採血時に操作を誤ったため溶血し、採血管内の血漿が暗赤色になってしまった。 この血漿の電解質濃度を測定したときに、本来の値よりも高くなるのはどれか。
公式正答:3
解説
赤血球が壊れると中身が血漿へ漏れ出る。細胞内に圧倒的に多いのはカリウムなので、測定値が偽性に高くなる。
この問題で問われていること
細胞内液と細胞外液の電解質組成の違いを言えるか。これは検査値の解釈という臨床の場面に落とし込まれている。
しくみから理解する
細胞内液の主な陽イオンはカリウムで、濃度はおよそ150mEq/L。対して細胞外液(血漿)のカリウムは3.5〜5.0mEq/Lしかなく、実に30倍以上の差がある。逆に細胞外液の主な陽イオンはナトリウム(約140mEq/L)で、細胞内は約10〜15mEq/Lと少ない。この勾配はナトリウムポンプ(Na⁺/K⁺-ATPアーゼ)が絶えず働いて維持している。したがって赤血球が壊れると、細胞内に大量にあったカリウムが血漿へ流れ出し、測定値が実際より高く出る。これを偽性高カリウム血症という。
選択肢ごとの確認
細胞外液に多い陰イオン(約103mEq/L)。細胞内はずっと少ないので、溶血で漏れ出ても血漿濃度はむしろ薄まる方向になる。
細胞外液に多い(約24mEq/L)。溶血で上がる理由がない。
細胞内に約150mEq/L、細胞外に3.5〜5.0mEq/Lと30倍以上の差がある。溶血で最も大きく偽性上昇する。
細胞質の遊離カルシウム濃度は極めて低く保たれている(筋小胞体などに隔離されている)。細胞質から漏れても血漿濃度を上げるほどの量はない。
細胞外液に多く細胞内に少ない。溶血で漏れ出る量は少なく、上がらない。
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混同しやすいポイント
「壊れたのだから何でも上がる」と考えると選べない。上がるのは細胞内に濃く含まれているものだけ。カリウムとナトリウムのどちらが細胞内に多いかを即答できるようにしておく。
理解を深める
偽性高カリウム血症の原因は溶血だけではない。駆血帯を長く巻きすぎる、採血時に手を強く握らせる(グーパー運動)、細い針で無理に吸引する、採血後に強く振る、いずれも赤血球を壊してカリウムを漏らす。また著明な血小板増多や白血球増多でも、凝固の過程で細胞から放出されて偽性に上がる。検査値が予想外に高いときは、まず採血手技を疑うという判断につながる。実際の高カリウム血症は心停止に直結するので、偽性かどうかの見極めは重要である。
間違えやすい考え方
生理学の知識(電解質の分布)を、臨床の場面(採血ミス)に置き換えて問う型。場面から一度基礎の事実へ戻して考えると解ける。
5分で振り返る
細胞内液の主な陽イオン=カリウム(約150mEq/L)、主な陰イオン=リン酸と蛋白質。細胞外液の主な陽イオン=ナトリウム(約140mEq/L)、主な陰イオン=塩化物(約103mEq/L)と重炭酸(約24mEq/L)。勾配はナトリウムポンプが維持。溶血すると細胞内のカリウムが漏れて偽性高カリウム血症になる。駆血帯の長時間装着、手の握り込み、細い針、採血後の強い振盪も同じことを起こす。
1分チェック
- 細胞内液に最も多い陽イオンは何か
- 細胞外液に最も多い陽イオンは何か
- 溶血で偽性に上がる電解質は何か
- 偽性高カリウム血症を起こす採血手技を挙げられるか
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