動脈硬化症〈arteriosclerosis〉 の粥腫形成に関与するのはどれか。2つ選べ。
公式正答:3・5
解説
動脈硬化症の粥腫形成に関与する細胞を2つ問う。血管内皮細胞と泡沫細胞である。
この問題で問われていること
粥腫ができる過程を、細胞の順で説明できるか。
しくみから理解する
粥状硬化の過程は、①血管内皮細胞の障害(高血圧、喫煙、高血糖、脂質異常、乱流による)から始まる。②障害された内皮の透過性が高まり、低比重リポタンパクが内膜へ入り込み、酸化される。③内皮細胞が接着分子を発現し、単球が接着して内膜へ侵入する。④単球はマクロファージへ分化し、酸化された低比重リポタンパクを取り込んで、脂質を満たした泡沫細胞になる。⑤泡沫細胞が集まって脂肪線条を作り、平滑筋細胞が中膜から内膜へ遊走・増殖して線維性の被膜を形成し、粥腫(アテローム)が完成する。したがって、血管内皮細胞と泡沫細胞の2つが関与する。
選択肢ごとの確認
ランゲルハンス細胞は、表皮に存在する樹状細胞で、抗原を捕らえてT細胞へ提示する免疫の細胞になる。接触皮膚炎などに関わるが、粥腫の形成には関与しない。なお、膵臓のランゲルハンス島とは別のものであり、名称が似ているため混同しやすい。
メサンギウム細胞は、腎の糸球体の毛細血管の間にある細胞になる。糸球体の構造を支え、収縮により濾過量を調節し、また免疫複合体の処理にも関わる。糸球体腎炎で増殖する。粥腫の形成には関与しない。
肥満細胞は、免疫グロブリンEを介したⅠ型アレルギーの中心となる細胞で、ヒスタミンなどを放出する。名称に「肥満」とあるが、肥満とは無関係で、細胞質が顆粒で満たされて膨らんで見えることに由来する。粥腫の形成の主役ではない。
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混同しやすいポイント
粥腫形成の流れを、細胞の順で覚える。「内皮の傷害 → 低比重リポタンパクの侵入と酸化 → 単球の侵入 → マクロファージ → 泡沫細胞 → 平滑筋細胞の遊走と増殖」になる。誤肢は、いずれも別の場所で働く細胞であり、ランゲルハンス細胞(皮膚)、メサンギウム細胞(腎)、肥満細胞(アレルギー)と、それぞれの担当を押さえておけば区別できる。
理解を深める
動脈硬化を整理する。種類=①粥状硬化(大動脈、冠動脈、脳動脈、腎動脈などの比較的太い動脈。粥腫を形成する)、②細動脈硬化(高血圧により、脳、腎、網膜の細い動脈に生じる)、③中膜石灰化硬化(メンケベルグ型。中膜に石灰が沈着する)。危険因子=①修正できないもの(加齢、性=男性、家族歴)、②修正できるもの(脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足、ストレス、慢性腎臓病、過度の飲酒)。粥腫の運命=①安定した粥腫(線維性被膜が厚い。狭窄を進めて労作性狭心症を起こす)、②不安定な粥腫(被膜が薄く、脂質に富み、炎症細胞が多い。破綻すると、その部位に血栓が形成され、血管を急に閉塞する)。急性冠症候群と、多くの脳梗塞は、この破綻による。したがって、狭窄の程度が軽くても、不安定な粥腫は危険になる。臨床への現れ方=①冠動脈=狭心症、心筋梗塞、②脳動脈=一過性脳虚血発作、脳梗塞、③大動脈=大動脈瘤(粥状硬化が背景になる)。なお大動脈解離の主な成り立ちは中膜の変性で、高血圧、二尖大動脈弁、遺伝性の大動脈疾患が背景になり、粥状硬化が主因ではない、④腎動脈=腎血管性高血圧、腎機能の低下、⑤下肢の動脈=閉塞性動脈硬化症(間欠性跛行、安静時疼痛、潰瘍と壊死)。予防と治療=①生活習慣の改善(禁煙、食事、運動、体重、節酒)、②脂質の管理(低比重リポタンパクコレステロールを、危険度に応じた目標値まで下げる)、③血圧の管理、④血糖の管理、⑤抗血小板薬(二次予防)、⑥必要に応じた血行再建(経皮的血管形成術、バイパス術)。看護=危険因子は生活の中にあるため、その人の生活に即した、続けられる目標を一緒に立てることが要点になる。
間違えやすい考え方
機序を問う型で、誤肢が別の場所で働く細胞である。粥腫形成の細胞の順で切る。
5分で振り返る
①粥状硬化の過程=内皮細胞の障害→低比重リポタンパクの内膜への侵入と酸化→単球の接着と侵入→マクロファージへ分化→酸化した低比重リポタンパクを取り込んで泡沫細胞に→脂肪線条→平滑筋細胞の遊走と増殖→粥腫の完成。②内皮の障害は、高血圧、喫煙、高血糖、脂質異常、乱流により生じる。③ランゲルハンス細胞は表皮の樹状細胞(膵臓のランゲルハンス島とは別)。④メサンギウム細胞は腎の糸球体にあり、糸球体腎炎で増殖する。⑤肥満細胞はⅠ型アレルギーの中心で、肥満とは無関係。⑥不安定な粥腫(被膜が薄く脂質に富む)は、狭窄が軽くても破綻して急性冠症候群と脳梗塞を起こす。⑦危険因子=加齢、男性、家族歴(修正不可)、脂質異常、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足(修正可能)。
1分チェック
- 粥腫形成に関与するのは。→ 血管内皮細胞(障害が始まり)と泡沫細胞(脂質を貯め込む)。
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