次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍〈braintumor〉と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。
帰室後の看護として適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた患者の帰室後の看護を問う。ベッドの頭側を挙上することである。
この問題で問われていること
頭蓋内圧を下げる方向で対応を選べるか。
しくみから理解する
開頭術の後は、手術操作による脳の浮腫と出血により、頭蓋内圧が上昇する危険がある。頭蓋内圧が上がると、脳が圧迫され、意識障害、瞳孔の異常、そして脳ヘルニアによる呼吸と循環の停止に至る。ベッドの頭側を15〜30度挙上すると、静脈の還流が重力によって促され、頭蓋内の血液量が減って圧が下がる。加えて、頸部をまっすぐに保ち、屈曲と過度の回旋を避けることで、内頸静脈の流れを妨げないようにする。
選択肢ごとの確認
発熱時の冷罨法は禁忌ではない。むしろ、体温の上昇は脳の代謝を高め、頭蓋内圧をさらに上げるため、確実に下げる必要がある。冷罨法と、必要に応じた解熱薬、そして体表の冷却を行う。ただし、急激な冷却によるシバリング(震え)は、かえって代謝と酸素消費を増やすため、緩やかに行う。
徐脈時は経過観察としない。頭蓋内圧が上昇すると、血圧の上昇、徐脈、そして呼吸の異常という3つの徴候(クッシング現象)が現れる。これは脳ヘルニアが切迫していることを示す危険な所見であり、直ちに医師へ報告する。徐脈を「安定している」と誤って解釈してはならない。
頸部を前屈させることは適切でない。頸部の屈曲は、内頸静脈を圧迫して静脈の還流を妨げ、頭蓋内圧を上げる。頸部は正中に保ち、まっすぐにする。
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混同しやすいポイント
すべての選択肢が「頭蓋内圧をどうするか」という一点に関わる。①頭側挙上=下げる(正しい)、②発熱の放置=上げる、③徐脈の見過ごし=危険の見逃し、④頸部前屈=上げる、になる。頭蓋内圧を上げる要因を覚える=発熱、疼痛、不穏、咳嗽とくしゃみ、いきみ(努責)、頸部の屈曲と回旋、頭低位、吸引の刺激、高炭酸ガス血症、低酸素、過剰な輸液になる。これらを避けることが、術後の看護の中心になる。
理解を深める
頭蓋内圧亢進と開頭術後の看護を整理する。症状=①頭痛(早朝に強い)、②嘔吐(噴射状で、悪心を伴わないことがある)、③うっ血乳頭。この3つが古典的な3徴になる。加えて、意識障害、瞳孔の異常(散大、対光反射の消失、左右差)、片麻痺、けいれん、クッシング現象(血圧上昇、徐脈、呼吸の異常)。脳ヘルニア=頭蓋内圧の上昇により脳組織が押し出される。テント切痕ヘルニアでは、動眼神経が圧迫されて患側の瞳孔が散大し、対光反射が消失する。進行すれば呼吸が停止する。術後の看護=①意識レベル(グラスゴー・コーマ・スケール、ジャパン・コーマ・スケール)、瞳孔(大きさ、左右差、対光反射)、麻痺、けいれんの観察を、定められた間隔で行う、②バイタルサイン(クッシング現象に注意)、③頭側15〜30度挙上、頸部は正中でまっすぐ、④体温の管理、⑤疼痛の管理(痛みは血圧と頭蓋内圧を上げる)、⑥安静と静かな環境、⑦排便の管理(いきみを避ける。緩下薬を用いる)、⑧吸引は必要最小限に、短時間で(刺激が頭蓋内圧を上げる)、⑨水分と電解質(過剰な輸液を避ける。尿崩症と抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に注意し、尿量と血清ナトリウムを監視する)、⑩創部とドレーンの管理(排液の量と性状。髄液漏を疑う所見)、⑪合併症(出血、浮腫、感染、けいれん、水頭症、髄膜炎)、⑫深部静脈血栓症の予防、⑬早期のリハビリテーション、⑭高次脳機能障害の評価と支援、⑮本人と家族への説明。治療=浸透圧利尿薬、副腎皮質ステロイド薬(腫瘍周囲の浮腫に有効)、鎮静、過換気(一時的)、そして減圧開頭術。
間違えやすい考え方
術後の看護を問う型で、誤肢がすべて頭蓋内圧を上げるか危険を見逃すものである。圧を下げる方向で切る。
5分で振り返る
①開頭術後は、脳の浮腫と出血により頭蓋内圧が上昇する危険がある。②頭側を15〜30度挙上すると静脈還流が促され、頭蓋内の血液量が減って圧が下がる。③頸部は正中でまっすぐに保つ。屈曲と過度の回旋は内頸静脈を圧迫し圧を上げる。④発熱は脳の代謝を高め圧を上げるため、冷罨法と解熱で確実に下げる。ただしシバリングを起こさないよう緩やかに。⑤血圧上昇・徐脈・呼吸異常はクッシング現象で、脳ヘルニアの切迫を示す。直ちに報告する。⑥頭蓋内圧を上げる要因=発熱、疼痛、不穏、咳、いきみ、頸部屈曲、頭低位、吸引刺激、高炭酸ガス血症、低酸素、過剰輸液。⑦頭蓋内圧亢進の3徴=頭痛(早朝に強い)、噴射状嘔吐、うっ血乳頭。
1分チェック
- 開頭術後の体位は。→ 頭側を15〜30度挙上し、頸部は正中でまっすぐ。
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