次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎viralgastroenteritisによる中等度の脱水症〈dehydration〉と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。
入院2日。A ちゃんは、水様便は続いているが嘔吐はなくなった。付き添って る母親は「A は大泣きして、ストレスが溜まっているみたいです。アイスクリーム を食べたいみたいです」と看護師に話した。 このときに看護師が母親に伝える内容で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
入院2日、水様便は続くが嘔吐はなくなった2歳10か月の女児について、「ストレスが溜まっているみたい」と話す母親へ伝える内容を問う。好きなおもちゃを自宅から持参してよいことである。
この問題で問われていること
隔離という制約の中で、できることを選べるか。
しくみから理解する
この時点では、水様便が続いており、隔離は解除できず、プレイルームへ出ることもできない。その制約の中で、子どものストレスを和らげる手立てとして、慣れ親しんだおもちゃを持ち込むことは有効になる。①なじみの物があることで安心感が得られる、②遊びは幼児にとって発達の営みそのものであり、入院中も保障されるべきものになる、③母親も「してあげられること」を得られる。持ち込んだ物は、退院時に消毒するか、持ち帰り方を説明する。
選択肢ごとの確認
プレイルームで遊べることは、この時点では伝えられない。感染性の下痢が続いており、共有の場へ出ることは、他の子どもへの感染につながる。
アイスクリームを食べてよいことも、この時点では適切でない。アイスクリームで問題になるのは糖の負荷で、浸透圧により下痢を悪化させうる点である。乳製品であることや冷たいことが理由ではなく、脱水を補正した後は通常の食事と通常濃度の乳を速やかに再開してよい。この時点で適切でないのは、水様便が続いており、まだ糖の負荷をかける段階ではないためである。ただし、長期の絶食は避け、食べられるものから早めに戻すことが現在の考え方になる。
個室隔離が明日、解除されることも伝えられない。解除の時期は、症状と経過により医師が判断するもので、看護師が予告できるものではない。加えて、水様便が続いている段階で明日の解除を約束すれば、実現しなかったときに不信を招く。
看護師の訪室を控えることも適切でない。隔離により人との接触が減ることは、子どもにとって大きな負担になる。訪室を減らすのではなく、むしろ関わりの時間を作り、遊びを取り入れ、母親の負担も軽くする。加えて、観察の機会を減らすことは安全上も適切でない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①制約を無視する、②症状を悪化させる、③約束できないことを言う、④関わりを減らす、の4つになる。この場面の判断は、「いまの状態で、実際にできることか」「それが子どもと家族の助けになるか」の2点で行う。おもちゃの持参だけが、両方を満たす。
理解を深める
入院中の子どもの遊びと発達を整理する。遊びの意義=①発達の営みそのもの(運動、認知、言語、社会性)、②緊張と不安の解消、③自己表現の手段(言葉で表せない気持ちを、遊びを通じて表す)、④主体性の回復(入院中は「される」ことばかりになるため、自分で選び、動かせる体験が重要になる)、⑤日常の連続性を保つ、⑥処置への心の準備(プレパレーション=人形や絵本を用いて、これから何が起こるかを、その子の理解できる形で伝える)、⑦処置後の解放(ディストラクションと、遊びによる表現)。隔離中の工夫=①なじみの物(おもちゃ、毛布、絵本、写真)を持ち込む、②ベッド上でできる遊び、③窓の外を見る、④動画と音楽、⑤家族とのビデオ通話、⑥保育士(医療保育専門士、子ども療養支援士)との連携、⑦看護師が関わる時間を意識的に作る、⑧生活のリズムを保つ(起床、食事、遊び、就寝の時間)。幼児期の入院の影響=①分離不安(家族と離れることへの強い不安)、②退行(できていたことができなくなる。指しゃぶり、夜尿、甘え。一時的なもので、責めない)、③恐怖(処置、白衣、痛み)、④食欲と睡眠の乱れ、⑤活動の制限による発達への影響。家族への支援=①付き添いによる疲労(睡眠、食事、入浴、休息の場)、②きょうだいへの配慮、③仕事との両立、④不安と罪責感(「自分が気づくのが遅れた」)、⑤ケアへの参加を促す。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が制約の無視・症状の悪化・約束できないこと・関わりの減少である。いまできることかで切る。
5分で振り返る
①水様便が続く間は隔離を解除できず、プレイルームへも出られない。その制約の中でできることを選ぶ。②なじみのおもちゃは、安心感を与え、遊びという発達の営みを保障し、母親にも「してあげられること」をもたらす。③問題になるのは糖の負荷で、浸透圧により下痢を悪化させうる。乳製品や冷たいものを一律に避ける根拠はなく、脱水を補正した後は通常の食事と通常濃度の乳を速やかに再開する。長期の絶食は避ける。④隔離解除の時期は医師が症状と経過で判断する。看護師が予告しない。⑤訪室を控えることは、子どもの負担を増やし、観察の機会も減らす。むしろ関わる時間を作る。⑥遊びは、緊張の解消、自己表現、主体性の回復、日常の連続性の保持という意義を持つ。⑦幼児期の入院では、分離不安と退行が現れる。退行は一時的なもので責めない。
1分チェック
- 隔離中の幼児のストレスには。→ なじみのおもちゃを持ち込む。
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