次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎viralgastroenteritisによる中等度の脱水症〈dehydration〉と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。
A ちゃんは、個室隔離での入院となり、持続点滴静脈内注射が開始された。排 泄が自立していないため普段から紙オムツを使用している。 A ちゃんのオムツ交換における注意点について、入院に付き添う母親への看護 師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
ウイルス性胃腸炎で個室隔離となった2歳10か月の女児について、おむつ交換における注意点として母親へ説明する内容を問う。オムツ交換後に石けんで手洗いを行うことである。
この問題で問われていること
この病原体に有効な手指衛生の方法を知っているか。
しくみから理解する
ウイルス性胃腸炎の代表であるノロウイルスとロタウイルスは、外側に脂質の膜(エンベロープ)を持たないため、アルコールによる消毒が効きにくい。これらのウイルスに対しては、石けんと流水による手洗いで、物理的に洗い流すことが最も有効になる。おむつ交換の後は、手袋を外した後であっても、石けんで丁寧に手を洗い、流水ですすいで、清潔なタオルまたはペーパータオルで拭く。加えて、糞口感染により家族へ広がりやすいため、付き添う母親への指導が、そのまま院内と家庭での感染拡大の防止につながる。
選択肢ごとの確認
布オムツに切り替えることは適切でない。布おむつは、洗濯の過程で汚染を広げる危険があり、また扱う回数も増える。感染性の下痢がある間は、使い捨ての紙おむつを用い、汚染したものは密閉して廃棄する。
使い捨て手袋を1日1回交換する、という説明は誤りになる。手袋は、1回のケアごとに交換する。使い回せば、それ自体が汚染を運ぶ手段になる。加えて、手袋を外した後にも手指衛生を行う(手袋には目に見えない穴があること、外す際に手が汚染されることがあるため)。
アルコール入りのおしり拭きで殿部を清拭することも適切でない。①ノロウイルスとロタウイルスにアルコールは効きにくい、②下痢で傷んだ皮膚にアルコールは強い刺激となり、疼痛と皮膚障害を招く。殿部は、ぬるま湯で洗い流す、またはシャワーボトルで洗浄し、押さえるように拭いて乾かすことが望ましい。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①扱う回数を増やす、②手袋を使い回す、③効かないうえに皮膚を傷める、の3つになる。この設問の鍵は「アルコールが効かないウイルス」という一点にあり、そこから、手洗いが正答であること、そしてアルコール入りの拭き取りが不適切であることの両方が導ける。
理解を深める
小児の感染性胃腸炎を整理する。原因=ノロウイルス(冬季に流行。感染力が極めて強く、少量のウイルスで発症する)、ロタウイルス(乳幼児に多い。白色に近い便が特徴。ワクチンが定期接種になっている)、アデノウイルス、細菌(カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌)。感染経路=糞口感染、接触感染、そして吐物からの飛沫と、乾燥した吐物が舞い上がることによる感染。対策=①手洗い(石けんと流水。アルコールは補助)、②手袋とエプロン(使い捨て。1回ごとに交換)、③吐物と便の処理(使い捨ての手袋、マスク、エプロンを着用し、ペーパータオルで静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する。乾燥させない。処理後は換気する)、④汚染した衣類(別に洗い、次亜塩素酸ナトリウムで消毒するか、85℃で1分以上の熱水洗濯)、⑤環境の消毒(次亜塩素酸ナトリウム。金属は腐食するため、消毒後に水拭きする)、⑥個室隔離または同じ病原体の患者をまとめる、⑦症状が消えた後も、しばらくウイルスの排出が続くことを伝える。看護=①脱水の評価と補正、②食事(改善に応じて早期に再開する。長期の絶食は回復を遅らせる)、③殿部のケア(頻回の下痢で皮膚が傷むため、洗浄と乾燥、保護剤)、④付き添う家族への指導と、家族自身の感染の予防、⑤個室隔離に伴う子どものストレスへの配慮(遊び、関わり、面会)、⑥家族の負担(付き添い、きょうだいの世話、仕事)への配慮。
間違えやすい考え方
感染対策を問う型で、誤肢が扱いを増やす・使い回す・効かない方法である。アルコールが効かないという一点で切る。
5分で振り返る
①ノロウイルスとロタウイルスはエンベロープを持たず、アルコールが効きにくい。石けんと流水で洗い流すことが最も有効。②おむつ交換の後は、手袋を外した後も石けんで手を洗う。③手袋は1回のケアごとに交換する。使い回せば汚染を運ぶ。④布おむつは洗濯の過程で汚染を広げる。使い捨ての紙おむつを用い、密閉して廃棄する。⑤アルコール入りの拭き取りは、効きにくいうえに傷んだ皮膚を刺激する。ぬるま湯での洗浄が望ましい。⑥吐物と便は、手袋・マスク・エプロンを着けて静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。乾燥させない。⑦汚染した衣類は、次亜塩素酸ナトリウムか85℃で1分以上の熱水洗濯。⑧症状が消えた後もウイルスの排出が続く。
1分チェック
- ウイルス性胃腸炎の手指衛生は。→ 石けんと流水による手洗い(アルコールは効きにくい)。
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