次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、会社員)は半年ほど前から労作時に胸痛と呼吸困難感があり、狭心症〈anginapectoris〉と診断され内服治療を受けている。本日明け方から胸部に圧迫感があった。出勤途中に強い胸痛を自覚し、自ら救急車を要請した。救急外来到着時のバイタルサインは、体温35.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉93%(酸素2L/分)。意識は清明。12誘導心電図はV1〜V4でST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST低下がみられた。
その後、A さんは経皮的冠動脈形成術〈PCI〉を受けた。帰室時のバイタルサイン は、体温36.2 ℃、呼吸数20/分、脈拍58/分、整、血圧80/40 mmHg、経皮的動 脈血酸素飽和度〈SpO2〉95 %(酸素1L/分)。顔面は蒼白、冷汗を認めた。意識は清 明である。 このとき看護師が最初に行うことはどれか。
公式正答:3
解説
経皮的冠動脈形成術を受けて帰室した患者が、脈拍58、血圧80/40mmHg、顔面蒼白、冷汗を認める際に、看護師が最初に行うことを問う。穿刺部の出血の有無を確認することである。
この問題で問われていること
術後のショックの原因として、まず何を疑うかを判断できるか。
しくみから理解する
この患者は、血圧の低下、顔面の蒼白、そして冷汗というショックの徴候を示している。経皮的冠動脈形成術の後で最も起こりやすく、かつ直ちに確認できる原因は、穿刺部からの出血になる。この手技では、抗血小板薬と抗凝固薬を用いるため、止血が得られにくい。加えて、大腿動脈から穿刺した場合は、後腹膜腔への出血が生じても外から見えにくく、大量に失血しうる。したがって、まず穿刺部を目で見て触れて確認し、腫脹、皮下出血、そして腹部と背部の疼痛の有無を評価する。
選択肢ごとの確認
側臥位にすることは適切でない。大腿動脈から穿刺した場合、術後は穿刺部の安静(下肢を伸展したまま、指示された時間の仰臥位)が必要になる。体位を変えることで止血が破綻し、出血を招く。加えて、ショックの状態では、下肢の挙上により静脈還流を増やす対応が考えられるが、まず原因の確認が先になる。
除細動器の準備は、この時点で最初に行うことではない。脈拍58で整であり、致死的な不整脈は示されていない。ただし、術後は再灌流に伴う不整脈が起こりうるため、モニターは装着し、監視を継続する。
鎮痛薬の処方を相談することも最初ではない。疼痛の訴えは記されておらず、ショックの原因の確認が優先される。
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混同しやすいポイント
術後のショックでは、①出血、②迷走神経反射、③心タンポナーデ、④再梗塞と不整脈、⑤造影剤によるアナフィラキシー、を考える。この患者では、脈拍が58と徐脈であり、迷走神経反射(穿刺部の圧迫と疼痛、緊張、そして安静による苦痛が誘因になる。徐脈と血圧低下、悪心、冷汗を伴う)も鑑別に挙がる。いずれにしても、まず穿刺部を確認することが、出血の除外と、迷走神経反射の誘因の把握の両方につながる。
理解を深める
経皮的冠動脈形成術後の看護を整理する。観察=①バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、酸素飽和度。頻回に測定する)、②心電図モニター(不整脈、ST変化。再閉塞と再灌流障害)、③胸部症状(胸痛の再燃は再閉塞を疑う。直ちに報告する)、④穿刺部(出血、血腫、腫脹、疼痛、熱感。大腿動脈では後腹膜出血も考える。橈骨動脈では前腕の腫脹と疼痛=コンパートメント症候群)、⑤末梢循環(穿刺した側の足背動脈または橈骨動脈の拍動、皮膚の色と温度、しびれ、感覚)、⑥尿量と体液量(造影後の補液を一律に行わず、腎機能・急性腎障害リスク・うっ血を評価する。心不全で容量過剰があれば過剰な経口水分・輸液を避け、必要な予防は個別に調整する)、⑦意識、⑧穿刺部の安静の保持(大腿動脈では数時間、橈骨動脈では短時間かつ座位も可能)。合併症=①出血と血腫、仮性動脈瘤、②再閉塞とステント血栓症、③不整脈、④造影剤腎症、⑤造影剤アレルギー、⑥迷走神経反射、⑦冠動脈の解離と穿孔、心タンポナーデ、⑧脳梗塞(血栓の飛散)。看護の要点=①安静に伴う苦痛(腰痛、排泄、退屈)への対応、②抗血小板薬の継続の重要性を伝える(ステント留置後の自己判断による中断は、ステント血栓症という致死的な合併症を招く。歯科と他科の受診時には必ず申告するよう指導する)、③再発予防(禁煙、食事、運動、体重、血圧、脂質、血糖、服薬の継続)、④心臓リハビリテーション、⑤胸痛が再燃したときの対応(ニトログリセリンの使用と、改善しなければ救急要請)、⑥不安への対応と、生活と仕事への復帰の支援。
間違えやすい考え方
最初に行うことを問う型で、誤肢が体位・機器の準備・薬の相談である。直ちに確認できる原因で切る。
5分で振り返る
①血圧低下、顔面蒼白、冷汗はショックの徴候。②経皮的冠動脈形成術の後で最も起こりやすく、直ちに確認できる原因は穿刺部からの出血。抗血小板薬と抗凝固薬により止血が得られにくい。③大腿動脈からの穿刺では、後腹膜腔への出血が外から見えず大量に失血しうる。腹部と背部の疼痛も確認する。④術後は穿刺部の安静が必要で、体位を変えると止血が破綻する。⑤脈拍58で整であり、致死的な不整脈は示されていない。ただしモニターは継続する。⑥術後ショックの原因=出血、迷走神経反射、心タンポナーデ、再梗塞と不整脈、造影剤アナフィラキシー。⑦胸痛の再燃は再閉塞を疑い直ちに報告する。⑧ステント留置後の抗血小板薬の自己判断による中断は、致死的なステント血栓症を招く。
1分チェック
- 術後にショックの徴候があれば。→ まず穿刺部の出血を確認する。
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