30℃、湿度65%、外気温32℃、冷房を使っていない)になる。数値が示されているときは、それが問題の中心であることが多い。
理解を深める
高齢者の熱中症と療養環境を整理する。高齢者が熱中症になりやすい理由=①暑さを感じにくい(温度感覚の低下)、②発汗の機能が低下し、放熱しにくい、③体内の水分量が少ない(若年者の約60%に対し約50%)、④渇きを感じにくい、⑤持病と薬剤(利尿薬、抗コリン薬、降圧薬)の影響、⑥経済的な理由と習慣により冷房を使わない、⑦一人暮らしで気づかれにくい、⑧夜間にも室温が下がらない。予防=①室温と湿度の管理(温湿度計を目につく場所に置く。「暑いと感じたら」ではなく「数値を見て」使う)、②冷房の使用を勧める(電気代への不安には、制度と相談先の情報を提供する)、③水分(時間を決めて、少量ずつ。心不全と腎不全がある場合は指示に従う)、④塩分の補給(大量に発汗した場合)、⑤衣服(通気性、吸湿性)、⑥入浴と外出の時間帯、⑦見守り(家族、近隣、配食、そして訪問時の確認)。熱中症の重症度=Ⅰ度(めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の発汗。現場での対応が可能)、Ⅱ度(頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力の低下。医療機関の受診が必要)、Ⅲ度(意識障害、けいれん、高体温、肝腎機能の障害、血液凝固の異常。入院が必要)。対応=涼しい場所へ移す、衣服を緩める、体を冷やす(首、腋窩、鼠径部)、水分と塩分を補う(意識がはっきりしていれば)、意識が悪ければ直ちに救急要請し、飲ませない。うっ血性心不全がある人への配慮=①水分と塩分の管理、②体重の測定、③暑さによる脱水と、心不全による水分制限の両立という難しさ、④症状の変化(息切れ、浮腫、体重)を毎日確認する仕組み、⑤医師との連絡。
間違えやすい考え方
対応の優先を問う型で、誤肢が訴えに反する処置・薬・水分負荷である。事例文の環境の数値で切る。
5分で振り返る
①室温30℃、湿度65%は高齢者にとって熱中症の危険が高い。冷房があるのに使っていない点が問題の中心。②夏期の適正な室温はおおむね25〜28℃、湿度50〜60%。③高温環境では、手足の冷えだけで悪寒期と断定しない。熱中症が疑われれば涼所、余分な衣類・掛け物の調整、身体冷却を行うが、感染性発熱や震えの増悪も再評価する。④解熱薬は、環境を整えて再評価してから。高齢者では急な発汗と血圧低下が脱水と転倒を招く。⑤うっ血性心不全があるため、水分の負荷は慎重に判断する。⑥高齢者が熱中症になりやすい理由=暑さを感じにくい、発汗の低下、体内水分量が少ない、渇きを感じにくい、薬剤、冷房を使わない習慣、一人暮らし。⑦「暑いと感じたら」ではなく「温湿度計の数値を見て」冷房を使うよう伝える。
1分チェック
- 室温30℃で冷房を使っていない高齢者には。→ まず室温を調整する。
この問題に対応する教材の確認中です。