舌癌〈tongue cancer〉について正しいのはどれか。
公式正答:5
解説
舌がんについて正しいものを問う。扁平上皮癌が多い、である。
この問題で問われていること
発生する部位の組織から、がんの種類を導けるか。
しくみから理解する
舌の表面は重層扁平上皮で覆われている。がんは、その部位を構成する上皮から発生するため、舌がんの大部分(およそ90%以上)は扁平上皮癌になる。同じ理由で、食道がん(日本では扁平上皮癌が多い)、子宮頸がん、皮膚がん、そして咽頭がんも扁平上皮癌が中心になる。一方、腺上皮からなる部位(胃、大腸、乳腺、前立腺、膵)では腺癌が多くなる。組織と発生するがんの対応を押さえておくと、多くの設問に応用できる。
選択肢ごとの確認
がん全体に対する発症頻度は約10%ではない。口腔がんは全悪性腫瘍のおよそ1〜2%程度で、そのうち舌がんが最も多くを占める。10%というのは過大になる。
発症年齢は20歳代が多いわけではない。50歳代から70歳代に多い。ただし、他の部位のがんと比べると、若年での発症も比較的みられる点が特徴として挙げられる。
好発部位は舌尖ではない。舌縁(舌の側面)、とくに中央から後方にかけてが最も多い。歯や義歯による慢性の刺激が関与すると考えられている。舌尖(舌の先)と舌背(上面)からの発生は少ない。
浸潤は起こす。悪性腫瘍であり、周囲の組織へ浸潤し、また頸部のリンパ節へ転移する。舌は血流とリンパの流れが豊富なため、早期からリンパ節転移をきたしやすい。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①頻度、②年齢、③部位、④浸潤という4点をそれぞれ誤っている。とくに④は、悪性腫瘍である以上ありえない記述であり、機序から明確に否定できる。①〜③は知識になるが、③の好発部位は「慢性の刺激を受ける場所」という理屈で導ける。舌縁は歯と接する部分であり、刺激を受けやすい。
理解を深める
口腔がんを整理する。危険因子=喫煙、飲酒(両者の相乗作用が大きい)、慢性の機械的刺激(不適合な義歯、う蝕により尖った歯)、口腔の不衛生、そしてヒトパピローマウイルス(中咽頭がんとの関連が強い)。前がん病変=白板症、紅板症。症状=治りにくい潰瘍、しこり、白斑と紅斑、出血、疼痛、しびれ、そして進行すると構音と嚥下の障害、開口障害。口内炎との区別=2週間以上治らない潰瘍は受診を勧める。診断=視診と触診(口腔は直接観察できるため、早期発見が可能な部位になる)、生検、画像検査(磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影、超音波)。治療=手術(切除と、必要に応じた再建、頸部リンパ節郭清)、放射線療法(小線源治療を含む)、化学療法。看護=①術前の口腔ケアと歯科との連携(術後の感染と、放射線による有害事象を減らす)、②術後の気道の管理(腫脹による閉塞の危険。気管切開を伴うことがある)、③出血の観察、④疼痛の管理、⑤摂食嚥下の訓練(言語聴覚士と協働)、⑥構音の障害とコミュニケーションの手段、⑦栄養(経管栄養から段階的に)、⑧ボディイメージと社会生活への影響(顔貌の変化、話しにくさ、食事が人と一緒にとりにくいこと)、⑨放射線療法の有害事象(口腔粘膜炎、口腔乾燥、味覚の変化、放射線性う蝕、顎骨壊死)への対応、⑩禁煙と節酒の支援、⑪定期的な受診と、口腔内の自己観察の指導。口腔ケアの意義=がん治療中の患者では、口腔の合併症が治療の継続を妨げる要因になるため、治療の前から歯科と連携して介入することが標準になっている。
間違えやすい考え方
疾患の正誤を問う型で、誤肢が頻度・年齢・部位・浸潤を誤る。組織から発生するがんの種類で切る。
5分で振り返る
①舌の表面は重層扁平上皮で覆われるため、舌がんの90%以上は扁平上皮癌。②同じ理由で、食道がん(日本では)、子宮頸がん、皮膚がん、咽頭がんも扁平上皮癌が中心。腺上皮の部位(胃、大腸、乳腺、前立腺、膵)は腺癌が多い。③口腔がんは全悪性腫瘍の1〜2%程度。10%は過大。④発症は50〜70歳代に多い。⑤好発部位は舌縁(側面)で、歯や義歯による慢性の刺激が関与する。舌尖と舌背は少ない。⑥悪性腫瘍なので浸潤し、頸部リンパ節へ早期から転移しやすい。⑦危険因子=喫煙、飲酒、慢性の機械的刺激、口腔の不衛生。前がん病変は白板症と紅板症。⑧2週間以上治らない潰瘍は受診を勧める。
1分チェック
- 舌がんの組織型は。→ 扁平上皮癌(舌の表面は重層扁平上皮)。
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