次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍〈braintumor〉と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。
放射線療法と化学療法が開始されて10 日が経過した。A さんはガーデニングの 趣味があり、庭が気になるため週末の外泊を希望し、主治医から許可が出た。 外泊にあたりA さんへの説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
公式正答:3・5
解説
放射線療法と化学療法が開始されて10日が経過した患者の外泊にあたる説明を2つ問う。「ガーデニングの時は手袋をしてください」と「性交渉の時はコンドームを使用してください」である。
この問題で問われていること
骨髄抑制の時期と、抗がん薬の排泄を踏まえて指導できるか。
しくみから理解する
白血球(とくに好中球)が最も減少する時期は、用いる薬剤と投与計画によって異なる。開始から7〜14日というのは一例で、膠芽腫に対して放射線療法と併用する薬剤では、投与開始から3〜4週の時期にあたることが多い。実際には、用いている薬剤とそのときの血球数で判断する。以下の対応は、好中球減少の有無にかかわらず勧められる。土には多くの細菌と真菌が含まれ、とくにアスペルギルスなどの真菌は、好中球が減少した患者に重篤な感染を起こす。したがって、園芸を行う際は手袋を着用し、作業後は手を洗うよう伝える。加えて、抗がん薬とその代謝物は、投与後しばらく体液(尿、便、汗、精液、腟分泌液)へ排泄されるため、パートナーへの曝露を避ける目的で、性交渉の際は避妊具を用いる。また、治療中と治療後一定期間の妊娠を避ける必要があるという点でも、避妊は重要になる。
選択肢ごとの確認
「入浴は控えてください」は適切でない。入浴は、皮膚を清潔に保ち、感染を防ぐうえで有用になる。ぬるめの湯で、こすらず、短時間で行う。放射線の照射部位も、低刺激の石けんで静かに洗う。控えるのは、公衆浴場と長湯、そして皮膚を強くこすることになる。
「食べ物の制限はありません」も適切でない。好中球が減少している時期は、生もの(刺身、生卵、加熱していない肉、そして加熱していない乳製品)、そしてよく洗っていない生野菜と果物を避けるよう指導する。加熱したものを中心とし、調理と保存の衛生にも注意する。
「発熱を伴わない咳は様子を見てください」も適切でない。好中球が減少していると、炎症の反応そのものが弱まるため、感染していても発熱しないことがある。咳、息切れ、痰、咽頭痛、そして倦怠感といった症状は、発熱を伴わなくても感染の徴候として扱い、連絡するよう伝える。逆に、38℃以上の発熱があれば、直ちに連絡し受診するよう伝える(発熱性好中球減少症は緊急の対応を要する)。
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混同しやすいポイント
外泊の指導は、①感染の予防(環境、食事、人混み、口腔、手洗い)、②出血の予防(血小板減少)、③体液への曝露の防止、④異常時の連絡、の4つで整理する。誤肢は、①清潔の機会を減らす、②食事の注意を省く、③症状の見逃しを許す、という、いずれも危険を増やす方向になる。判断の基準は「その説明で、患者が危険に近づくか、遠ざかるか」になる。
理解を深める
化学療法中の生活指導を整理する。骨髄抑制=①白血球が最低となる時期は薬剤と投与計画によって異なる。投与後7〜14日というのは一例で、放射線療法と併用する薬剤では投与開始から3〜4週の時期にあたることが多い。実際には用いている薬剤名と、そのときの血球数で判断する。好中球500未満は重篤な感染の危険が高い、②血小板は7〜14日で最低、③赤血球は寿命が長いため、貧血は遅れて現れる。感染の予防=①手洗いとうがい、②口腔ケア(粘膜炎と感染の予防。柔らかい歯ブラシで、食後と就寝前)、③人混みを避ける、④食品衛生を徹底する(十分に加熱する、生野菜と果物はよく洗う、期限を守る。感染予防を目的とした一律の除去食は現在の指針では推奨されておらず、制限の要否は腫瘍治療チームの個別の指示による)、⑤ペットの排泄物、土、そして水回りに注意する、⑥切り傷を作らない(爪切り、かみそり、園芸には手袋)、⑦体温を毎日測る、⑧発熱時は直ちに連絡する。出血の予防=①強く鼻をかまない、②硬い歯ブラシを避ける、③便秘を避ける(いきみ、痔)、④転倒と打撲を避ける、⑤かみそりは電気シェーバーに、⑥出血斑、鼻出血、歯肉出血、血尿、黒色便に注意する。体液の取り扱い=投与後48〜72時間(薬剤により異なる)は、①トイレは蓋を閉めて流す(可能なら2回)、②尿が飛散したら拭き取る、③汚染した衣類は別に洗う、④手袋を用いて処理する、⑤避妊具を用いる。その他=①悪心と嘔吐(制吐薬、食事の工夫=少量頻回、冷たいもの、においの少ないもの)、②脱毛(時期と回復の説明、かつらと帽子の準備)、③味覚の変化、④末梢神経障害(しびれ、ボタン、熱いものと冷たいものへの注意)、⑤倦怠感(休息と活動のバランス)、⑥妊よう性(治療前に情報を提供する)、⑦仕事と生活の調整、⑧経済的な相談。外泊は、治療の途中でも生活の質を保ち、意欲を支える意味を持つ。危険を理由に一律に制限するのではなく、安全に行える方法を一緒に考えることが看護になる。
間違えやすい考え方
指導を問う型で、誤肢が清潔の機会を減らす・注意を省く・症状の見逃しを許すものである。危険に近づくか遠ざかるかで切る。
5分で振り返る
①白血球(好中球)が最も減少する時期は薬剤と投与計画で異なる。開始から7〜14日というのは一例で、用いている薬剤とそのときの血球数で判断する。②土には細菌と真菌が多く、園芸では手袋を着用し、作業後に手を洗う。③抗がん薬とその代謝物は、投与後しばらく体液(尿、便、汗、精液、腟分泌液)へ排泄される。性交渉では避妊具を用いる。治療中と治療後一定期間の妊娠も避ける。④入浴は控えない。清潔を保つことが感染の予防になる。ぬるめの湯で短時間、こすらない。⑤好中球減少時は食品衛生を徹底する(十分に加熱する、生野菜と果物はよく洗う、期限を守る)。感染予防を目的とした一律の除去食は現在の指針では推奨されていないが、「食べ物の制限はない」と言い切れる状態でもなく、制限の要否は腫瘍治療チームの個別の指示による。⑥好中球が減ると炎症の反応が弱まり、感染しても発熱しないことがある。発熱を伴わない咳も感染の徴候として連絡する。⑦38℃以上の発熱は直ちに受診(発熱性好中球減少症)。
1分チェック
- 化学療法中の外泊では。→ 園芸に手袋、性交渉に避妊具(生ものは避ける、発熱がなくても症状は連絡)。
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