次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎viralgastroenteritisによる中等度の脱水症〈dehydration〉と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。
A ちゃんにみられる状態はどれか。
公式正答:5
解説
下痢と嘔吐を繰り返し、ウイルス性胃腸炎による中等度の脱水症と診断された2歳10か月の女児にみられる状態を問う。皮膚のツルゴールは低下している、である。
この問題で問われていること
脱水の程度を、身体所見でどう評価するかを説明できるか。
しくみから理解する
ツルゴールは、皮膚をつまんで離したときに、元に戻るまでの速さで評価する。脱水により細胞外液が減ると、皮膚の弾力が失われ、つまんだ跡がゆっくりとしか戻らなくなる。小児では、腹部または前胸部の皮膚をつまんで評価する。中等度の脱水では、ツルゴールの低下に加え、口腔粘膜の乾燥、涙の減少、大泉門の陥凹(乳児)、眼窩の陥凹、尿量の減少、頻脈、そして活気の低下がみられる。
選択肢ごとの確認
昏睡状態ではない。中等度の脱水では、傾眠、不機嫌、そして活気の低下がみられることはあるが、昏睡には至らない。昏睡は重度の脱水(あるいはショック)で生じる。
流涙は普段と変わらない、という記述は誤りになる。脱水では涙の産生が減り、泣いても涙が出にくくなる。これは小児の脱水を評価する重要な所見の一つになる。
体重は3日前と変わらない、という記述も誤りになる。3日前の体重は12.5kgで、その後に下痢と嘔吐を繰り返し、食事も摂れていないため、体重は減少している。小児では、体重の減少率が脱水の程度を最もよく表す指標になる(軽度=5%未満、中等度=5〜10%、重度=10%以上)。
排尿頻度は普段通りではない。脱水では、体液を保つために尿量が減り、排尿の回数も減る。おむつが濡れない、あるいは尿の色が濃くなるといった変化として現れる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「脱水なのに変化がない」または「実際より重い」と述べている。脱水の所見は、体液が減ることで説明できるものばかりになる。①水分が減る=皮膚の弾力の低下、粘膜の乾燥、涙の減少、眼窩と大泉門の陥凹、体重の減少、②体液を保とうとする=尿量の減少、③循環を保とうとする=頻脈、④循環が保てなくなる=血圧の低下、末梢の冷感、意識の低下(重度)、という順序で理解する。
理解を深める
小児の脱水を整理する。小児が脱水になりやすい理由=①体重あたりの水分量が多い(乳児で体重の約70〜80%)、②体重あたりの体表面積が大きく、不感蒸泄が多い、③腎の濃縮力が未熟、④自分で水分を摂れない、渇きを訴えられない、⑤下痢と嘔吐を起こす感染症にかかりやすい、⑥発熱と多呼吸により喪失が増える。程度の評価=体重減少率(軽度5%未満、中等度5〜10%、重度10%以上)。ただし発症前の体重が分からないことが多いため、身体所見(意識、活気、涙、口腔粘膜、眼窩、大泉門、皮膚のツルゴール、末梢の色と温度、毛細血管再充満時間、脈拍、呼吸、血圧、尿量)を組み合わせて判断する。種類=①等張性脱水(最も多い。水とナトリウムが同程度に失われる)、②高張性脱水(水の喪失が優位。血清ナトリウムが上昇。強い口渇、不穏、けいれん)、③低張性脱水(ナトリウムの喪失が優位。血清ナトリウムが低下。循環不全が早く現れる)。治療=①軽度から中等度=経口補水療法(少量ずつ、頻回に。スプーンやシリンジで5分おきに少しずつ与える。一度に多く飲ませると嘔吐を誘発する)、②重度、あるいは経口が困難な場合=輸液。看護=①水分出納(摂取量、尿量、便の量と回数、嘔吐の量)、②体重(毎日、同じ条件で)、③バイタルサインと意識、活気、④脱水の身体所見、⑤皮膚と粘膜のケア(おむつ皮膚炎の予防、口腔ケア)、⑥感染対策(ウイルス性胃腸炎では、吐物と便の適切な処理。次亜塩素酸ナトリウムを用いる。アルコールは効きにくい)、⑦食事の再開(改善に応じて早期に、通常の食事へ戻す。長期の絶食は回復を遅らせる)、⑧家族への説明と、家庭での対応の指導。
間違えやすい考え方
所見を問う型で、誤肢が「変化がない」と「実際より重い」ものである。体液が減ることで説明できるかで切る。
5分で振り返る
①ツルゴールは、皮膚をつまんで離したときの戻りの速さ。脱水で細胞外液が減ると弾力が失われ、戻りが遅くなる。②中等度脱水の所見=ツルゴールの低下、口腔粘膜の乾燥、涙の減少、眼窩と大泉門の陥凹、尿量の減少、頻脈、活気の低下。③昏睡は重度の脱水で生じる。中等度では傾眠と不機嫌にとどまる。④脱水では涙の産生が減り、泣いても涙が出にくい。⑤体重減少率が脱水の程度を最もよく表す(軽度5%未満、中等度5〜10%、重度10%以上)。⑥小児が脱水になりやすい理由=体重あたりの水分量が多い、不感蒸泄が多い、腎の濃縮力が未熟、自分で水分を摂れない。⑦軽度から中等度は経口補水療法。少量ずつ頻回に与える。一度に多く飲ませると嘔吐する。⑧ウイルス性胃腸炎の吐物と便は次亜塩素酸ナトリウムで処理する。
1分チェック
- 中等度脱水の所見は。→ 皮膚のツルゴールの低下(涙の減少、尿量の減少、体重減少も)。
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