次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日に3,200gの男児を経腟分娩で出産した。分娩時に会陰切開縫合術を受けた。児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後9点、5分後10点であった。分娩時の出血量200mL、分娩所要時間12時間30分であった。分娩室から病室に帰室する前に尿意を自覚したためトイレまで歩行し、排尿があった。
帰室時に看護師がA さんに行う説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
経腟分娩で会陰切開縫合術を受けた32歳初産婦が病室へ帰室する際の説明を問う。「悪露に血の塊が混じったら看護師に知らせてください」である。
この問題で問われていること
分娩後2時間に最も警戒すべきことを特定できるか。
しくみから理解する
分娩第4期(分娩後2時間)は、弛緩出血をはじめとする分娩後異常出血が最も起こりやすい時期になる。子宮の収縮が不十分だと、胎盤が剥がれた面の血管が閉じず、大量に出血する。血の塊(凝血)が悪露に混じることは、子宮内に血液が貯留していること、あるいは出血が多いことを示す所見であり、直ちに評価する必要がある。したがって、産婦自身にこの徴候を伝え、気づいたら知らせるよう説明することが、早期発見につながる。加えて、看護師も定期的に、子宮底の高さと硬さ、悪露の量と性状、バイタルサイン、そして自覚症状を観察する。
選択肢ごとの確認
「排泄後は会陰部を消毒しましょう」は適切でない。会陰縫合部は、消毒するのではなく、洗浄する。排泄のたびに、温水洗浄便座または洗浄用のボトルで洗い流し、前から後ろへ押さえるように拭く。消毒薬は、常在菌叢を乱し、また創の治癒を妨げることがある。
「会陰縫合部が痛くなったら温めましょう」も適切でない。分娩直後は、腫脹と疼痛を軽減するために冷やす(冷罨法)。温めるのは、腫脹が引いた後(一般に24〜48時間以降)で、血流を促して治癒を助ける目的になる。時期を取り違えると、腫脹と出血を増やす。
「6時間おきにトイレに行って排尿しましょう」も適切でない。分娩後は、膀胱の充満が子宮の収縮を妨げ、弛緩出血の原因になる。加えて、分娩による膀胱と尿道の圧迫により、尿意を感じにくくなっていることがある。したがって、3〜4時間ごと、あるいは尿意がなくても定期的に排尿を促す。6時間では長すぎる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①消毒(洗浄が正しい)、②温める(この時期は冷やす)、③6時間(3〜4時間が適切)という、いずれも方法または時期の誤りになる。分娩後2時間の看護は、「出血」の一語に集約される。子宮収縮を妨げるもの(膀胱の充満、疲労、多胎と巨大児による子宮の過伸展、遷延分娩)を取り除き、出血の徴候を早期に捉えることが中心になる。
理解を深める
分娩後の看護を整理する。分娩第4期(分娩後2時間)の観察=①子宮底の高さと硬さ(臍下に硬く触れるのが正常。柔らかければ子宮収縮不全)、②悪露の量と性状(凝血の有無)、③バイタルサイン(頻脈と血圧低下は出血を示す。ただし若い産婦では、代償により血圧が保たれ、急に破綻することがある)、④自覚症状(気分不良、悪心、冷汗、あくび、口渇)、⑤会陰縫合部(腫脹、血腫、疼痛。持続する強い疼痛は血腫を疑う)、⑥膀胱の充満と排尿、⑦全身状態と疲労。分娩後異常出血=分娩後24時間以内に、経腟分娩で500mL以上(帝王切開では1,000mL以上)の出血という量の目安がある。ただし判断は量だけで行わず、循環動態の異常(ショックインデックスの上昇など)を併せて評価し、量がこの目安に達していなくても不安定であれば対応を始める。原因の4つ=①子宮収縮不全(弛緩出血。最も多い)、②産道の裂傷(頸管裂傷、腟壁裂傷、会陰裂傷、血腫)、③胎盤の遺残、④凝固の異常。対応=子宮の収縮を促す(子宮底の輪状マッサージ、子宮収縮薬、膀胱を空にする)、輸液と輸血、原因への処置。会陰縫合部のケア=①洗浄(消毒しない)、②冷罨法(分娩直後)、③円座または側臥位で圧を避ける、④鎮痛薬、⑤排便の管理(いきみを避ける)、⑥観察(発赤、腫脹、疼痛、離開、滲出)、⑦手洗いと、パッドの頻回な交換。早期離床=深部静脈血栓症の予防、子宮復古の促進、そして排尿と排便の促進のため、状態が安定していれば早期に促す。ただし、初回の歩行は、起立性低血圧による転倒を避けるため、必ず付き添う。
間違えやすい考え方
説明の正誤を問う型で、誤肢が方法と時期を誤る。分娩後2時間は「出血」の一語で切る。
5分で振り返る
①分娩後2時間(分娩第4期)は、弛緩出血が最も起こりやすい時期。②悪露に血の塊が混じることは、子宮内の血液貯留か出血の増加を示す。産婦自身に伝えて早期発見につなげる。③会陰縫合部は消毒せず洗浄する。排泄のたびに洗い流し、前から後ろへ押さえて拭く。④分娩直後は冷やす(冷罨法)。温めるのは腫脹が引いた24〜48時間以降。⑤膀胱の充満は子宮の収縮を妨げ、弛緩出血の原因になる。3〜4時間ごとに、尿意がなくても排尿を促す。⑥分娩後異常出血の量の目安は、経腟分娩で500mL以上、帝王切開で1,000mL以上。ただし量だけで判断せず、循環動態の異常(ショックインデックスの上昇など)を併せて評価し、量が目安に達していなくても不安定であれば対応を始める。原因は子宮収縮不全、産道の裂傷、胎盤の遺残、凝固の異常。⑦持続する強い会陰部痛は血腫を疑う。⑧初回の歩行は必ず付き添う。
1分チェック
- 分娩直後の産婦に伝えるのは。→ 悪露に血の塊が混じったら知らせること。
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